親の介護を兄弟で分担するには?一人で抱え込む前にできること

親の介護を兄弟で分担する方法を考える家族のイメージ 家族・介護者サポート

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📋 この記事でわかること

  • ✔ 介護が一人に集中してしまう理由
  • ✔ 離れて暮らす兄弟にできる具体的なサポート
  • ✔ 家族でSOSを出し合うための話し合いのヒント
もくもく

・理学療法士歴15年|訪問リハビリ12年|累計12,000件以上の訪問
・在宅生活の専門家:小さなお子さんから難病、高齢の方まで幅広くサポート
・現場目線の発信:現場で培った「長く・安全に自宅で過ごすための工夫」を公開中

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兄に手伝ってほしいって言いたいけど、遠くに住んでるし、言いにくくて…結局いつも私一人なんです。

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その気持ち、すごくよくわかります。でも離れていてもできることはあるし、まずは今の大変さを正直に伝えることが大切な第一歩です。

訪問リハビリに12年以上携わる中で、「私ばかりが介護している」という声を何度も聞いてきました。兄弟がいるのに、なぜか自分一人に負担が集中してしまう——そこにはちゃんとした理由があります。

この記事では、なぜ介護が一人に集中するのか、そして兄弟間でどう分担していけばいいのかを、現場目線でお伝えします。

なぜ介護は一人に集中してしまうのか

介護疲れで一人で悩む主介護者のイメージ

同居しているだけで主介護者になる現実

親の介護が必要になったとき、「同居しているから」という理由だけで、自然と主介護者になってしまうケースはとても多いです。

訪問リハビリの現場でも、同居している息子さんや娘さんが、気づけばすべての介護を一手に引き受けていることがよくあります。離れて暮らす兄弟は「近くにいるから大丈夫だろう」と思い、詳しい状況を把握しないまま時間が過ぎていく——そういった構図が生まれやすいのです。

研究でも、要介護者の約68%に主な家族介護者が存在しており、その多くが同居家族であることが報告されています(涌井, 2021)。

出典:涌井智子(2021)在宅介護における家族介護者の負担感規定要因

👨‍⚕️ もくもくポイント

同居しているだけで主介護者になりやすい。まずその現実を知っておくことが大切。

「言っても変わらない」という諦め

もう一つの大きな理由が、「言っても変わらない」という諦めです。

遠くに住む兄弟に「大変だ」と伝えたところで、実際に介護を手伝ってもらえるわけではない——そう感じて、SOSを出すことをやめてしまう主介護者はとても多いです。

しかし実際には、離れて暮らす兄弟も「親のことが心配だけど、どうやって手伝えばいいかわからない」と感じていることが少なくありません。伝えないまま抱え込み続けることが、負担をさらに大きくしてしまうのです。

分担を難しくする2つの壁

SOSを出せていない

介護分担がうまくいかない一番の原因は、主介護者が「大変だ」と言えていないことです。

「心配かけたくない」「言っても変わらない」——そう思って黙って抱え込んでいるうちに、気づけば限界を超えてしまっていることがあります。

研究によると、精神的な負担感を感じている家族介護者は6割以上にのぼります(福岡県立大学, 2022)。にもかかわらず、周囲の援助をうまく活用できている介護者は多くありません。まず「大変だ」と声に出すことが、分担への第一歩です。

出典:福岡県立大学看護学部紀要「家族介護者の介護力構成要素と介護負担感との関連」

介護負担が長期化すると介護うつにつながるケースもあります。早めのSOSが自分を守ることにつながります。

お金の話になると揉めやすい

介護にはお金がかかります。介護サービスの利用料、医療費、日用品の購入など、日々の出費は決して小さくありません。

「誰がいくら負担するか」という話になると、兄弟間で意見が割れることがあります。現場でも、お金の問題がきっかけで家族関係がこじれてしまったケースを見てきました。

費用の分担については、感情的になる前に早めに話し合いの場を設けることが大切です。親の年金や貯蓄でどこまでまかなえるか、不足分をどう補うかを、冷静に確認し合うことから始めましょう。

📝 訪問現場より

訪問先に、介護費用の分担をめぐって姉妹が疎遠になってしまったご家族がいました。最初は話し合えていたものの、介護が長期化するにつれて負担の不公平感が積み重なり、やがて連絡を取らなくなってしまったとのことでした。

