📋 この記事でわかること
- ✔ デイサービスを嫌がる理由とその背景
- ✔ 家族がやってしまいがちなNG対応
- ✔ 本人が動いてくれる伝え方のコツ
- ✔ 本人に合うデイサービスの選び方

デイサービスなんてまだ早い。あんな年寄りばっかりのところ行きたくない

でも私一人では限界で…どうしたらいいんでしょう

実は嫌がる理由にはパターンがあって、伝え方と施設選びで変わることが多いんですよ
訪問リハビリに従事して12年、12,000件以上の在宅訪問を経験してきた理学療法士として、デイサービスを嫌がる親への対応を現場目線で解説します。「まだ早い」「行きたくない」と言っていた方が、小さなきっかけで通い始めたケースを、私自身何度も目にしてきました。
デイサービスを嫌がる理由は大きく5つある

親がデイサービスを嫌がるとき、「わがままを言っている」と思いがちですが、実はそれぞれに理由があります。理由を知らずに説得しようとしても、なかなかうまくいきません。まずは「なぜ嫌がっているのか」を把握することが大切です。
イメージが悪い・「老人の集まり」と思っている
現場で最もよく聞く理由がこれです。「あんな年寄りばっかりのところには行きたくない」という言葉、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
デイサービスに行ったことがない方にとって、そのイメージは「暗い」「退屈そう」「自分には関係ない場所」というものが多いです。実際に見学や体験をしたことで印象が変わる方は非常に多く、まずは正しいイメージを持ってもらうことが第一歩です。
「まだ自分はそんな段階じゃない」というプライド
介護が必要な状態になっても「自分はまだ大丈夫」と思っている方は少なくありません。特に、これまで人の世話になったことがなく、自立して生きてきた方ほどこの傾向が強いです。
これは決して悪いことではなく、自尊心の表れでもあります。否定せず、その気持ちを受け止めた上で話を進めることが重要です。
人間関係・集団生活への不安
「知らない人たちの中に入るのが怖い」「うまくやっていけるか不安」という気持ちも多くあります。もともと人付き合いが苦手な方や、長年自宅中心の生活をしてきた方には特に大きなハードルです。
体がしんどい・外出が面倒
年齢を重ねると、外出すること自体が体力的な負担になります。「準備が面倒」「移動が疲れる」という理由でデイサービスを敬遠する方もいます。この場合は送迎サービスの説明や、短時間コースの提案が有効です。
そもそもデイサービスが何かわからない
「デイサービスって何をするところ?」という方も実際に多くいます。デイサービスとデイケアの違いすら知らない方も珍しくありません。具体的にどんなサービスを受けられるのかを丁寧に説明するだけで、拒否感が薄れることがあります。
👨⚕️ もくもくポイント
デイサービスを嫌がる理由の多くは「イメージの思い込み」からきています。実際に見学や体験利用をしたことで印象がガラッと変わる方は、現場でも非常に多いです。「行きたくない」の裏にある理由をまず知ることが、対応の第一歩です。
男性が特に嫌がりやすい理由

デイサービスを嫌がる傾向は、男性に特に強く見られます。訪問の現場でも、女性に比べて男性はそもそも利用を始めるハードルが高く、継続率も低い印象があります。
女性利用者が多く・レクリエーションが合わない
その理由のひとつが、デイサービスの利用者構成です。実際に女性の利用者が多い施設がほとんどで、「女性ばかりで居心地が悪い」「自分の話し相手がいない」と感じる男性は少なくありません。また、塗り絵や折り紙といったレクリエーションが中心の施設では、男性が楽しめる活動が少なく、「あんなことをやるために行きたくない」と拒否につながるケースもあります。
趣味が合う仲間がいると、一転して前向きになる
一方で、将棋・囲碁・オセロなど趣味が合う仲間がいると、前向きになる男性は多いです。「あの人も行っているなら」という一言が背中を押すこともあります。
施設を選ぶ段階で、男性利用者が多い曜日を確認したり、男性が楽しめるプログラムがあるかどうかを事前にリサーチしておくことが大切です。この点については後の章で詳しく解説します。
家族がやってしまいがちなNG対応

