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📋 この記事でわかること
- ✔ 高齢者がつまずく・滑る本当の理由(すり足とつま先の関係)
- ✔ 転倒を防ぐ靴選び6つのポイント
- ✔ 靴を買い替えるべきタイミングの見分け方
- ✔ 訪問リハビリの現場で見てきた「靴と転倒」の実例
- ✔ 靴だけに頼らないために家庭でできること

最近ね、なんでもないところでつまずくのよ。段差なんてないのに。

この前も玄関で転びかけて…。靴を変えたら少しはマシになるんでしょうか?

靴で”ゼロ”にはできません。でも、つまずくリスクを下げることはできますよ。
「最近、親がよくつまずくようになった」。そう感じている方は少なくありません。平らな床やわずかな段差でつまずく場合、加齢によってつま先が上がりにくくなっている可能性があります。
私は訪問リハビリの理学療法士として12年、これまで12,000件以上のご自宅にうかがってきました。そのなかで実感しているのは、転倒しやすい方の足元を見ると、履いている靴が合っていないケースが本当に多いということです。
そして靴は、ご家族が気づいてあげられる数少ないポイントでもあります。歩き方や筋力の変化は毎日見ていると気づきにくいものですが、靴なら玄関に並んでいます。
先にお伝えしておきたいのは、靴を変えれば転ばなくなるわけではないということ。それでも靴は「今日から変えられる」数少ない要素です。転倒予防の視点から、靴をどう選べばいいのかをお伝えします。
なぜ高齢者はつまずく・滑るのか

「すり足」はつま先が上がりにくくなったサイン
歩くとき、私たちは無意識に足を前に振り出しています。このとき地面とつま先の間にできるわずかなすき間を「トゥクリアランス」と呼びます。個人差はありますが、地面とのすき間はごくわずかしかありません。
このすき間が小さくなると、ほんの数ミリの段差でも引っかかります。玄関マットの縁、敷居、歩道と車道の境目。ご家族から見れば「何もないところ」でも、ご本人にとっては十分につまずく高さなのです。
転倒は決して珍しいことではありません。高齢者の3人に1人が1年間に一度以上転倒するとされ、転倒は大腿骨近位部の骨折など高齢者の骨折の主な原因であり、要介護になる主要な原因のひとつでもあります(日本転倒予防学会誌「高齢者の転倒予防の現状と課題」より)。
厚生労働省の令和4年国民生活基礎調査によると、要支援になった主な原因の第3位は「骨折・転倒」で、16.1%を占めています(厚生労働省「令和4年 国民生活基礎調査」より)。まだお元気に見える要支援の段階の方が、一度の転倒をきっかけに一気に生活が変わってしまうことは少なくありません。
なぜつま先が上がらなくなるのか
理由はひとつではありません。すねの前側にある筋肉(前脛骨筋)の力が落ちること、足首の関節が硬くなって足の甲側に反らせにくくなること、股関節や膝が十分に曲がらず足が持ち上がらないこと。さらに背中が丸くなると、重心が前に寄って足を振り出しにくくなります。
✅ つま先が上がりにくくなる主な理由
- すねの前側の筋肉(前脛骨筋)の力が落ちる
- 足首が硬くなり、足の甲側に反らせにくくなる
- 股関節や膝が十分に曲がらず、足が持ち上がらない
- 背中が丸くなり、重心が前に寄る
つまり「すり足」は足だけの問題ではなく、体全体の変化があらわれた結果ということです。だからこそ、靴だけで解決しようとするのは無理があります。
⚠️ こんなときは靴より先に受診を
すり足や歩きにくさが急に出てきた、片側の足だけ引きずる、手足のしびれやふらつきを伴う——こうした場合は、脳や神経の病気が隠れていることがあります。靴で様子を見る前に、まずかかりつけ医に相談してください。
つまずきは「毎歩」ではなく「ばらつき」で起きる
ここが大切なところです。つま先の高さは高齢者で常に低いわけではなく、体幹の揺れや膝・足関節の角度のばらつきが、つま先の高さのばらつきを生みます。そしてたまたま低くなった一歩で転倒に結びついている可能性が指摘されています(J-STAGE「歩行時のToe clearanceと足趾把持力について」より)。
出典:歩行時のToe clearanceと足趾把持力について(J-STAGE)
「いつもは大丈夫なのに、不意の段差でつまずく」というご家族の声は、まさにこれです。100歩のうち99歩は問題なくても、残りの1歩が転倒につながる。だからこそ、その1歩に備えて、つま先が引っかかりにくい足元を用意しておく意味があります。
とくに危ないのは、注意がそれた瞬間です。人と話しながら歩く、荷物を持って歩く、急いでいる。こうした場面では、つま先を上げることへの注意が向きにくく、高さのばらつきが出やすくなります。
靴底のすり減りも足元を不安定にする
見落とされがちなのが靴底です。何年も同じ靴を履いていると、ソールが左右で違うすり減り方をしていることがあります。左右差のある靴底は、立っているときの足の傾きを生み、それだけで不安定さにつながります。
高齢の方は同じ靴を長く履き続ける傾向があります。「まだ履けるから」と、10年近く同じ一足という方も珍しくありません。しかし靴底のゴムは、履いていなくても時間とともに硬くなり、滑りやすくなります。
👨⚕️ もくもくポイント
訪問先で私が必ずやるのは、玄関の靴をひっくり返して底を見ることです。片方だけ外側が削れている、かかとの角が丸くなっている。この確認は5秒で終わります。ご本人は毎日履いているので気づきません。たまに来るご家族だからこそ、見つけられる変化です。
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転倒を防ぐ靴選び6つのポイント

