ダブルケアで限界を感じる前に|介護の負担を仕組みで減らす方法

育児と介護を同時に抱えて疲れた表情を浮かべる女性のイラスト 家族・介護者サポート

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📋 この記事でわかること

  • ✔ ダブルケア(育児と介護の同時進行)がなぜこれほど苦しいのか
  • ✔ 「育児は減らせない」前提で、介護側の負担を仕組みで削る具体策
  • ✔ 見落としがちな相談窓口の「隙間」と、訪問リハビリ現場でうまくいった実例
もくもく

・理学療法士歴15年|訪問リハビリ12年|累計12,000件以上の訪問
・在宅生活の専門家:小さなお子さんから難病、高齢の方まで幅広くサポート
・現場目線の発信:現場で培った「長く・安全に自宅で過ごすための工夫」を公開中

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家族
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親の介護と子育てが同時に来て、毎日ヘトヘトです……。どこから手をつければいいのか分かりません。

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その大変さ、訪問の現場で何度も見てきました。育児は減らせませんが、介護側の“手数”は仕組みで減らせますよ。

訪問リハビリ歴12年の理学療法士として、子育てと親の介護を同時に抱えて疲れ切ったご家族を、何度も担当してきました。ダブルケアのつらさの半分は「時間が足りない」こと。

そして育児の時間は削れません。だからこそ動かせるのは、介護に取られている時間の方です。

この記事では、気持ちの持ちようではなく、介護の“手数”を物理的に減らす方法を、現場の経験と公的データをもとにお伝えします。

ダブルケアとは?まず知っておきたいこと

ダブルケアとは、育児と親などの介護を同時に担っている状態を指します。内閣府の調査では、ダブルケアを行う人は全国で約25万人と推計されました(内閣府「育児と介護のダブルケアの実態に関する調査」2016年より)。

年代は30〜40歳代が男女とも約8割を占め、働き盛りで子育ての真っ最中の世代に集中しています。晩婚化や出産年齢の上昇により、子どもがまだ小さいうちに親の介護が始まるケースが増えました。

この数字は2016年時点のもので、近年はさらに多いとする調査もあります。つまり「うちだけが特別に大変」なのではなく、いま多くの家庭が同じ状況に直面しているのです。

大切なのは、この状況を個人の頑張りの問題として抱え込まないことです。

出典:内閣府「育児と介護のダブルケアの実態に関する調査」(2016年)

「頑張れば何とかなる」が一番危ない

子どもと高齢の親の間で疲れている子育て世代の女性のイラスト

ダブルケアで最初に崩れやすいのが、ご本人の睡眠と気持ちの余裕です。育児の時間は、子どもの成長や行事に合わせて動くもので、基本的に減らせません。

習い事の送迎も学校行事も、日付をずらせない。一方で介護は、やり方とサービスの使い方しだいで、家族が使う時間を減らせる余地があります。

だからダブルケアで動かすべきレバーは、育児ではなく介護側です。「自分がもっと頑張れば」と抱え込むほど、睡眠が削られ、余裕がなくなり、親にも子にも優しくできなくなる──これは現場で何度も見てきた悪循環です。

国の調査でも、同居して介護している人の多くが悩みやストレスを抱えていることが示されています(厚生労働省「国民生活基礎調査」より)。まず削るべきは、気合ではなく介護に取られている「手数」だと考えてください。

出典:厚生労働省「令和4年 国民生活基礎調査(介護の状況)」

見落としがちな「相談窓口の隙間」

介護と育児で相談窓口が別々になっている状況を示す図解

意外と知られていないのが、介護と育児では相談する窓口が別々だという点です。介護は地域包括支援センター、子育てはこども家庭センター(子育て世代包括支援センター)が主な窓口で、「ダブルケアをまとめて相談できる場所」は、実は制度上あまり整っていません。

そのため、両方を別々に説明して回るだけで疲れてしまう方も少なくありません。まずは介護側の地域包括支援センターに「子育てと同時進行で限界が近い」とはっきり伝えるのが近道です。

ケアマネジャーが決まっていれば、その人に育児の事情まで共有しておくと、サービスの組み方が変わります。近年は堺市のようにダブルケア相談の一括窓口を設ける自治体も出てきました。

お住まいの市区町村で「ダブルケア 相談」と調べてみる価値があります。なお、親御さんがまだ要介護認定を受けていない場合は、介護サービスを使う前提として、まずこの認定の申請が出発点になります。

認定がないと多くのサービスは利用できないため、「これから」の段階なら、地域包括支援センターで申請の相談から始めてください。まずは一つの窓口とつながっておくだけでも、いざというときに動きやすくなります。

