膝や腰が痛くて靴が履けない|かがまずに履ける靴の選び方

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📋 この記事でわかること

  • ✔ 膝や腰が痛いと、なぜ靴を履く動作が難しくなるのか
  • ✔ 「家では履けるのに外出先で困る」という落とし穴
  • ✔ サンダルやかかと踏みが転倒リスクを上げる理由
  • ✔ かがまずに靴を履くための3つの方法
  • ✔ 屈めない人が靴を選ぶときのチェックポイント
もくもく

・理学療法士歴15年|訪問リハビリ12年|累計12,000件以上の訪問
・在宅生活の専門家:小さなお子さんから難病、高齢の方まで幅広くサポート
・現場目線の発信:現場で培った「長く・安全に自宅で過ごすための工夫」を公開中

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利用者さん
利用者さん

靴を履くのが本当に億劫でね。玄関でひと苦労なの。

もくもく
もくもく

腰を曲げるのがつらいんですね。それ、外出先だともっと大変じゃないですか?

利用者さん
利用者さん

そうなの。だから最近は出かけるのをやめちゃって。

膝や腰の痛みで靴が履けないという相談は、訪問リハビリの現場で本当によく受けます。12年間・12,000件を超える訪問のなかで感じるのは、この問題が「痛み」だけで終わらないということです。靴が履けないと外出が減り、外出が減ると身体機能が落ち、さらに動けなくなる。玄関のたった1分の動作が、生活そのものを縮めてしまうのです。

この記事では、なぜ屈めなくなるのかという理由から、今日から試せる対処法までをまとめました。


なぜ膝・腰が痛いと靴が履けなくなるのか

膝や腰が痛くて玄関で靴を履くのに苦労する高齢女性

靴を履く動作は「膝を深く曲げる」と「腰を丸める」の同時進行

普段何気なくやっている「靴を履く」という動作を分解すると、意外に複雑です。片足を上げるか、しゃがみ込むか。どちらにしても膝を深く曲げ、腰を大きく前に丸め、そのうえで片手または両手を足元まで届かせる必要があります。さらにその間、片足立ちや前かがみの姿勢でバランスを保たなければなりません。

つまり「関節の柔らかさ」「筋力」「バランス能力」の3つが同時に求められる動作なのです。どれか1つが欠けても、途端に難しくなります。

✅ 靴を履くのに必要な3つの力

  • 柔軟性…足先まで手を届かせる(股関節・腰を曲げる)
  • 筋力…前かがみや片足立ちの姿勢を支える
  • バランス能力…不安定な姿勢でも倒れずに保つ

実はこれは靴に限った話ではありません。靴下で困っている方も、訪問の現場ではかなり多くいます。私は評価のとき、座った状態で床まで手が届くか、左右とも足を組めるかを必ず確認します。ここが引っかかる方は、靴も靴下も同じ理由で苦労されています。

変形性膝関節症・腰椎症で起きていること

変形性膝関節症では、膝を深く曲げたときに強い痛みが出ます。腰椎症や腰部脊柱管狭窄症では、前かがみそのものが痛みや痺れを誘発することがあります。

この2つが重なると、靴を履く姿勢がまるごと取れなくなります。実際、厚生労働省の調査では自覚症状として最も多いのは男女とも腰痛で、80歳以上ではおよそ2人に1人が何らかの症状を訴えています(令和4年国民生活基礎調査より)。決して特別なことではありません。

出典:厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」

「体が硬い」が追い打ちをかける

もう一つ見落とされがちなのが、加齢による柔軟性の低下です。痛みがなくても、股関節やハムストリングスが硬いと足先に手が届きません。「痛い」と「硬い」が重なると、痛みが引いても動作はできないままになります。

ここを理解しておくと、「痛み止めを飲んでも靴が履けない」理由が見えてきます。

📝 訪問現場より

80代女性、変形性膝関節症と腰椎症をお持ちの方。もともと体が硬く、屈むと腰が痛むため、靴を履くのが大変だと相談を受けました。

ご自宅では靴べらを使う方法を提案し、なんとかできるようになったのですが、後日「外出先だと困る」と打ち明けられました。

👨‍⚕️ もくもくポイント

「痛いから履けない」と思われがちですが、実際には「硬いから届かない」が重なっているケースがほとんどです。痛み止めを飲んでも靴が履けるようにならない方は、ここが原因かもしれません。痛みと硬さは別の問題として、分けて考えてみてください。


