高齢の親の物忘れ、認知症のサイン?違いと受診の目安を訪問12年のPTが解説

もの忘れと認知症の違いを考える高齢女性と家族のイラスト 認知症ケア

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📋 この記事でわかること

  • ✔ 物忘れと認知症の記憶障害の違い
  • ✔ 家族が気づきやすい認知症のサイン
  • ✔ 受診のタイミングと相談先
もくもく

・理学療法士歴15年|訪問リハビリ12年|累計12,000件以上の訪問
・在宅生活の専門家:小さなお子さんから難病、高齢の方まで幅広くサポート
・現場目線の発信:現場で培った「長く・安全に自宅で過ごすための工夫」を公開中

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家族
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最近、父が同じ話を何度も繰り返すんです。これって認知症なんでしょうか…?

もくもく
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それは気になりますよね。物忘れと認知症の記憶障害は、実は明確な違いがあるんです。一緒に確認していきましょう。


親の物忘れが気になりだしたとき、これは年齢のせい?それとも認知症のサイン?と不安になる家族はとても多いです。訪問リハビリ12年・12,000件以上の経験から、そういった相談を日々受けてきました。この記事では、物忘れと認知症の違いをわかりやすく解説し、受診の目安までお伝えします。

物忘れと認知症の記憶障害、何が違うの?

朝食を前に首を傾げる高齢女性のイラスト・もの忘れと認知症の記憶障害の違い

加齢による物忘れとは

年をとるにつれて、物忘れが増えるのは自然なことです。「あの人の名前が出てこない」「冷蔵庫を開けたけど何を取りに来たか忘れた」——こういった経験は多くの方にあるはずです。

加齢による物忘れの特徴は、体験の一部を忘れるという点です。朝ごはんに何を食べたかは思い出せなくても、「朝ごはんを食べた」という事実は覚えています。ヒントを与えれば思い出せることも多く、日常生活に大きな支障は出ません。(国立長寿医療研究センターより)

出典:国立長寿医療研究センター「もの忘れと認知症」


認知症の記憶障害とは

認知症の記憶障害は、加齢による物忘れとは根本的に異なります。アルツハイマー型認知症では、記憶を司る脳の海馬やその周辺が障害され、新しい記憶そのものが作られなくなります。(国立長寿医療研究センターより)

出典:国立長寿医療研究センター「もの忘れと認知症」

つまり体験ごと丸ごと忘れてしまうのが特徴です。ヒントを与えても思い出せず、自分が忘れていること自体に気づけないケースも多くなります。

なお、認知症にはアルツハイマー型以外にもレビー小体型・血管性・前頭側頭型などの種類があり、物忘れの出方や症状の特徴が異なる場合があります。この記事ではもっとも多いアルツハイマー型を中心に解説しています。


一番わかりやすい違い「ご飯を食べたことを忘れる」

私が家族への説明で一番よく使うのがこの例えです。

✅ 加齢による物忘れ

ご飯を食べたことは覚えているが、何を食べたかを忘れる

⚠️ 認知症の記憶障害

ご飯を食べたこと自体を忘れる

「まだご飯を食べていない」と何度も訴える——これは認知症の記憶障害の典型的なサインです。(認知症疾患診療ガイドライン2017より)

出典:認知症疾患診療ガイドライン2017(日本神経学会)

📝 訪問現場より

訪問先で「最近、親の物忘れがひどくなってきたんですけど、認知症になりましたかね」と相談を受けることがよくあります。そのときに私がまず確認するのが、「本人が忘れたことに気づいているかどうか」です。

本人が「最近物忘れが多くて…」と自覚しているなら、加齢による物忘れである可能性が高いとお伝えします。一方、忘れたこと自体を忘れているようであれば「認知症も疑われるので、心配なら早めにかかりつけ医かもの忘れ外来に一度行ってみることをおすすめします」とお伝えするようにしています。

👨‍⚕️ もくもくポイント

物忘れは食べたものを忘れる、認知症は食べたこと自体を忘れる——この一言が一番わかりやすい違いです。

加齢による物忘れ 認知症の記憶障害
記憶の失われ方 体験の一部を忘れる 体験ごと丸ごと忘れる
ヒントで思い出せるか 思い出せることが多い 思い出せない
自覚があるか 「最近忘れっぽい」と気づく 忘れていること自体に気づかない
日常生活への影響 大きな支障はない 支障が出てくる