👨‍⚕️ もくもくポイント

介護と育児の窓口は別々です。どちらに相談すればいいか迷ったら、まず介護側の地域包括支援センターへ。「子育てと同時で限界が近い」と正直に伝えるほど、支援は動きやすくなります。

介護に取られる「時間そのもの」を仕組みで削る

介護の負担を減らす優先順位(送迎・通い、福祉用具、介助姿勢)を示す図解

ここからが本題です。介護負担を減らすというと「腰を痛めない介助の姿勢」から入りがちですが、ダブルケアで本当に効くのは、そもそも介護に取られる時間を短くすることです。

優先順位は、①送迎や通いを外部に任せる、②福祉用具で介助の手間を減らす、③介助の姿勢を工夫する、の順で考えます。使えるサービスは要介護度やお住まいの地域によって変わるので、ケアマネジャーに「介護に取られている時間を減らしたい」という軸で相談するのがコツです。

介護保険のサービスは原則1割(所得により2〜3割)の自己負担で利用でき、自己負担が高額になった月は、あとから一部が払い戻される「高額介護サービス費」という仕組みもあります(ただし、介護保険で使える限度額を超えて利用した分は対象外です)。費用が不安で利用をためらう方も多いですが、まずはケアマネジャーに家計の状況も含めて相談してみてください。

なお、③の介助の姿勢の工夫については、記事後半の夜間トイレのエピソードで具体的にご紹介します。

小規模多機能型居宅介護という選択肢

まず知っておいてほしいのが、小規模多機能型居宅介護です。これは一つの事業所で「通い・訪問・泊まり」を、必要な時に必要な回数だけ柔軟に組み合わせられるサービスです(厚生労働省より)。

デイサービスやショートステイのように曜日と時間が固定されないため、子どもの行事や急な残業といった、動かせない育児・仕事の予定に介護の方を合わせられます。受診の送迎を任せられる事業所も多く、「親の通院のたびに仕事を休む」という消耗を大きく減らせます。

同じ職員が通いも泊まりも担当してくれるため、親御さんが環境の変化に混乱しにくいのも、認知症がある場合の利点です。

出典:厚生労働省「小規模多機能型居宅介護」

👨‍⚕️ もくもくポイント

介護の負担を減らすときは、姿勢の工夫より先に「送迎・通い・泊まりを外に任せる」ことから考えます。育児は減らせないぶん、介護に取られる時間そのものを削るのが、いちばん効きます。

送迎付きデイサービスの選び方

小規模多機能が近くにない、あるいは合わない場合は、通常のデイサービスでも使い方しだいで負担が変わります。選ぶときに見てほしいのは、送り迎えの時間帯を家庭の都合に合わせられるか、入浴を任せられるか、そして急な延長や宿泊に対応できるかの3点です。

特に入浴介助は、家庭で行う介助の中でも体力を最も奪う作業のひとつ。ここをデイに任せるだけでも、家族の負担は大きく軽くなります。

親御さんが施設で過ごしている時間は、そのまま家族が育児や仕事、休息に使える時間になります。どのサービスがどれくらいの費用で使えるかは、ケアマネジャーに家庭の状況を伝えたうえで見積もってもらうと、無理のない組み方が見えてきます。

✅ デイサービスを選ぶ3つのチェック

  • 送り迎えの時間帯を、家庭の都合に合わせられるか
  • 入浴を任せられるか(家庭の介助で最も体力を奪う作業)
  • 急な延長や宿泊に対応できるか

福祉用具と介助のひと工夫で「毎日の数分」を削る

次に、日々の介助そのものを軽くします。ベッド柵や据置型の手すりを使えば、これまで毎回支えていた立ち座りを、本人がつかまって自分でできる範囲に広げられます。

1回あたりは数分でも、毎日何度も積み重なる動作なので、家族が付き添う回数を確実に減らせます。ここで大切なのは、できることまで奪わないこと。

手伝いすぎると本人の筋力が落ち、かえって介護が重くなります。用具の選定や設置位置は、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員と相談しながら決めると安全です。

多くの福祉用具はレンタルで試せるので、まず短期間使ってみて、家庭の動線に合うかどうかを確かめるのがおすすめです。

👨‍⚕️ もくもくポイント

福祉用具は「できることまで奪わない」のが鉄則です。手伝いすぎは筋力低下を招き、かえって介護が重くなります。多くはレンタルで試せるので、まず短期間使って家庭の動線に合うか確かめましょう。