「家では履けるのに外出先で困る」という落とし穴

靴べらは自宅にしか置いていない

自宅の玄関には手すりがあり、腰かけられる台があり、ロング靴べらも置いてある。だから家では履ける。ところが外出先には、そのどれもありません。

先ほどの80代女性は、お友達と外食に行くのが何よりの楽しみでした。しかし靴を脱ぐ席では時間がかかってしまうため、テーブル席のあるお店しか選べなくなっていたのです。

外食だけではありません。旅館は基本が畳で、玄関以外でも靴を脱ぎ履きする場面が多くあります。旅行やお出かけの機会そのものが、靴の履きにくさで狭まってしまうのです。

「みんなに気を使わせたくない」という本音

この方が言われたのは、痛みの話ではありませんでした。「小上がりや座敷にも行けるようになりたい。みんなに気を使わせずに」という言葉です。

待たせている数十秒の気まずさ。手を貸してもらう申し訳なさ。これが外出をためらわせる最大の理由になっていることは、現場で本当に多く見かけます。ご家族が「痛いなら休んでいれば」と言ってしまうと、この本音は表に出ません。

外出が減ると身体機能も落ちていく

外出の減少は、単に楽しみが減るだけでは終わりません。地域高齢者を対象とした研究では、外出頻度が低い人はほとんどすべての身体・心理・社会的側面で健康水準が低いことが報告されています(日本公衆衛生雑誌2004年より)。

出典:新開省二ほか「地域在宅高齢者の外出頻度別にみた身体・心理・社会的特徴」(日本公衆衛生雑誌 2004)

さらに約6万人を3年間追跡した大規模研究では、外出をともなう社会参加が多い人ほどフレイル(虚弱)になりにくいことが示されました(日本公衆衛生雑誌2023年より)。

出典:「高齢者の社会参加とフレイルとの関連 JAGES2016-2019縦断研究」(日本公衆衛生雑誌 2023)

「靴が履きにくい」は、生活範囲が縮む入り口なのです。

👨‍⚕️ もくもくポイント

ご本人が「もう出かけなくていい」と言い出したときは、本当に興味を失ったわけではないことが多いです。訪問先では「気を使わせたくないから」という理由が圧倒的に多く聞かれます。理由を決めつけず、玄関で何が起きているのかを一度見てみてください。


危険な自己流|サンダル・かかと踏みは転倒リスクを上げる

かかとが固定されない履き方でつまずきやすくなる仕組みの図解

訪問現場で驚くほど多い「かかと踏み」

屈めなくなった方が自然にたどり着く解決策が、サンダルとかかと踏みです。ゴミ出しや新聞取りといった短い外出では、ほとんどの方がこのどちらかになっています。

しかしこれは、転倒リスクを大きく引き上げる選択です。東京都が60歳以上3,000人に行った調査では、履物が原因で転んだ・転びかけた経験は1,234人・3,382件にのぼり、そのうち最も多かったのがサンダル(つっかけ)で1,087件、全体の32.1%を占めていました(東京都生活文化局「シニア世代における衣服・履物の危険」より)。

出典:東京都生活文化局「シニア世代における衣服・履物の危険」

なぜ脱げる・つまずくのか

原因は足の固定にあります。かかとが固定されていないと、足を持ち上げたときに靴が一緒についてきません。無意識にすり足になり、わずかな段差でつまずきます。

同じ調査でサンダル(つっかけ)の原因内訳を見ると、つまずいた350件、滑った315件に続き、「脱げた」が300件報告されています(同調査より)。かかと踏みは、この「脱げる」条件を自分から作っている状態です。

❌ かかと踏み・サンダル

かかとが固定されず、足を上げると靴がついてこない。すり足になり、段差でつまずいたり脱げたりする。

✅ かかとが固定される靴

かかとがしっかり支えられ、足と一体で動く。すり足になりにくく、つまずき・脱げを防ぎやすい。

📝 訪問現場より

訪問時、かかとを踏んだ状態で歩いていた方に少し歩いてもらったところ、ほんの少しつまずいただけで靴が脱げてしまいました。

幸い転倒には至りませんでしたが、ご本人はかなり驚かれ、それ以降はきちんと履くようになりました。転ぶ前に気づけたのは幸運だったと思います。

👨‍⚕️ もくもくポイント

かかと踏みやサンダルは「本人が楽だから選んでいる」のではなく、「それしか選べないから」です。注意するだけでは変わりません。履きやすい靴を用意して初めて、かかと踏みは自然になくなります。