お金の問題は後回しにするほどこじれやすい。だからこそ、早い段階から、そして定期的に話し合う機会をつくることが大切だと感じています。

⚠️ 一人で抱え込み続けると虐待リスクにもつながる

一人で介護を抱え込み続けることは、介護者自身の心身を蝕むだけでなく、虐待リスクにもつながります。厚生労働省の調査によれば、養護者(家族など)による高齢者虐待の背景として「介護疲れ・介護ストレス」が最も多く挙げられています(厚生労働省, 2024)。

虐待は特別な人が起こすことではありません。善意で介護を続けてきた人が、追い詰められた末に起こしてしまうケースが多いのが現実です。「自分が頑張らなければ」と思い込む前に、家族や専門職に相談することが、自分と親を守ることにつながります。

出典:厚生労働省「令和6年度 高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果」

離れて暮らす兄弟にできること

兄弟が集まって介護の役割分担を話し合う場面

月に一度でも顔を見せて介護者を休ませる

離れて暮らしていても、できることは必ずあります。その中で一番大切なのが、定期的に顔を見せることです。

月に一度でも帰省して、主介護者に休んでもらう時間をつくる。それだけで、日々の負担感はずいぶん変わります。訪問リハビリの現場でも、「兄が月に一度来てくれるようになってから、少し楽になった」という声を聞いたことがあります。

介護をしている家族にとって、「自分だけじゃない」と感じられることが、精神的な支えになるのです。

遠距離介護の具体的な進め方については、遠距離介護、何から始める?で詳しく解説しています。

数日間泊まって介護を代わる

さらに踏み込んで、数日間泊まり込んで介護を代わるというのも、大きなサポートになります。

主介護者が旅行に行ったり、ゆっくり休んだりできる時間をつくることを「レスパイトケア」といいます。離れて暮らす兄弟が定期的に泊まりに来ることで、この役割を担うことができます。

中には、親のために親元に移り住んで介護をする息子さん・娘さんもいます。すぐには難しくても、「数日間代わる」ことなら実現できる場合も多いはずです。

できない時はお金で貢献する

距離や仕事の都合で、物理的に介護に関わることが難しい場合もあります。そういった時は、費用面での貢献を考えてみましょう。

介護サービスの利用料を一部負担する、日用品や介護用品を定期的に送るなど、お金や物での支援も立派なサポートです。「体は出せないけどお金は出す」という役割分担が、家族間でうまく機能しているケースもあります。

大切なのは、何もしないのではなく、自分にできる形で関わり続けることです。

役割を「見える化」して分担する

「手伝う」という曖昧な約束では、時間が経つにつれて自然消滅しがちです。誰が何を担当するかを具体的に決めることが、分担を長続きさせるコツです。

✅ 分担できる役割の例

  • 日常的な買い物・日用品の補充
  • 通院の付き添い・送迎
  • 薬の管理・受け取り
  • ケアマネジャー・サービス事業者との連絡窓口
  • 金銭管理・各種支払い
  • 緊急時の連絡体制・連絡先の共有

📝 訪問現場より

訪問先で印象に残っているのが、3姉妹で介護を分担していたケースです。一人が日常的な買い物を担当し、もう一人が通院の付き添いや自宅の掃除など身の回りの介助を担当、そして3人目がケアマネジャーや各サービス事業者との連絡窓口をまとめて担う——という役割分担が自然にできあがっていました。

「全部平等に」ではなく、それぞれの生活スタイルや得意なことに合わせて役割を決めたことが、無理なく続けられた理由だと感じました。

介護サービスを使って主介護者を休ませる

兄弟間での分担と合わせて、介護サービスを上手に活用することも大切です。デイサービスやショートステイ(短期入所)を利用すれば、主介護者が日中・数日間の休息を取ることができます。

「サービスを使うのは申し訳ない」と感じる家族は多いですが、主介護者が倒れてしまえば介護そのものが続けられなくなります。サービスを活用して介護者自身の体力と精神的余裕を保つことが、長期的に親を支えるための重要な選択です。どんなサービスが使えるかは、ケアマネジャーに気軽に相談してみてください。

介護保険サービスを利用するには要介護認定の申請が必要です。まだ申請していない場合は、ケアマネジャーか地域包括支援センターへの相談から始めてみましょう。

SOSの出し方・家族で話し合うためのヒント

介護の大変さを具体的に伝える

「大変だ」という気持ちは、伝えなければ相手には伝わりません。しかし「大変」という言葉だけでは、離れて暮らす兄弟にはなかなか実感してもらえないことがあります。

大切なのは、具体的に伝えることです。

たとえば「毎日朝6時から夜10時まで介護している」「週3回の通院付き添いで仕事を休んでいる」「夜中に何度も起こされて眠れていない」——こういった具体的な事実を伝えることで、相手も状況を理解しやすくなります。

