片麻痺の靴の選び方|装具のタイプ別にわかる、失敗しない選び分け

玄関でスニーカーを履く高齢女性|片麻痺の靴の選び方 介護グッズ・食事

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📋 この記事でわかること

  • ✔ 自分(ご家族)はどのタイプに当てはまり、どんな靴の選び方が向いているのか
  • ✔ 硬い装具を使っている方が、無理なく靴を履くための考え方
  • ✔ 装具がない・軽い方が選べる、履きやすく転びにくい靴のポイント
  • ✔ かかとが入らないときに、現場で使われている具体的な工夫
もくもく

・理学療法士歴15年|訪問リハビリ12年|累計12,000件以上の訪問
・在宅生活の専門家:小さなお子さんから難病、高齢の方まで幅広くサポート
・現場目線の発信:現場で培った「長く・安全に自宅で過ごすための工夫」を公開中

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母が退院してから、前のスニーカーがどうしても履けなくて…。装具もあるし、もう普通の靴は諦めるしかないんでしょうか?

もくもく
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その気持ち、とてもよくわかります。でも実は、片麻痺の靴選びは『靴だけ』の問題じゃないんです。装具のタイプから考えると、道が開けることが結構あるんですよ

片麻痺の靴選びでつまずく原因の多くは、靴そのものより「今つけている装具との相性」にあります。だからこそ、まずはご本人がどのタイプの装具を使っているかを整理することが、遠回りのようで一番の近道です。順番に見ていきましょう。

まず見るのは「靴」ではなく「装具のタイプ」

硬い装具・軽い装具・装具なしの3タイプ別に片麻痺の靴選びを比較した図解

片麻痺の靴選びで多くの方がつまずくのは、いきなり「どの靴がいいか」から探し始めてしまうからです。でも本当に最初に確認すべきなのは、今どんな装具を使っているか。ここが決まると、選ぶべき靴の方向性は自然と絞られます。

装具は大きく3つのタイプに分けて考えると整理しやすくなります。

📊 装具のタイプ別・靴選びの方向性

タイプA:硬い装具

プラスチック製の短下肢装具を毎日使用。装具ごと入る大きさが必要で、左右サイズ違いの靴を用意。装具業者や介護靴メーカーに相談を。

タイプB:軽い装具

軽いサポーターや薄いカーボン装具。普通サイズで履けることが多い。麻痺側が入れやすいものを選ぶ。

タイプC:装具なし

麻痺が軽い・回復してきた方。普通サイズでOK。履きやすさや転びにくさで機能的な靴を選べる。

ご自身やご家族がどのタイプかで、この先の選び方はまったく変わってきます。逆に言えば、タイプが分かればもう半分は解決したようなものです。市販の靴屋さんやネットの情報だけを見て迷い続けるより、まず「うちはどのタイプか」を確かめることが、いちばんの近道になります。それぞれのタイプを詳しく見ていきましょう。

もし「うちの装具がどのタイプか分からない」というときは、装具を作った病院やリハビリの担当者に「これは硬い装具ですか?」と聞けば、その場ではっきりします。迷ったまま靴を選ぶ必要はありません。

タイプA:硬い装具(短下肢装具)を使っている方

プラスチック製の短下肢装具を毎日使っている方は、靴の中に「足+装具」がまるごと入るスペースが必要になります。そのため、装具の分だけ左右で足元のかさが大きく変わり、多くの場合は左右でサイズ違いの靴が必要になります。

これは決してわがままな要求ではなく、物理的に仕方のないことです。無理に同じサイズで押し込もうとすると、装具が当たって痛みが出たり、かえって不安定になったりします。「なんとか両足同じサイズで」と工夫される方も多いのですが、片方がきつく片方がゆるいという状態は、歩くうえでいちばん避けたいところです。実際、サイズの合わない靴は転倒リスクの高い方ほどバランスを崩しやすいことが報告されています(「靴のサイズ適合性が女性高齢者の静的バランス能力に及ぼす影響」老年理学療法学より)。せっかく装具で足元を安定させても、靴が合っていなければその効果が半減してしまいます。