かがまずに靴を履く3つの方法

かがまずに靴を履く3つの方法(姿勢・道具・靴を替える)を示した図解

方法1:姿勢を変える(環境の工夫)

まず試したいのが、しゃがまずに済む姿勢を作ることです。玄関に高さ40cm前後の椅子や玄関台を置き、腰かけて履く。この一手間で腰の前屈は大きく減ります。

さらに履く側の足を反対側の膝に乗せる「足組み座り」ができれば、足先が手元に近づきます。ただし股関節が硬い方や人工関節の術後の方は無理をせず、主治医や担当のリハビリ職に確認してください。

方法2:道具を使う

ロング靴べら、伸縮する靴ひも(結ばずに着脱できるタイプ)などが代表的です。安価で導入しやすい反面、片手で靴べら・片手で手すりという動作が難しい方には向きません。

そして最大の弱点は、外出先に持っていけないことです。自宅専用の解決策だと割り切って使うのが現実的です。

方法3:靴そのものを変える

最も確実なのが、そもそも屈まなくても履ける靴に変えてしまう方法です。手を使わずに足を入れるだけで履けるタイプの靴なら、道具も環境も要りません。玄関でも、お店の座敷でも、同じように履けます。

「動作をがんばる」のではなく「動作の工程を減らす」。屈めない方には、この発想の転換が一番効きます。

✅ 場面別の使い分け

  • 自宅だけなら…玄関に椅子を置く・靴べらを使う(方法1・2)
  • 外出も多いなら…屈まず履ける靴に変える(方法3)が確実

訪問先で実際に試してもらった結果

スニーカーを楽に履いて笑顔で外出する高齢女性

利用者さんの状況

前述の80代女性です。変形性膝関節症と腰椎症があり、体も硬く、外出先での脱ぎ履きに苦労されていました。お友達との外食は続けたいけれど、座敷は諦めている。ゴミ出しはスリッパで済ませている。そんな状態でした。

使い始めるまでの過程

靴べらでは外出先の問題が解決しないとわかった時点で、靴そのものを変える提案をしました。ご本人が気にしていたのは機能だけではありません。「いかにも介護用」という見た目には強い抵抗がありました。

そこで、手を使わずに履けてスニーカーのようなデザインの靴として、LAQUN(ラクーン)をご紹介しました。

LAQUNは、かかとに「スパイダーヒール」という弾力のある特殊構造を採用しています。足を入れるときはかかとがしなって開き、履いた後は元に戻ってしっかり支える仕組みです。かかとを踏みっぱなしにするのとは違い、履いた後はきちんと固定されるのが大きな違いです。

屈んで手で引き上げる工程がいらないので、玄関でも座敷でも同じように履けます。幅も3E相当と広めで、幅広・甲高の方でも窮屈になりにくい点は、高齢の方にとって安心材料でした。

結果

結論から言うと、外出先での脱ぎ履きは明らかに楽になりました。足を入れるだけで履けるため、座敷でも小上がりでも、周りを待たせることがなくなったそうです。

そして予想外だったのが、日常の変化でした。それまでスリッパで行っていたゴミ出しに、靴を履いて出るようになったのです。転倒予防の観点では、これは非常に大きな変化です。

ご本人・ご家族の反応

「見た目が若々しくていい」というのが第一声でした。機能より先にデザインの感想が出てくるところに、この方の本音が表れていたと思います。

先ほどの東京都の調査でも、履物に関する要望の自由記述1,607件のうち第1位は「着脱しやすい」393件で、2位が「安全・安定しているもの」319件でした(前掲調査より)。履きやすさと安全性の両立は、多くの高齢者が求めているものなのです。


屈めない人の靴選び 5つのチェックポイント

  1. 手を使わずに履けるか:かがむ工程そのものをなくせるかが最重要です
  2. かかとがしっかり固定されるか:脱げない構造かどうかを必ず確認します
  3. 見た目に抵抗がないか:本人が履きたいと思えなければ続きません
  4. 脱ぐときも楽か:履けても脱げないと外出先で困ります
  5. 靴底が滑りにくいか:屋外で使うなら必須の条件です