歩くための靴を選ぶときは、ヒール・ソール・アッパー(甲の部分)の構造を確認する必要があるとされています(理学療法の臨床と研究「高齢者のための靴の選び方」より)。順に見ていきます。
✅ 靴選び 6つのチェックポイント
- ①つま先が反り上がっている
- ②軽すぎない、適度な重さ
- ③滑りにくいソール
- ④足裏を安定して支えられる
- ⑤脱げない・調整できる固定
- ⑥かかとをしっかり支えられる
①つま先が反り上がっている
靴のつま先が上を向いている形状を「トゥスプリング」といいます。すり足気味の方でも、つま先の先端が地面に当たりにくくなります。
確かめ方は簡単です。靴を平らな床に置いて、横から見てください。つま先の先端が床から浮いていれば合格です。反対に、つま先が床にべったりついている靴は、すり足の方には向きません。
6つのポイントのなかでも、つまずき対策として私が最優先で見ているのがここです。もし1つだけ見るなら、まずつま先を見てください。
👨⚕️ もくもくポイント
ネット通販で選ぶときは、真横から撮った写真を探してください。正面や斜め上からの写真では、つま先が反っているかどうかが判断できません。横向きの画像が載っていない商品は、この点では選びにくいと考えて構いません。
②軽すぎない、適度な重さ
「高齢者には軽い靴」と思われがちですが、現場では逆のケースもあります。軽すぎる靴は足を振り出す感覚がつかみにくく、かえって足元が定まらない方がいるのです。
足に何かを履いているという感覚は、体が自分の足の位置を把握する手がかりになります。極端に軽い靴は、その手がかりが弱くなることがあります。
もちろん重ければいいわけでもありません。「軽さだけを基準にしない」という視点を持っていただければ十分です。実際に履いて歩いてみて、ご本人が歩きやすいと感じるかどうかが最終的な判断材料になります。
③滑りにくいソール
雨の日の路面だけでなく、意外に多いのが屋内です。フローリング、洗面所の床、スーパーやクリニックの入口。濡れた床は、屋外の段差より危険なことがあります。
見るべきはソールの溝です。しっかりと深さがあるか、パターンが消えていないか。また素材が硬すぎないかも確認してください。硬いゴムは滑りやすく、適度に柔らかいものが接地面を保ちやすくなります。
④足裏を安定して支えられる
足裏には3つのアーチがあり、体を支える土台になっています。ここが崩れると、歩くたびに横ブレが出て、体は無意識にバランスを取ろうとします。その分だけ余計なエネルギーを使い、疲れやすくもなります。
中敷き(インソール)がへたっていないか、土踏まずがきちんと支えられているか。靴を脱いだあとに中敷きを取り出して、片側だけ極端にへこんでいないかを見ると状態がわかります。
⑤脱げない・調整できる固定
高齢の方は着脱のしやすさを優先して、大きめの靴を選ぶ傾向があると指摘されています(理学療法の臨床と研究「高齢者のための靴の選び方」より)。しかしサイズが合わない靴では、転倒リスクの高い方ほど重心の揺れが大きくなるという研究報告があります(日本老年療法学会誌の研究より)。
出典:日本老年療法学会誌「靴のサイズ適合性が女性高齢者の静的バランス能力に及ぼす影響」
つまり「転倒が心配な人ほど、靴のフィットが効いてくる」ということです。ここは覚えておいてください。
とはいえ、きつすぎる靴も現実的ではありません。高齢の方の足は、朝と夕方、その日の体調によってむくみ具合が変わります。だからこそ、マジックテープ(面ファスナー)のように締め具合を毎回変えられるタイプが実用的です。ひもタイプは調整幅は広いのですが、結び直せないと意味がありません。
👨⚕️ もくもくポイント
試着のときは、必ず立ち上がって数歩あるいてもらってください。座ったままでは足に体重がかかっておらず、実際より広く感じます。私が同行して「座ったときはちょうどよかったのに、立つときつい」となった方は何人もいます。
⑥かかとをしっかり支えられる
意外と見落とされるのが、かかとの部分です。靴のかかとを後ろから包む芯(ヒールカウンター)がやわらかいと、足を着くたびにかかとが内側や外側に倒れ、横ブレの原因になります。土台であるかかとがぐらつくと、その上に乗る体全体が不安定になります。
確かめ方は、かかとの後ろ側を指で軽くつまんで押してみることです。簡単にぐにゃっとつぶれる靴は、支える力が弱いと考えてください。しっかりと硬さがあり、形が崩れないものを選びます。
もうひとつ、かかとを踏んで履く癖のある方は要注意です。踏み続けるとカウンターがつぶれ、せっかくの支えが失われます。面倒でも、履くときにかかとをきちんと入れる一手間が、足元の安定につながります。
靴を買い替えるタイミング
新しい靴を選ぶ前に、いま履いている靴を確認してみてください。次のどれかに当てはまるなら、買い替えを検討する時期です。
✅ こんな靴は買い替えどき
- 靴底の溝が消えている、またはツルツルしている
- 左右で靴底のすり減り方が明らかに違う
- かかとの内側がつぶれている、踏んで履いている
- 中敷きが片側だけへこんでいる
- 履いたときに足が前に滑る、かかとが浮く
見た目がきれいでも、底は消耗しています。目安として、毎日履く靴なら1〜2年で一度は見直してください。
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訪問現場で見てきた「靴と転倒」のリアル