訪問現場からのエピソード①──小規模多機能で娘さんに余裕が戻った

小規模多機能型居宅介護を利用して余裕を取り戻した家族のイラスト

📝 訪問現場より

以前担当した、70代で体の片側が動きにくい後遺症のある方のお宅は、同居する娘さんが仕事と子育てを抱えるダブルケアの状況でした。子どもの行事と親の受診が重なり、休みがうまく取れず、介護の時間そのものが確保できていませんでした。
訪問リハビリで入っていて、明らかに介護時間が足りていないと感じた私は、「もっと多様な使い方ができる小規模多機能が合うのではないか」と、ケアマネジャーとご家族に提案しました。切り替え後は受診の送迎を任せられ、2週に1回の泊まりも活用。週1回のリハビリも継続できました(介護単位を多く使うため、区分支給限度額を超えないよう調整は必要でした)。
しばらくして娘さんは、「以前より余裕ができて、親にも優しくできるようになった」と話してくれました。手数を減らすことは、単なる時短ではなく、家族の心の余裕と親子関係を取り戻すことでもあるのだと、あらためて感じた一件でした。

訪問現場からのエピソード②──夜間トイレの付き添いを減らす

📝 訪問現場より

ダブルケア家庭で特に消耗が大きいのが、夜間のトイレ介助です。夜中に何度も起こされて付き添えば、細切れの睡眠で翌朝の育児準備や出勤に体力が残りません。介護の疲れが、そのまま育児の時間へしわ寄せする典型的な場面です。
訪問現場でよくお伝えするのは、まずポータブルトイレを、本人が動かしやすい側(体を動かしやすい方)に置き、夜間の移動距離を最短にすること。立ち座りが楽な向きに置くだけでも、負担はぐっと軽くなります。さらに手すりを足して立ち座りを自分でできる範囲に広げ、足元灯や段差の解消で転倒リスクを下げます。状態によっては、すべてトイレに行く前提を見直すだけで介助回数が減ることもあります。移動が一度減るだけでも、家族が起こされる回数はぐっと少なくなります。
ここで理学療法士として必ず添えるのが、安全面の注意です。夜間の排尿時は血圧が下がりやすく、急に立ち上がるとふらつきや転倒につながります(起立性低血圧の診療に関する研究より)。起き抜けはベッドの端で一呼吸おいてから立つ。この一手間が、夜間の思わぬ事故を防ぎます。用具の導入や配置は自己流で決めず、必ずケアマネジャーや専門職と一緒に検討してください。

出典:河野律子「起立性低血圧」昭和医学会雑誌 71巻6号(523-529), 2011年

👨‍⚕️ もくもくポイント

夜間の付き添いは、「1回でも減らす」を目標にすると一気に楽になります。ポータブルトイレを寝床のすぐ横に置く、足元を明るくして安全に一人で行ける範囲を広げる——回数と距離が減るほど、家族が起こされる負担は小さくなります。無理のない範囲は、ケアマネジャーや専門職と相談して決めましょう。

介護側だけでも「外に出す」という選択肢

それでも手が回らないときは、介護に関わる作業の一部を外部に任せることも、立派な選択肢です。育児は代わってもらいにくくても、介護側の送迎や見守り、家事の一部は外注できる余地があります。

抱え込むのをやめて、使えるものは使う。それはサボりではなく、ダブルケアを長く続けるための現実的な判断です。

また、あなた自身が仕事を持っているなら、介護休業制度や勤務先の時短勤務・相談窓口も、使える仕組みのひとつです。介護のために離職してしまう前に、まずは制度で仕事側に余白を作れないかを考えてみてください。

そのうえで「これは自分でなくてもいい作業では?」と一つずつ棚卸ししてみてください。

まとめ

ダブルケアのつらさは「時間が足りない」ことに集約されます。そして育児の時間は減らせません。

だからこそ、動かせるのは介護に取られている時間の方です。小規模多機能やデイで送迎・通いを任せる、福祉用具で毎日の介助を軽くする、夜間トイレの付き添いを安全に減らす──気持ちで乗り切ろうとするのではなく、仕組みで手数を削ることが、ご自身と家族を守ります。

一人で抱え込まず、まずは地域包括支援センターやケアマネジャーに「限界が近い」と伝えることから始めてみてください。また、同じようにダブルケアを経験した人が集まる家族会や地域の集いで、気持ちを話せる場を持っておくことも、心の支えになります。

頼れる仕組みを一つ増やすことが、あなた自身の睡眠と、家族との穏やかな時間を守る、大切な第一歩になります。

📝 まとめ

  • ✅ つらさの正体は「時間が足りない」こと。育児の時間は減らせない
  • ✅ だから動かせるのは、介護に取られている時間の方
  • ✅ 小規模多機能・デイ・福祉用具で”手数”を仕組みで削る
  • ✅ 一人で抱えず、地域包括支援センターやケアマネジャーに「限界が近い」と伝える
【ご注意】本記事は、理学療法士の資格を持つ筆者が在宅訪問の経験をもとに作成した情報提供を目的としたものです。個人の状態や環境によって適切な対応は異なります。医療・介護に関する判断は、担当の医師・ケアマネジャー・専門職にご相談ください。

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