特に3番目を軽視しないでください。機能的に優れていても、「年寄りくさい」と感じた靴は下駄箱で眠ります。

👨‍⚕️ もくもくポイント

訪問先で下駄箱にしまわれたままの介護靴を、何度も見てきました。機能で選ばれた靴ほど履かれていません。ご家族が良いと思ったものより、ご本人が「これなら履きたい」と言ったものを選んでください。


靴下が履けないときの工夫

靴と同じくらい相談が多いのが、靴下です。かがめない方にとっては、靴下のほうが靴よりやっかいなこともあります。薄くて伸びにくい生地を、足先まで手を届かせて引き上げなければならないからです。

まず試したいのは、履き口が広く、よく伸びる靴下に変えることです。締めつけの強い靴下や、すべりにくい素材は、かがまず履くのが難しくなります。それだけでもぐっと楽になる方は多くいます。

それでも難しい場合に便利なのが、「ソックスエイド」という道具です。筒状の器具に靴下をかぶせて床に置き、足を滑り込ませて紐を引くと、かがまずに靴下が履けます。手が足元まで届かない方でも、座ったまま使えるのが利点です。


市販の靴で迷ったら、専門家に相談を

ここまで紹介した選び方は、あくまで一般的な目安です。次のような場合は、市販の靴選びだけで解決しようとせず、専門家の力を借りてください。

⚠️ こんなときは市販靴で無理をしない

  • 外反母趾で、指の付け根が大きく出っぱっている
  • むくみが強く、日によって足の大きさが変わる
  • 片麻痺があり、左右で足のサイズや形が違う

こうしたケースでは、足の形に合わせた調整や専門的な採寸が必要になることがあります。担当のケアマネジャーやリハビリ職、かかりつけ医に相談すると、シューフィッターや義肢装具士といった適切な専門家につないでもらえます。

特に、むくみで靴が入りにくい場合は選び方のコツが変わります。くわしくは関連記事「足のむくみで靴が入らないときの選び方」をご覧ください。


よくある質問

Q. 介護シューズと普通のスニーカー、どちらがいいですか?

見た目に抵抗がなく、履きやすさと安全性を満たすなら、どちらでも構いません。大切なのは「介護用かどうか」ではなく、手を使わず履けて、かかとが固定され、本人が履きたいと思えることです。最近は介護シューズに見えないデザインの製品も増えています。

Q. 片手しか使えなくても履けますか?

足を入れるだけで履けるタイプなら、片手が不自由な方でも一人で履けることが多いです。ただし片麻痺で足の形やサイズが左右で違う場合は、無理に市販品で合わせず、リハビリ職や義肢装具士に相談すると安心です。

Q. サイズはいつも通りで大丈夫ですか?

基本は普段のサイズで問題ありませんが、夕方はむくみで足が大きくなりやすいので、夕方に合わせて選ぶと失敗が減ります。むくみが強い方は、幅(3Eなど)にも注目してください。


まとめ

膝や腰の痛みで靴が履けないという悩みは、痛みの問題であると同時に、外出そのものを減らしてしまう生活の問題です。

📝 まとめ

  • ✅ 靴を履く動作には柔軟性・筋力・バランスが同時に必要
  • ✅ 靴べらなどの道具は自宅では有効だが外出先では使えない
  • ✅ サンダルやかかと踏みは転倒リスクを大きく上げる
  • ✅ 最も確実なのは「屈まなくても履ける靴」に変えること
  • ✅ 靴選びでは機能だけでなく見た目も重視する
  • ✅ 靴下が難しい場合は、伸びる素材やソックスエイドを試す
  • ✅ 足の変形やむくみが強い場合は、市販品で無理せず専門家に相談する

玄関での1分が楽になるだけで、行ける場所は驚くほど増えます。「もう出かけなくていい」とご本人が言い出す前に、靴を見直してみてください。

【ご注意】本記事は、理学療法士の資格を持つ筆者が在宅訪問の経験をもとに作成した情報提供を目的としたものです。個人の状態や環境によって適切な対応は異なります。医療・介護に関する判断は、担当の医師・ケアマネジャー・専門職にご相談ください。

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