📝 訪問現場より
80代女性、要支援。身の回りのことはご自分でできる方でした。ある日、外出先で転倒されたと報告がありました。幸いお怪我はなかったのですが、次のリハビリで屋外歩行をしたとき、私は靴に目が留まりました。
靴底が、左右でまったく違うすり減り方をしていたのです。片方だけ外側が大きく削れていました。この状態では、足を着くたびに靴がわずかに傾きます。歩き方の問題以前に、足元の土台が崩れていました。
ご本人にお伝えすると、「言われてみれば、ずいぶん長く履いてるわね」と驚かれていました。毎日履いているものほど、変化に気づきにくいのだと思います。
そこでお伝えしたのが、つま先が上がっている靴に替えるという選択肢です。ご本人は「歩きやすくていい」とおっしゃっていました。その後、この方から転倒の報告は届いていません。
もちろん、靴だけが理由とは言えません。運動を続けておられたことも大きいはずです。それでも、足元を整えることが安心につながった一例だと思っています。
つま先が引っかかる方は、本当に多いのです。とくに不意の段差では顕著です。だからこそ私は、訪問先で必ず靴を見るようにしています。
つまずき対策から選ばれている靴「CRAAS」
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ここまでのポイントを踏まえて、選択肢のひとつとして紹介したいのがCRAASという介護シューズです。
✅ CRAASの特徴(6つのポイントとの対応)
- つま先が上がった構造(トゥスプリング)で、すり足気味の方でも先端が地面に当たりにくい(ポイント①)
- 滑りにくいオリジナルソールで、屋内外どちらでも使える(ポイント③)
- クッション性の高い3Dインソールが足裏のアーチを支え、立ったときの安定感を助ける(ポイント④)
- 面ファスナー(マジックテープ)で締め具合を調整でき、脱げにくくむくみにも対応しやすい(ポイント⑤)
- 重さも、極端に軽すぎないか実際に手に取って確かめて(ポイント②)
こうしたポイントをひととおり満たしている靴は、実はそれほど多くありません。とくにトゥスプリングを意識して設計されているものは限られます。
なお、かかとの支え(⑥)については、製品によって設計が異なります。気になる場合は、実際に手でかかとの後ろを押して硬さを確かめ、できれば立って歩いてから選んでください。
ただし、これを履けば転ばなくなるという商品ではありません。あくまで「つまずきにくい条件を満たした靴のひとつ」として見ていただくのが正しい使い方です。可能であれば、実際に立って歩いて確かめてから決めてください。サイズ選びに迷う場合は、夕方のむくんだ状態で合わせるのが失敗しにくい方法です。
靴だけに頼らないために、家庭でできること
家の中の環境を整える
転倒のリスクには、本人の側の要因(バランス障害、筋力低下、視力の低下、薬の影響など)と、環境の側の要因があります(日本転倒予防学会誌「高齢者の転倒予防の現状と課題」より)。靴は環境側への対策のひとつにすぎません。
✅ 家の中で今日できる環境整備
- 玄関の上がり框に手すりをつける
- めくれた敷物、コード類を片づける
- 夜間の廊下やトイレまでの動線に足元灯を置く
- 新聞や雑誌を床に積まない
手すりの設置は、介護保険の住宅改修や福祉用具貸与の対象になる場合があります。担当のケアマネジャーに相談してみてください。
この4つだけでも、つまずく場面はぐっと減らせます。とくに夜間のトイレは転倒が起きやすい場面なので、優先して整えたいところです。
家の中では何を履くか
転倒は屋外だけで起きるわけではありません。むしろ、住み慣れた家の中こそ油断が生まれやすい場所です。靴と同じくらい、家の中での足元にも目を向けてください。
⚠️ スリッパは意外と危ない
スリッパは、転倒が心配な方にはあまり勧めていません。かかとが固定されないため脱げやすく、つま先も引っかかりやすいからです。急いで振り向いたり立ち上がったりした拍子に脱げて、そのまま転ぶケースを何度も見てきました。
靴下で過ごす場合も、フローリングでは滑りやすくなります。履くなら、裏に滑り止めのついた靴下が安心です。
足元が不安な方、転倒のリスクが高い方には、かかとまで覆える室内用のルームシューズ(室内履き)を勧めています。屋外用の靴と同じで、かかとが安定し、脱げにくく、底が滑りにくいものを選ぶのがポイントです。家の中でも「きちんと足を支える」という発想が、転倒予防につながります。
つま先を上げる運動を習慣にする

