高齢の親が病院を嫌がる3つの理由と、訪問12年のPTが実践で使う説得のコツ

病院を嫌がる高齢の親への声かけのコツを訪問PTが解説する記事のアイキャッチイラスト 家族・介護者サポート

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📋 この記事でわかること

  • ✔ 高齢の親が病院を嫌がる3つの理由
  • ✔ タイプ別の具体的な声かけ・説得のコツ
  • ✔ 家族がやりがちなNGな伝え方
  • ✔ 訪問12年PTの実例エピソード2本
もくもく

・理学療法士歴15年|訪問リハビリ12年|累計12,000件以上の訪問
・在宅生活の専門家:小さなお子さんから難病、高齢の方まで幅広くサポート
・現場目線の発信:現場で培った「長く・安全に自宅で過ごすための工夫」を公開中

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何度言っても親が病院に行ってくれなくて…どうしたらいいんでしょう

もくもく
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それ、よくある悩みです。実は嫌がる理由によって、対応が全然変わるんですよ

「何度言っても病院に行ってくれない」

そう悩んでいる家族は少なくありません。体の不調が明らかなのに、本人は「大丈夫」の一点張り。怒っても、お願いしても動いてくれない。

在宅リハビリ専門で12年、訪問件数12,000件以上の現場でこうした場面に何度も立ち会ってきました。この記事では、嫌がる理由を3つに整理したうえで、タイプ別の声かけのコツをお伝えします。

なぜ高齢の親は病院を嫌がるのか

高齢の父親が腕を組んで病院への受診を拒否し、娘が心配そうに見ている場面のイラスト

病院を嫌がる高齢者には、必ず「行きたくない理由」があります。感情的に見えても、その裏には本人なりの根拠があるのです。

2025年の体系的レビュー(Theodorakis et al.)でも、高齢者の受診を妨げる障壁として心理的・社会的・医療システム的な要因が複合していることが示されています。その理由は大きく3つに整理できます。

出典:Theodorakis et al. (2025) Barriers to Implementing Effective Healthcare Practices for the Aging Population – Cureus

アメリカの研究(Leyva et al., 2020)では、65歳以上の約22.5%が受診を回避しており、理由として「深刻な病気が見つかることへの恐れ」が35.9%、「身体検査への不快感」が34.5%を占めていました。日本の在宅現場でも、同じ構造が見えます。

出典:Leyva, Taber, Trivedi (2020) Medical Care Avoidance Among Older Adults – The Gerontologist

病気を直視したくない──怖さと受け入れられない気持ち

「病院に行って、もし悪い病気が見つかったら…」と考えて足が止まるタイプです。現実を知るのが怖い、認めたくない。「今は元気だから大丈夫」と自分に言い聞かせることで、不安から目を背けている状態です。

病気と向き合うことは、自分の老いや死と向き合うことでもあります。無理もない気持ちだと、現場で何度も感じてきました。

病気を正しく理解していない──過信と諦めの両極

2方向に分かれます。「これくらいは年のせい」と症状を軽く見る過信型と、「どうせ治らない」と最初から諦める諦め型です。

共通しているのは、今の病気が実際にどの段階にあるかを正確に理解できていないことです。情報不足が、誤った判断につながっています。

治療・検査・通院そのものが嫌──採血・待ち時間・体力的負担

病気の認識とは関係なく、病院という場所・行為そのものが嫌なタイプです。採血や検査への恐れ、長い待ち時間、体力的な通院の負担など、理由は人によって様々です。

Kannan & Veazie(2014)の研究でも、受診回避の理由として「医療処置への嫌悪感」「身体検査への不快感」が上位に挙げられています。

出典:Kannan & Veazie (2014) Predictors of Avoiding Medical Care and Reasons for Avoidance Behavior – Medical Care

訪問PTが実際に使う説得のコツ【3つの理由別】

理学療法士が高齢者の目線に合わせてしゃがみ込み、優しく話しかけている場面のイラスト

タイプがわかれば、対応策も変わります。一律に「行ってください」と伝えても効果が薄いのはそのためです。

「直視できない」タイプには──折り合いをつける言葉かけ

「病気を受け入れてください」という言葉は、このタイプには逆効果になることがあります。

私が現場で意識しているのは、「受け入れる」ではなく「今の自分の体と折り合いをつける」という視点です。「完全に治さなくていい。今の体とうまく付き合っていくために、まず現状を知りましょう」という方向で話すと、心理的なハードルが下がることがあります。