出典:靴のサイズ適合性が女性高齢者の静的バランス能力に及ぼす影響(老年理学療法学)

👨‍⚕️ もくもくポイント

硬い装具を使っている方が左右サイズ違いの靴を用意するのは、決して特別なことではありません。「揃えないと」と無理をするより、堂々と専門ルートに頼るのが、結局いちばん足を守る近道です。

左右サイズ違いは「片方ずつ買える店」に相談を

左右でサイズ違いの靴を用意する場合、義肢装具士や取扱業者、あるいは「あゆみ」などサイズ違い購入に対応した介護靴メーカーに相談するのが確実です。片方ずつサイズを変えて注文できたり、装具を持ち込んで合わせられたりと、市販のスニーカーにはない柔軟さがあります。値段だけを見ると割高に感じるかもしれませんが、痛みや転倒を防いで毎日安心して履けることを考えれば、決して高い買い物ではありません。装具を作った病院やリハビリ施設に、対応してくれる業者を紹介してもらうのもよい方法です。

✅ 左右サイズ違いの靴を用意するときの相談先

  • 義肢装具士・装具の取扱業者
  • 「あゆみ」などサイズ違い購入に対応した介護靴メーカー
  • 装具を作った病院・リハビリ施設(対応業者を紹介してもらえる)

なお、この記事で後ほど紹介する履きやすい靴は、硬性装具には対応していません。タイプAの方は、まずは装具対応の専門ルートを頼るのが安全です。ここは正直にお伝えしておきます。

タイプB:軽い装具・サポーターを使っている方

薄いカーボン素材の装具や、柔らかいサポーターを使っている方は、装具のかさばりが少ないため、普通のサイズの靴で履けることが多くなります。

このタイプの方が靴を選ぶときのポイントは、「麻痺側の足を入れやすいか」と「脱ぎ履きしやすいか」の2つです。麻痺のある側は自分で足首の向きを細かく調整しにくいため、履き口が大きく開くものや、面ファスナー(マジックテープ)で調整できるものが向いています。

✅ 軽い装具の方が靴を選ぶ2つのポイント

  • 麻痺側の足を入れやすいか(履き口が大きく開く・面ファスナーで調整できる)
  • 脱ぎ履きしやすいか

装具を入れたまま履けるか不安な場合は、購入前に必ず装具をつけた状態で試し履きをしてください。サイズ表記だけで判断せず、実際の履き心地で選ぶことが失敗を防ぎます。特に、少し歩いてみて麻痺側のかかとが浮かないか、装具が当たって痛くないかを確認できると安心です。同じ「軽い装具」でも、素材や形は人それぞれ違います。ご本人の装具に合わせて選ぶという視点を忘れないようにしましょう。

👨‍⚕️ もくもくポイント

軽い装具の方は「普通サイズで履ける」ことが多いですが、油断は禁物です。必ず装具をつけた状態で、できれば数歩歩いて確かめてから買うようにしてください。試し履きのひと手間が、後悔を防ぎます。

タイプC:装具を使っていない方

つま先が反り上がった靴ですり足でもつまずきにくい高齢者の足元

麻痺が軽い方や、リハビリで回復してきて装具が不要になった方は、普通のサイズの靴が選べます。ここでようやく「履きやすさ」と「転びにくさ」を軸に、機能的な靴を選べる段階になります。ただし「装具が要らなくなった=もう何を履いても大丈夫」というわけではありません。麻痺の影響が完全に消えるわけではないので、靴選びには少し気を配りたいところです。

片麻痺のある方は、麻痺側の足を振り出すときに足首が下を向いたままになりやすく、つま先が引っかかってつまずきやすい傾向があります。実際、屋外を自分で歩ける片麻痺の方の転倒原因は、麻痺側の足を振り出す局面の問題が多いことが報告されています(加藤ら「慢性期片麻痺患者における屋外歩行中の転倒」より)。