転倒予防にもっとも有効な介入は運動であるとされています(同誌より)。難しいことは必要ありません。
✅ つま先を上げる簡単な運動
- 椅子に座って、かかとをつけたままつま先を上下に動かす(左右20回)
- 壁や椅子の背に手をついて、かかと上げ・つま先上げを交互に10回
- 座ったまま、足の指でタオルをたぐり寄せる
1つ目と2つ目は、すね側の筋肉を働かせてつま先を上げやすくする運動です。3つ目は足の指の力を鍛えるもので、立っているときの安定にもつながります。
大切なのは強さより頻度です。テレビを見ながら、歯磨きをしながらで構いません。毎日続けることが何より効果を生みます。
👨⚕️ もくもくポイント
続かない方に共通しているのは、最初に張り切りすぎることです。20回できなくても構いません。「テレビのCMのあいだだけ」と決めてしまうほうが、結果的に長く続きます。運動は量より、やめないことが勝ちです。
まとめ
つまずきや転倒は、加齢とともに誰にでも起こりうるものです。ただ、何もできないわけではありません。
📝 まとめ
- ✅ つまずきは「つま先の高さのばらつき」で起きる
- ✅ 靴選びは、つま先の反り・重さ・ソール・足裏の支え・固定・かかとの安定の6点で見る
- ✅ 迷ったらまず、つま先が反り上がっているかを確認する
- ✅ サイズの合わない靴は、転倒が心配な方ほど影響が大きい
- ✅ 靴底のすり減りは1〜2年に一度は見直す
- ✅ 靴はあくまで対策のひとつ。環境整備と運動を合わせる
親御さんの玄関を、今日いちど見てみてください。靴をひっくり返して、すり減り方に左右差はありませんか。それが最初の一歩になります。
そして「最近つまずくようになった」という変化は、ケアマネジャーや担当のリハビリ職に伝える価値のある情報です。ご家族が気づいた小さな変化が、大きな転倒を防ぐきっかけになります。
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・高齢者のための靴の選び方(理学療法の臨床と研究 第25巻, 2016)
・靴のサイズ適合性が女性高齢者の静的バランス能力に及ぼす影響(日本老年療法学会誌, 2025)
・歩行時のToe clearanceと足趾把持力について(J-STAGE)
・高齢者の転倒予防の現状と課題(日本転倒予防学会誌 1巻3号, 2015)
・令和4年 国民生活基礎調査(厚生労働省)



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