「怖いのはわかる。でも知っておくほうが、選択肢が増える」という伝え方が有効です。

👨‍⚕️ もくもくポイント

病気を「受け入れる」より、今の自分の体と「折り合いをつける」。その視点の転換が、親の気持ちをほぐすきっかけになることがあります。

「理解不足・諦め」タイプには──フレームを「治す」から「悪化させない」へ

「もう治らない」と言う親には、こう伝えてみてください。

「治すんじゃなくて、悪くならないようにするために行くんだよ」

今の時代、完治しない病気と向き合いながら生活している人はたくさんいます。大切なのは「治す」ことではなく「悪化を防ぐ」こと。この視点の転換が、諦めモードの親に効くことがあります。

また、一つの病院・一人の先生と合わなければ、セカンドオピニオンという選択肢もあります。「この病院が嫌なら別の先生に診てもらおう」という提案も有効です。

担当していたある方も、長年同じ先生に「様子を見ましょう」と言われ続けて「行っても意味がない」と思い込んでいました。別のクリニックに変えたところ「ちゃんと話を聞いてくれる」と表情が変わり、その後は自分から定期受診するようになりました。先生との相性は、受診継続に想像以上に影響します。

👨‍⚕️ もくもくポイント

「治しに行く」ではなく「悪くならないために行く」。このフレームの転換が、諦めモードの親に効くことがあります。

「通院が嫌」タイプには──具体的な目的を作る

「病院に行く理由」を別のところに作るのが効果的です。また、「今日はこれだけ」という小さなゴールを設定することで、ハードルを下げる方法もあります。

採血がとにかく怖い、という方が担当先にいました。「今日は採血なし。先生に話を聞いてもらうだけでいい」と約束して一緒に出かけたところ、「それなら」と腰を上げてくれました。病院に着いて先生と顔を合わせると、本人から「血糖値が気になる」と言い出して、結果的に採血も受けてくれた。小さなゴール設定が、最初の一歩を作った事例です。

家族がやりがちなNGと、効果的な伝え方

40代の娘が高齢の母親と向き合い、テーブル越しに本音を伝えようとしている場面のイラスト

「何度言っても動いてくれない」と感じるとき、伝え方そのものに原因があることがあります。

感情的に責めてしまうパターン

「なんで行かないの!」「行かなきゃダメでしょ!」

心配しているからこそ出てしまう言葉ですが、これは逆効果になることが多いです。責められた親は防衛的になり、ますます頑固になってしまいます。怒りは心配の裏返し。それはわかっていても、伝え方が変わるだけで親の反応は大きく変わります。

👨‍⚕️ もくもくポイント

家族が感情的になるのは、心配しているからです。でも伝え方が変わるだけで、親の反応は大きく変わることがあります。

「なぜ行ってほしいのか」を腹を割って伝える

意外と家族間でもちゃんと話せていないのが、「なぜ病院に行ってほしいのか」という本音の部分です。

長生きしてほしいのか。元気でいてほしいのか。心配で夜も眠れないのか。

感情的にではなく、冷静に正面から伝えることが大切です。「あなたに元気でいてほしいから、私のためだと思って行ってほしい」という言葉は、親の心に届くことがあります。腹を割って話せば伝わることは、現場でも何度も経験してきました。

👨‍⚕️ もくもくポイント

なぜ病院に行ってほしいのか、家族間でもちゃんと話せていないことは多いです。腹を割って話せば伝わることは、意外と多いものです。

それでもダメなら第三者を巻き込む

家族だけで抱え込まないことも重要です。

ケアマネジャー、訪問看護師、訪問リハビリのスタッフなど、第三者からの言葉が親の気持ちを動かすことがあります。「家族に言われると反発するが、専門家に言われると素直に聞く」という方は少なくありません。