出典:慢性期片麻痺患者における屋外歩行中の転倒(高知リハビリテーション学院紀要)

だからこそ、つま先が少し反り上がった靴(トゥスプリング)は、すり足でも引っかかりにくく、つまずき防止に役立ちます。靴は杖や装具よりも使用頻度が高く、歩行に直接影響する大切な道具です(「高齢者のための靴の選び方」理学療法の臨床と研究25巻より)。

出典:高齢者のための靴の選び方(理学療法の臨床と研究 第25巻)

あわせて、靴底が滑りにくいものを選ぶことも大切です。麻痺のある方は方向転換のときや、雨で濡れた床でバランスを崩しやすいため、しっかり地面をつかむ靴底が安心につながります。

幅広・つまずき防止で選ぶなら「CRAAS」

つまずきにくさや足の当たりやすさで選ぶなら、CRAAS(クラース)という選択肢があります。幅広設計で外反母趾のある方の足にも当たりにくく、つま先が反り上がったトゥスプリング構造でつまずきを防ぎます。中敷きも足裏を支える3D形状になっていて、歩行の安定に配慮されています。

幅にゆとりがある点も、片麻痺の方に合っています。麻痺側は動かす機会が少ないためにむくみが出やすい方もいて、非麻痺側より足の幅が出ることがあるためです。幅に余裕のある靴なら、むくんだ日でも締めつけを感じにくくなります。

「見た目は普通のスニーカーなのに、中身は機能的」という点が、装具の要らなくなった方にちょうど合います。介護用の靴だと分かる見た目に抵抗がある方でも、これなら普段づかいしやすく、外出の気持ちも軽くなります。回復してきたご本人にとって、「普通の靴が履けた」という実感は、想像以上に大きな励みになるものです。

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👨‍⚕️ もくもくポイント

装具が要らなくなった方こそ、靴を「治すための道具」ではなく「安心して出かけるための相棒」として選べる段階です。つまずきにくさと見た目、その両方に納得できる一足を選んであげてください。

📝 訪問現場より

以前担当した方で、上肢の麻痺は重く残っていたものの、足の麻痺はリハビリでかなり改善してきた方がいました。靴自体は履けるようになったのですが、片麻痺は同じ側の手と足に麻痺が出るため(総務省 遠隔講義資料「片麻痺について」より)、麻痺側の足に靴を履かせようとしても、麻痺側の手が思うように使えず、非麻痺側の手だけで悪戦苦闘していました。

そこで、かかとが入りやすい構造のLAQUN(ラクーン)を試してもらったところ、「これはすごく楽だ」と喜んでくださいました。麻痺の性質そのものが「片手での履きにくさ」につながっているのだと、あらためて実感したケースでした。

出典:遠隔講義資料「片麻痺について」(総務省)

片手で履きやすい「LAQUN」

片手での着脱に困っている方には、LAQUN(ラクーン)という選択肢もあります。かかと部分のスパイダーヒール構造で足がすっと入りやすく、片手でも履きやすいのが特長です。全サイズ3E相当の幅広で、重さも約240gと軽量なので、足を持ち上げる負担が少なくて済みます。

上の方のように「足は動くのに手が使えず履けない」というケースでは、こうした片手対応の靴が現実的な助けになります。

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つまずきや足の幅が気になる方はCRAAS、片手での脱ぎ履きに困っている方はLAQUN、というふうに選び分けると分かりやすいでしょう。どちらも装具が要らなくなった方に向けた選択肢です。

諦める前に:「装具のタイプ自体」を相談する選択肢

分厚い装具から薄いカーボン装具に替えてスニーカーを履けるようになった高齢者

ここまで装具のタイプ別に見てきましたが、実は「今の装具が本当に自分に合っているか」を見直すことで、靴の自由度が大きく上がる場合があります。

📝 訪問現場より

以前、50代で片麻痺のある方を担当したことがあります。「普通のスニーカーが履きたい」という強い希望がありましたが、入院中に作った硬いプラスチックの短下肢装具では、スニーカーをサイズ違いで2セット買わないと履けず、物理的にも難しく、一歩を踏み出せずにいました。そこで、薄いカーボン装具で対応できないか検討したところ適応でき、結果的に念願のスニーカーが履けるようになりました。