デイサービスを嫌がる親を前に、家族は焦ってしまいがちです。しかし、よかれと思ってやった対応が逆効果になることがあります。
本人の同意なく話を進める
ケアマネジャーや施設との話し合いを、本人抜きで進めてしまうケースがあります。ある日突然「来週からデイサービスに行くことになったよ」と伝えられた側の気持ちを想像してみてください。自分のことが自分の知らないところで決められてしまった、という不信感や怒りにつながります。
家族は「本人のため」という思いで動いているだけに、気づかず主導してしまいやすいのですが、本人の気持ちを置き去りにしないよう意識することが重要です。
理由をぼかして「なんとなく」お願いする
「みんな行ってるから」「体にいいから」という曖昧な説得では、本人は納得しません。特にプライドの高い方には逆効果になることもあります。
家族が本当はどう困っているのか、なぜデイサービスに行ってほしいのかを正直に伝えることが、実は一番の近道です。この点については次の章で詳しく解説します。
無理強いや感情的な説得をする
「行かないと困る」「私が大変なのにわかってくれない」と感情的になってしまうと、親も頑なになります。デイサービスへの拒否感はそのままに、家族との関係までこじれてしまうことがあります。
まずは否定せず、本人の「行きたくない」という気持ちをいったん受け止めることが大切です。
⚠️ 感情的な対応は関係もこじれさせます
デイサービスへの拒否感だけでなく、家族との信頼関係までこじれてしまうと、その後の介護全体が難しくなります。「急かす・怒る・泣き落とす」といった感情的な言葉は、いったん出てしまうと取り消せません。焦りを感じたときこそ、一歩引くことが大切です。
👨⚕️ もくもくポイント
「なんとなくお願いする」は一番やってしまいがちなNG対応です。家族が「私も正直大変で…」と本音を伝えると、親が家族を慮って動いてくれるケースが現場では多くありました。説得しようとするより、気持ちを伝える方が届きやすいです。
うまく伝えるための家族の話し方
嫌がる親への対応で大切なのは、「説得する」ではなく「気持ちを伝える」という姿勢です。
「私も大変」と正直に話す
訪問の現場で効果的だと感じるのが、家族が自分の本音を伝えることです。「お母さんのことを思って言っているんだけど、正直私も今の状態では大変で…」という言葉は、説得よりもずっと届きやすいです。
「あなたのため」という言い方では、相手はどこか押しつけられている感覚を持ちやすいです。一方で「私も限界に近い」という正直な言葉は、親が家族を慮る気持ちに届くことがあります。実際に「娘がそこまで言うなら仕方ない」と動いてくれた方を、現場で何度も見てきました。
ただし、これはすべての方に通じるわけではありません。認知症が進んでいる方や、もともと家族関係が複雑な場合は、別のアプローチが必要です。
医師やPTなど第三者を活用する
家族からの言葉は受け入れにくくても、かかりつけ医や理学療法士などの専門職からの一言で動く方は多いです。「先生に勧められたから」という理由は、本人のプライドを傷つけずに受け入れやすい形になります。
訪問リハビリの場面でも、ケアマネジャーや家族からあらかじめ「デイサービスに行ってほしい理由」を共有してもらった上で、本人と自然な会話の中で話題にすることがあります。「最近お風呂はどうですか?」「半日だけ試してみませんか、嫌ならやめればいいですから」という形で、押しつけにならない提案ができます。
✅ 「気持ちを伝える」ための3つのポイント
- 「あなたのため」ではなく「私も正直しんどい」と本音を伝える
- 感情的にならず、落ち着いたタイミングと場所を選ぶ
- 家族だけで抱え込まず、医師・PTなど第三者の力を借りる
「嫌ならやめていい」小さな入口から始める