一人で頑張らず、専門職をうまく使うことも立派な対処法です。

認知症の親への特別な対応

認知症の高齢女性と娘が玄関で手をつなぎ、一緒に外出しようとしている場面のイラスト

これまでの対応策は、ある程度理解力が保たれている方を前提にしています。認知症が進んでいる場合は、少し違うアプローチが必要です。

「病院」ではなく「健康診断」のニュアンスで

認知症の方に「病院に行って治療しましょう」と伝えても、うまく伝わらないことがあります。「病院」という言葉自体が不安や抵抗感を引き起こすこともあります。

そういった場合、言葉のニュアンスを変えることが有効です。「病院に行こう」ではなく「健康チェックに行こう」。毎年届く特定健診の封筒を見せながら、「みんな受けてるんだよ、一緒に行こうか」と誘うような感覚で伝えます。

医療行為として構えさせず、日常の延長として提案することで、抵抗感が薄れることがあります。また「一緒に行く」という言葉を添えることで、安心感につながることも多いです。

繰り返し・タイミングを意識する

認知症の方は短期記憶が低下しているため、一度説明しても忘れてしまいます。大切なのは、機嫌の良い時間帯を選んで、短く・繰り返し伝えることです。

朝の機嫌が良い時間帯に「今日、お医者さんに行こうか」と短く誘うだけで、夕方に長々と説明するより反応が変わることがあります。一度断られても、時間を置いて別の日に再チャレンジすることが大切です。

一人で連れて行かない──慣れた人・環境を整える

認知症の方にとって、慣れない場所・知らない人への不安は想像以上に大きいです。家族の誰かが必ず同行すること、できれば普段から関係性の良い人が付き添うことが、受診のハードルを大きく下げます。

また、受付や待ち時間の対応について事前に病院側に相談しておくことも有効です。「予約時間にすぐ案内してもらえるよう段取りしておく」だけで、長い待ち時間による混乱や帰りたがりを防ぐことができます。

訪問現場でのエピソード

ここまで紹介してきた対応策は、実際の訪問現場で経験したことをもとにしています。2つのエピソードを紹介します。

📝 訪問現場より

エピソード① 「もう治らない」と言い続けた糖尿病の方

訪問先に、「病院なんか行っても意味がない」と言い続けていた方がいました。糖尿病の診断を受けていたものの、何年も受診をやめていた状態です。糖尿病を持つ65歳以上では、約26.1%が受診を回避しているというデータもあります(Ng et al., 2020)。

出典:Ng et al. (2020) Factors Associated With Avoiding Health Care Among Medicare Beneficiaries With Type 2 Diabetes – CDC Preventing Chronic Disease

私は「治すためじゃなくて、悪くならないために行きましょう」と伝えました。そして糖尿病が進行した場合の合併症、特に人工透析が必要になった場合の生活の変化を具体的に説明しました。

「それは困る」という言葉が返ってきて、数週間後に受診してくれました。「悪化させない」というフレームの転換が効いた事例です。

📝 訪問現場より

エピソード② リハビリの指示書が病院へ行くきっかけになった方

「絶対に病院には行かない」とおっしゃっていた方がいました。ケアマネジャーが訪問リハビリを提案してくれたのですが、リハビリを受けるためには医師の指示書が必要です。

「リハビリを始めるために、先生に書類を書いてもらいに行くだけでいいですよ」と家族と一緒にお伝えしたところ、「それなら」と病院へ行ってくれました。その後リハビリが始まり、定期的な通院にもつながっていきました。

「病院に行く」ではなく「書類をもらいに行く」という目的の設定が、心理的ハードルを下げた事例です。

まとめ

📝 まとめ

  • ✅ 病院を嫌がる理由は3タイプ:直視したくない・理解不足と諦め・通院そのものが嫌
  • ✅ タイプを見極めて言葉かけを変えるだけで、反応は大きく変わる
  • ✅ 感情的に責めるより「なぜ行ってほしいのか」を冷静に正面から伝える
  • ✅ 一人で抱え込まず、ケアマネジャーや専門職を巻き込むことも選択肢
  • ✅ 認知症の親には言葉のニュアンス・タイミング・同行者を意識する

「受け入れる」より「折り合いをつける」。「治す」より「悪化させない」。この視点の転換が、親の気持ちを動かす第一歩になるかもしれません。

【ご注意】本記事は、理学療法士の資格を持つ筆者が在宅訪問の経験をもとに作成した情報提供を目的としたものです。個人の状態や環境によって適切な対応は異なります。医療・介護に関する判断は、担当の医師・ケアマネジャー・専門職にご相談ください。

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