このように「硬性装具から薄いカーボン装具へ」と切り替えられれば、靴の選択肢は一気に広がります。その方は「もう一生あの分厚い靴かと思っていた」と話され、外出の回数も自然と増えていきました。装具は一度作ったらずっと同じもの、と思い込んでいる方は少なくありませんが、体の状態が変われば見直す余地があるということです。

⚠️ 装具の変更は必ず専門職に相談を

これは誰にでも当てはまる話ではありません。装具の変更は麻痺の程度や足首の安定性しだいで、変えることでかえって危険になる場合もあります。必ず主治医・担当の理学療法士・義肢装具士に相談したうえで判断してください。自己判断で装具を外したり替えたりするのは避けましょう。

👨‍⚕️ もくもくポイント

装具は「一度作ったら一生同じ」ではありません。体の状態が変われば見直せる可能性があります。ただし判断は必ず専門職と一緒に。焦って自己判断で外すのだけは、絶対に避けてくださいね。

かかとが入らないときの、現場の裏技

かかと用の小さな靴べらで靴のかかとに足を滑り込ませる様子

装具を使っている方、特にタイプAの方から一番よく聞くのが「かかとが入らない」という悩みです。プラスチックや金属支柱の装具をつけていると、どうしてもかかとが引っかかってしまい、履くのにひと苦労します。高齢の方が着脱の難しさからオーバーサイズの靴を選びがちなのも、この履きにくさが背景にあります(「高齢者のための靴の選び方」理学療法の臨床と研究25巻より)。

かかと用の小さな靴べらを「靴につけておく」

そんなときに現場で役立っているのが、かかと用の小さな靴べら(シューホーン)です。靴の踵の内側に取り付けておけるタイプで、これがあるとかかとがスッと滑り込みます。

📝 訪問現場より

実際に担当していた方は、この靴べらを靴につけたままにしておき、履いたら外して胸ポケットに入れて移動していました。「外出先でも脱ぎ履きが苦じゃなくなった」と話してくれたのが印象的です。

トイレや人の家に上がるときなど、外出先で靴を脱ぐ場面は意外と多いものです。そのたびに家族の手を借りずに自分で履けることは、ご本人の自信にもつながります。小さな道具ひとつで、外出のハードルがぐっと下がることもあるのです。

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装具を使っていない方で、それでも片手での着脱が大変な場合は、先ほど紹介した片手で履ける靴という選択肢も検討してみてください。

まとめ:靴選びは「装具から逆算」して考える

片麻痺の方の靴選びは、いきなり靴を探すのではなく、まず装具のタイプを確認することが出発点になります。

📝 タイプ別・靴選びの早見

  • ✅ 硬い装具(タイプA)…左右サイズ違いで、装具業者や介護靴メーカーに相談
  • ✅ 軽い装具・サポーター(タイプB)…普通サイズで、麻痺側を入れやすいものを
  • ✅ 装具なし(タイプC)…履きやすさ・転びにくさで機能的な靴を選べる

そして、かかとが入らないときの靴べらや、片手で履ける靴といった工夫も、日々の負担を減らす助けになります。「もう普通の靴は無理かも」と諦める前に、装具のタイプから見直してみてください。それだけで、思っていたより多くの道が残っていることに気づけるはずです。自分の足で好きな靴を履いて出かけられることは、リハビリを続けるうえでの大きな目標にもなります。焦らず、今の状態に合った一足を一緒に探していきましょう。

【ご注意】本記事は、理学療法士の資格を持つ筆者が在宅訪問の経験をもとに作成した情報提供を目的としたものです。個人の状態や環境によって適切な対応は異なります。医療・介護に関する判断は、担当の医師・ケアマネージャー・専門職にご相談ください。

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