デイサービスを嫌がる方に対して、最初から「週2回、1日コース」を提案するのはハードルが高すぎます。大切なのは、とにかく一度経験してもらうための小さな入口を作ることです。
「半日だけ」「お風呂だけ」から始める
デイサービスには、1日コースだけでなく半日コースを設けている施設もあります。「半日だけ試してみませんか」という提案は、本人の心理的なハードルを大きく下げます。
また、入浴支援を目的にデイサービスを利用するケースは非常に多いです。「お風呂だけ入りに行く場所」と説明すると、すんなり受け入れてくれる方もいます。自宅での入浴が難しくなってきたタイミングは、デイサービスへの移行を提案しやすい時期でもあります。
「嫌ならやめればいいから」という言葉も有効です。逃げ道を作ってあげることで、本人が試してみようという気持ちになりやすくなります。
📝 訪問現場より
担当していた男性の利用者さんで、「デイサービスだけは絶対に嫌だ」とはっきり断っていた方がいました。介護度が上がり、ご家族から「お風呂の介助が正直しんどくなってきた」と相談を受けたのをきっかけに、「半日だけ、お風呂だけ試してみませんか」と提案したところ、渋々ながら一度だけ行ってみることになりました。
帰宅後に話を聞くと、「思っていたのと全然違った。将棋をやっている人がいて、つい話し込んでしまった」とのこと。翌週からは自分から「また行く」と言い出し、今では週2回の一日利用を続けています。「入口の小ささ」が、その方の生活を大きく変えたと感じた出来事でした。
見学・体験利用を積極的に使う
デイサービスは見学も体験利用も可能です。実際に行ってみると、事前のイメージと全然違ったという方は多いです。「一度見るだけでもどうですか」という提案なら、拒否感の強い方にも受け入れてもらいやすいです。
体験利用は通常1〜3回程度できる施設が多く、本人が「ここなら通えそう」と感じる施設を一緒に探すプロセスにもなります。
👨⚕️ もくもくポイント
最初から1日コースを目指さなくて大丈夫です。「半日だけ」「お風呂だけ」「嫌ならやめればいい」という小さな入口が、継続利用への一番の近道です。逃げ道を作ってあげることで、本人が動き出すことがあります。
本人に合うデイサービスの選び方

「デイサービスに行く」と決まっても、施設選びで継続率が大きく変わります。本人の性格や趣味、身体状況に合った施設を選ぶことが、長く通い続けるための鍵です。
機能訓練特化型・リハビリ型デイを検討する
近年、マシントレーニングや個別リハビリに特化したデイサービスが増えています。従来の「レクリエーション中心」のイメージとは異なり、「体を鍛えに行く場所」という目的が明確なため、男性が受け入れやすい傾向があります。
「介護に行く」ではなく「リハビリに行く」という感覚で通える点が、プライドの高い方にも受け入れられやすい理由のひとつです。体力維持や機能改善という目標があると、継続する動機にもなります。
男性利用者が多い曜日・施設を選ぶ
同じ施設でも、曜日によって利用者の男女比が異なることがあります。ケアマネジャーに「男性が多い曜日はいつですか」と確認するだけで、本人が馴染みやすい環境を選べることがあります。
事前に施設見学に行った際、実際の利用者の様子を確認しておくと安心です。
趣味や興味が合う仲間がいる施設を探す
将棋・囲碁・園芸・音楽など、本人の趣味に合ったプログラムがある施設を選ぶと、「また行きたい」という気持ちにつながりやすいです。趣味を通じて仲間ができると、デイサービスが楽しみな場所に変わります。
施設のパンフレットやホームページだけではわからないことも多いので、見学時にどんなプログラムがあるか直接聞いてみることをおすすめします。
なお、利用者が自分でプログラムを選択・決定できるデイサービスでは、「自分のことは自分で決めたい」という意識が尊重され、満足度や継続意欲が高まることも報告されています(加藤・小城, 2017)。見学時に「利用者が自分で選べるプログラムがあるか」を確認するのも、施設選びの一つの視点です。
出典:加藤・小城「「自己選択」「自己決定」のデイサービスプログラムに関する研究」鹿児島女子短期大学紀要(2017)
認知症専門デイという選択肢
認知症の方には、認知症対応に特化した専門デイサービスという選択肢もあります。スタッフが認知症ケアの専門的なトレーニングを受けており、本人が混乱しにくい環境が整っています。
通常のデイサービスで馴染めなかった方が、認知症専門デイでは落ち着いて過ごせるようになったケースもあります。ケアマネジャーに相談しながら検討してみてください。認知症への対応については認知症と診断されたときの行動ガイドもご参考ください。
👨⚕️ もくもくポイント
男性はレクリエーション中心のデイより、機能訓練特化型や趣味仲間のいる施設の方が馴染みやすい傾向があります。「リハビリに行く」という感覚で通える施設選びが、継続率を大きく左右します。
デイサービスに行ってよかった|利用後に起きる変化