こんなサインが出たら要注意!家族が気づきやすい認知症の変化

同じ話を繰り返す父の話を心配そうに聞く娘のイラスト

同じ話を何度も繰り返す

家族が最初に気づくサインとして最も多いのが、同じ話を繰り返すことです。

私が訪問リハビリで初めてお会いする方でも、40〜60分の訪問時間の中で同じ話を「初めて話すかのように」繰り返すことがあります。そういった場面で「あ、この方は認知症かもしれない」と気づくことが多いです。

加齢による物忘れであれば「さっきも言ったかな?」と自分で気づけることが多いですが、認知症の場合は話したこと自体の記憶がないため、何度でも同じ話を新鮮な気持ちで始めます。認知症の他の初期サインについては、認知症の初期症状チェックリストでまとめています。

👨‍⚕️ もくもくポイント

同じ話を短時間に繰り返すのは、認知症の早期サインの中でも特に家族が気づきやすいポイントです。


物忘れを自覚していない

もう一つの大きなサインが、物忘れを自覚していないことです。

MSDマニュアルでは「患者自身がもの忘れの悪化を心配して受診した場合は加齢に伴う記憶障害の可能性が高く、家族が率先して受診を求めた場合は認知症の可能性が高い」と記されています。(MSDマニュアルより)

出典:MSDマニュアル プロフェッショナル版「記憶障害」

「最近物忘れが多くて心配」と自分で訴える方は、むしろ認知症ではないケースが多いのです。


日常生活に支障が出始める

物忘れだけでなく、日常生活への影響が出始めたときも要注意です。

⚠️ こんな変化が出てきたら要注意

  • 同じものを何度も買ってくる
  • 薬の飲み忘れが増えた
  • 料理の手順がわからなくなった
  • 財布や鍵の置き場所がわからなくなる頻度が増えた

こういった変化は、記憶障害が日常生活に影響し始めているサインです。(認知症疾患診療ガイドライン2017より)

出典:認知症疾患診療ガイドライン2017(日本神経学会)

物忘れと認知症の間にある「MCI(軽度認知障害)」とは

MCIとはどんな状態か

物忘れと認知症の間には、「MCI(軽度認知障害)」と呼ばれる中間の状態があります。

MCIとは、認知機能の低下はあるものの、日常生活には大きな支障が出ていない状態です。認知症疾患診療ガイドライン2017では、MCIの特徴を以下のように示しています。

✅ MCIの特徴(認知症疾患診療ガイドライン2017)

  • 年齢や教育レベルでは説明できない記憶障害がある
  • 本人または家族による物忘れの訴えがある
  • 全般的な認知機能は正常範囲
  • 日常生活動作は自立している
  • 認知症ではない

訪問リハビリの現場では、「なんとなくおかしいけど認知症というほどでもない」という方がMCIに該当することが多く、家族も本人も気づきにくい段階です。


MCIは回復できる可能性がある

MCIは必ずしも認知症に進行するわけではありません。東京都健康長寿医療センターによると、MCIから正常な状態に回復する割合は1年で16〜41%、認知症に進行する割合は1年で5〜15%とされています。(東京都健康長寿医療センター/認知症疾患診療ガイドライン2017より)

出典:東京都健康長寿医療センター「軽度認知障害(MCI)」認知症疾患診療ガイドライン2017

つまりMCIの段階で気づいて適切に対処することが、認知症予防の大きなカギになります。だからこそ「おかしいな」と感じたら早めに受診することが大切なのです。MCIの段階からできる具体的な予防法は、認知症予防のためにできることで詳しく解説しています。

👨‍⚕️ もくもくポイント

MCIから正常に回復する人もいます。だからこそ早期発見・早期受診が大切なのです。

「病院に行っても何もしてもらえない」は昔の話

医師が高齢患者と家族に丁寧に説明している診察室のイラスト

早期受診で使える新しい薬がある

「病院に行っても、はい認知症ですねって言われて終わりじゃないの?」——訪問リハビリの現場でそんな声をよく耳にします。

しかしそれは昔の話です。2023年9月、レカネマブ(商品名:レケンビ)が「アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度の認知症の進行抑制」を効能として厚生労働省に薬事承認されました。(国立長寿医療研究センターより)