感情的になる必要はありません。「これだけのことをやっている」という事実を、落ち着いて共有するだけで十分です。

👨‍⚕️ もくもくポイント

離れて暮らす兄弟も「どう手伝えばいいかわからない」と思っている。諦める前に、具体的な事実を伝えてみよう。

📝 訪問現場より

訪問先に、介護うつのような状態になっていた主介護者の方がいました。話を聞くと、ずっとSOSを出せずにいたとのことでした。思い切って姉妹に本音を打ち明けたところ、姉妹も状況を知らなかっただけですぐに動いてくれたそうです。

「もっと早く言えばよかった」という言葉が今でも印象に残っています。本音で話すことが、状況を変える最初の一歩なのだとあらためて感じた経験でした。

サービス担当者会議を活用する

家族だけで話し合うのが難しい場合は、専門職の力を借りることも一つの方法です。

介護保険サービスを利用している場合、ケアマネジャーが主催するサービス担当者会議という場があります。これは本来、介護サービスの内容を確認・調整するための会議ですが、主介護者と離れて暮らす家族が一緒に参加することで、介護の現状を共有する場としても機能します。

訪問リハビリの現場でも、このサービス担当者会議がきっかけで、離れて暮らす兄弟が初めて介護の実態を知り、役割分担の話し合いが始まったケースを経験しました。

「家族だけで解決しなければ」と思わず、ケアマネジャーに相談してみることも選択肢の一つです。

👨‍⚕️ もくもくポイント

サービス担当者会議は、家族が介護の現状を共有できる貴重な場。ケアマネジャーに相談してみてください。

📝 訪問現場より

以前、離れて暮らす息子さんが帰省したタイミングでサービス担当者会議が開かれたことがありました。ヘルパーが自宅で何をしているか、デイサービスでどんな活動をしているか、リハビリや看護がそれぞれどんな役割を担っているかを、その場で詳細にお伝えしました。息子さんは「こんなにたくさんの人が支えてくれているとは知らなかった」と驚いていました。

その後、息子さんは自分から親に電話して最近の状態を確認するようになったと、後から聞きました。担当者会議への参加が、関わり方を変えるきっかけになったケースです。

兄弟で介護を分担するために大切なこと

介護の分担がうまくいっている家族には、共通していることがあります。それは、お互いの状況を気にかけ合っていることです。

主介護者は「大変だ」とSOSを出す。離れて暮らす兄弟は「大丈夫か」と定期的に声をかける。この双方向のコミュニケーションが、介護を長く続けるための土台になります。

👨‍⚕️ もくもくポイント

主介護者が「大変だ」と言える関係をつくることが、兄弟間で一番大切なこと。双方向のコミュニケーションが、介護を長く続けるための土台になります。

介護は、誰か一人が全部抱え込めるものではありません。一人で抱え込み続ければ、心身ともに限界を超えてしまいます。

「言っても変わらない」と諦める前に、まず伝えてみてください。そして離れて暮らす兄弟も、「自分には関係ない」ではなく、「自分にできることは何か」を考えてみてください。

小さな関わりの積み重ねが、主介護者の大きな支えになります。

まとめ

📝 まとめ

  • ✅ 同居しているだけで主介護者になりやすい現実がある
  • ✅ 「言っても変わらない」という諦めがSOSを出せなくさせている
  • ✅ 一人で抱え込み続けることは虐待リスクにもつながる
  • ✅ 離れて暮らす兄弟でも、顔を見せる・泊まって代わる・費用を負担するなどできることがある
  • ✅ 役割を具体的に決めて「見える化」することで分担が長続きする
  • ✅ デイサービスやショートステイなど介護サービスの活用も主介護者の助けになる
  • ✅ 介護の大変さは具体的な事実で伝えることが大切
  • ✅ サービス担当者会議など専門職の力を借りることも有効

介護は家族全員の問題です。主介護者は勇気を持ってSOSを出し、周りの家族は「大丈夫か」と声をかける——その思いやりの積み重ねが、介護を長く続けるための力になります。

一人で抱え込まないでください。あなたの周りには、きっと力になれる人がいます。

【ご注意】本記事は、理学療法士の資格を持つ筆者が在宅訪問の経験をもとに作成した情報提供を目的としたものです。個人の状態や環境によって適切な対応は異なります。医療・介護に関する判断は、担当の医師・ケアマネジャー・専門職にご相談ください。

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