「行きたくない」と言っていた方が、通い始めてから変わっていく姿を現場で何度も見てきました。最初は渋々だった方が、気づけば「今日はデイの日だ」と自分から準備するようになることがあります。
外出・人との交流が生活にリズムをもたらす
在宅生活が続くと、どうしても生活リズムが乱れがちです。デイサービスに通う日ができることで、起きる時間・食事・睡眠のリズムが整いやすくなります。
人と話す機会が増えることで、表情が明るくなったり、会話が増えたりする変化が、現場でも多く見られます。閉じこもりがちだった方が、デイでの出来事を楽しそうに話してくれるようになった、という声を家族からよく聞きます。
📝 訪問現場より
担当していた利用者さんで、訪問リハビリの時間中もあまり多くをしゃべる方ではなく、こちらから質問してようやく答えてくれる、という感じの方がいました。その方がデイサービスに通い始めてから、様子が変わりました。
「デイサービスにこんな人がいてね」「昨日はこういうことをやったんだよ」と、自分から話してくれるようになったのです。リハビリ中の会話量も明らかに増え、表情も柔らかくなりました。デイサービスでの交流が、その方の「話す意欲」そのものを引き出していたのだと感じています。
家族の介護負担が軽くなる
デイサービスの日は、家族にとっての貴重な休息時間になります。介護は長期戦です。家族が介護うつになって倒れてしまっては、在宅介護の継続が難しくなります。
「親のため」だけでなく「自分たちが介護を続けるため」という視点でデイサービスを捉えると、罪悪感なく利用を勧めることができます。在宅介護の限界サインと施設入所のタイミングについても確認しておくと安心です。
研究でも示されているデイサービスの効果
在宅高齢者を対象にした研究では、通所サービスの利用開始後に主観的幸福感が維持・向上することが報告されています(高柳ら, 2007)。また、通所リハビリテーション利用者を対象とした研究では、入浴介護への満足度が特に高く、コミュニケーション活動においては女性の満足度が高いことも示されています(西口ら, 2008)。
出典:高柳ら「在宅高齢者の通所サービス利用開始2年間における主観的幸福感の経時的変化と関連要因」日本看護研究学会雑誌(2007)/西口ら「介護サービスに対する利用者の満足度とwell-being感に関する研究」日本経営工学会論文誌(2008)
最初は消極的な利用であっても、通い続けることで本人の生活の質が上がっていくことは、研究からも裏付けられています。
まとめ|デイサービスを嫌がる親に大切な3つのこと
デイサービスを嫌がる親への対応は、焦らず、本人の気持ちを尊重しながら進めることが基本です。最後に大切なポイントを整理します。
📝 まとめ
- ✅ まず「なぜ嫌がっているのか」理由を把握することが対応の第一歩
- ✅ 「あなたのため」より「私も大変」という正直な言葉の方が親の心に届きやすい
- ✅ 最初から1日コースを目指さず、半日・お風呂だけの小さな入口から始める
- ✅ 本人の性格・趣味に合った施設選びが継続率を大きく左右する
・西口宏美ら「介護サービスに対する利用者の満足度とwell-being感に関する研究:通所リハビリテーションの利用者を対象として」日本経営工学会論文誌 59(2), 2008
・高柳智子ら「在宅高齢者の通所サービス利用開始2年間における主観的幸福感の経時的変化と関連要因」日本看護研究学会雑誌 30(3), 2007
・加藤玲子・小城百代「「自己選択」「自己決定」のデイサービスプログラムに関する研究」鹿児島女子短期大学紀要 第52巻, 2017


コメント