出典:国立長寿医療研究センター「アルツハイマー病の新しい治療薬レカネマブ」

この薬はアルツハイマー病の原因とされるアミロイドβを脳から除去することで、病気の進行を遅らせることを目的としています。重要なのは、MCIや軽度の段階でしか使えないという点です。症状が進行してからでは適応外となってしまいます。

だからこそ早めに受診して診断を受けることが、治療の選択肢を広げることにつながります。

👨‍⚕️ もくもくポイント

新しい薬はMCIや軽度の段階でしか使えません。早めの受診が治療の選択肢を広げます。


診断が出ることで家族の気持ちが楽になる

「認知症と診断されるのが怖い」という気持ちはよくわかります。しかし訪問リハビリの現場では、診断が出たことで家族の気持ちが楽になるケースをたくさん見てきました。

📝 訪問現場より

以前、長年しっかりしていた親を見てきたご家族が、診断を受け入れるまでにかなり時間がかかっていました。それまでは「なんでこんなこともわからないの」と、つい親にきつく当たってしまうこともあったそうです。

ところが診断が出てからは、「忘れているのは病気のせい」と理解できるようになり、言動にも肯定的な返答ができるようになった。「気持ちの面でだいぶ楽になりました」とおっしゃっていたのが印象に残っています。

認知症の診断は、家族が正しく向き合うためのスタートラインでもあるのです。診断後に家族がとるべき行動については、認知症と診断されたら家族はどうする?にまとめています。

受診の目安と相談窓口

地域包括支援センターに電話相談する女性のイラスト

こんなときは受診を検討して

「どのタイミングで病院に連れて行けばいいの?」——これも現場でよく聞かれる質問です。

私が訪問リハビリの現場でお伝えしているのは、「ちょっとでも不安に思ったら、まず1回受診してみましょう」ということです。以下のような場面が増えてきたら、受診を検討するサインと考えてください。

✅ 受診を検討するサイン

  • 同じ話・同じ質問を短時間に何度も繰り返す
  • 物忘れを自分では全く気にしていない
  • 薬の飲み忘れや同じものの買い重ねが増えた
  • 料理や家事の手順がわからなくなってきた
  • 財布や鍵をしょっちゅう探している
  • 家族が「なんかおかしい」と感じている

特に最後の「家族が感じる違和感」は重要です。MSDマニュアルでも、家族が率先して受診を求めた場合は認知症の可能性が高いと記されています。(MSDマニュアルより)

出典:MSDマニュアル プロフェッショナル版「記憶障害」


まずはかかりつけ医かもの忘れ外来へ

受診先に迷ったら、まずはかかりつけ医に相談しましょう。必要に応じて専門医やもの忘れ外来に紹介してもらえます。

もの忘れ外来では、問診・認知機能検査(長谷川式・MMSE)・画像検査などを通じて、加齢による物忘れなのかMCIや認知症なのかを丁寧に評価してもらえます。

「大げさかな」と思わず、気になったら早めに相談することが、本人と家族にとって一番の安心につながります。

予約の取り方に迷ったら、まず地域包括支援センターに電話で相談するのがおすすめです。「近くのもの忘れ外来を教えてほしい」と伝えるだけで、地域の専門機関を紹介してもらえます。センターは市区町村の窓口や、インターネットで「地域名+地域包括支援センター」と検索すると見つかります。

まとめ

📝 この記事のまとめ

  • ✅ 物忘れは「食べたものを忘れる」、認知症は「食べたこと自体を忘れる」
  • ✅ 同じ話を短時間に繰り返す、物忘れを自覚していない、日常生活に支障が出てきたら要注意
  • ✅ 物忘れと認知症の間には「MCI」という段階があり、早期対応で回復できる可能性がある
  • ✅ 新しい薬(レカネマブ)はMCIや軽度の段階でしか使えないため、早期受診が治療の選択肢を広げる
  • ✅ 診断が出ることで家族が「病気だからしょうがない」と受け入れられるようになるケースも多い

「ちょっとおかしいかな」と感じたら、大げさだと思わずまずかかりつけ医に相談してみてください。訪問リハビリ12年・12,000件以上の経験から言えることは、早く動いた家族ほど、その後の介護が楽になっているということです。

【ご注意】本記事は、理学療法士の資格を持つ筆者が在宅訪問の経験をもとに作成した情報提供を目的としたものです。個人の状態や環境によって適切な対応は異なります。医療・介護に関する判断は、担当の医師・ケアマネジャー・専門職にご相談ください。

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