📋 この記事でわかること
- ✔ ラジオ体操が高齢者にもたらす健康効果(フレイル改善・認知症リスク低下)
- ✔ 高齢者に危険な動作はどれか、その理由
- ✔ 危険を避けて続けるための具体的な工夫(座って・掴まれる場所・無理しない)

毎朝ラジオ体操だけは続けとるんじゃが、最近ちょっとふらつくのう…

うちの親、体は元気なんですけど、ラジオ体操って高齢者がやっても大丈夫なんでしょうか?
訪問リハビリ歴12年の理学療法士として、これまで1万件以上のお宅にお伺いしてきました。その中で、ラジオ体操を毎朝の習慣にされている高齢者の方に本当にたくさん出会ってきました。ラジオ体操は確かに素晴らしい運動です。でも実は、高齢者がそのままの形でやると危ない動作もいくつかあります。テレビや動画の見本どおりに頑張った結果、ふらついてヒヤッとした、という場面を現場で何度も見てきました。この記事では、ラジオ体操の健康効果をきちんとお伝えしたうえで、「どの動作が危ないのか」「どう変えれば安全に続けられるのか」を、私自身の現場での経験を交えて具体的にお話しします。読み終える頃には、ご家族が安心して高齢の親御さんの体操を見守れるようになるはずです。
ラジオ体操は高齢者に本当に効果があるのか

結論からお伝えすると、ラジオ体操の健康効果は科学的にもしっかり裏付けられています。「たかがラジオ体操」と思われがちですが、近年の研究でその実力が次々と明らかになっています。ラジオ体操には、関節や筋肉の柔軟性、バランス能力、下肢の筋力、全身持久力といった、健康を保つために必要な要素がバランスよく詰まっています。短い時間で全身をまんべんなく動かせる運動は、実はそれほど多くありません。ここでは、近年の研究で分かってきたラジオ体操の効果を3つの角度からご紹介します。
フレイル(虚弱)の改善にはっきり効果
かんぽ生命や東京都健康長寿医療センターなどの共同研究より、日本人高齢者226人を対象にした12週間のランダム化比較試験の結果、ラジオ体操の実践はフレイルやプレフレイルの高齢者の敏捷性・バランス、持久力の向上、そして「運動を続けられる自信」の維持に有益であることが分かりました。ランダム化比較試験は運動効果を厳密に確かめられる質の高い研究方法で、その結果として効果が示された意味は大きいと言えます。
出典:かんぽ生命保険 プレスリリース(ラジオ体操とフレイルに関する共同研究/Journal of Epidemiology, 2024)
フレイルとは、加齢によって心身の機能が低下し、要介護の一歩手前まで来ている状態のことです。ここから運動で持ち直せるかどうかは、その後の生活を大きく左右します。手軽なラジオ体操でそこに手が届くのは、現場で高齢者を見てきた私にとっても心強い事実です。
認知症リスクが18%低下という大規模研究
さらに帝京大学とJAGES(日本老年学的評価研究)の研究より、全国の65歳以上1万1千人あまりを平均5.3年間追跡した大規模調査で、体操をしない人と比べてラジオ体操のみを実践していた人は認知症のリスクが18%低かったことが報告されています。1万人規模を5年以上追いかけた研究の重みは相当なものです。
出典:帝京大学・日本老年学的評価研究(JAGES)プレスリリース(ラジオ体操と認知症リスク低下)
その理由として、身体活動量が増えること、多様な動作を伴う運動であること、音楽に合わせて動くこと、体操会などで他者とつながることなどが考えられています。ラジオ体操はただ体を動かすだけでなく、頭と心にも良い刺激を与えているわけです。毎朝の数分が、何年も先の自分を守ってくれる。そう考えると、続ける価値は十分にあります。
歩く力と人とのつながりも守る
日本予防理学療法学会誌の研究より、早朝のラジオ体操会に参加している地域の高齢者は、歩行能力の維持と社会的なつながりの増加に良い効果が見られたことも報告されています。毎朝決まった時間に体を動かし、近所の人と顔を合わせる。この習慣そのものが、足腰と心の両方を支えているのです。訪問の現場でも、ラジオ体操を続けている方は生活のリズムが整っていて、表情が明るい方が多い印象があります。
出典:日本予防理学療法学会雑誌 第3巻2号「地域在住高齢者における早朝のラジオ体操会への参加が身体的・精神的・社会的側面に及ぼす効果」(2024)
👨⚕️ もくもくポイント
ラジオ体操の効果は「体・頭・心」の3方向。フレイル改善、認知症リスク低下、そして人とのつながり。毎朝続けること自体が、何年も先の自分への投資になります。
それでも高齢者に「危険な動作」がある

これだけ効果があるラジオ体操ですが、高齢者がそのままの形で行うと危ない動作も確かにあります。ここが、もともと幅広い年代向けに作られた体操を高齢者に当てはめるときの落とし穴です。ラジオ体操は本来、子どもから大人まで誰でもできるように作られています。だからこそ、体力や関節の状態が変わってきた高齢者には、そのままでは負担が大きい動きも混ざっているのです。訪問の現場で、私が実際に「これは止めた」「変えた」という動作を具体的にお話しします。
ジャンプ系の動き――着地でバランスを崩す
最も注意してほしいのが、ラジオ体操第一・第二に出てくる「跳ぶ」動きです。両足で軽く跳ねる動作は、着地の瞬間に全身のバランスを取り直す必要があり、高齢者にとってはここでよろけやすいのです。加えて、跳んで着地するときには膝や足首に瞬間的に大きな力がかかります。膝に痛みや変形を抱えている方にとっては、この衝撃そのものが負担になります。
📝 訪問現場より
以前お伺いしていた80代の女性は、変形性膝関節症をお持ちでした。ラジオ体操を熱心に続けておられたのですが、跳ぶ動作の着地でバランスを崩し、よろけてしまう場面がありました。
そこで私は、跳ぶ動きの代わりに「かかと上げ(つま先立ちでかかとを上げ下げする動き)」に置き換えることをご提案しました。これならふくらはぎの筋肉は使えて、バランスを崩す危険は大きく減ります。ジャンプの音楽が流れてきたら、その場でかかと上げ。この小さな工夫で、その方は安心して体操を続けられるようになりました。
体そらし――「反れない人」ほど危ない
もう一つ気をつけたいのが、上半身を後ろに反らす「体そらし」の動きです。意外に思われるかもしれませんが、危ないのは体が硬くてうまく反れない人です。反れないのに無理に反ろうとすると、後ろにバランスを崩して転倒する危険があります。
📝 訪問現場より
要支援の80代男性で、身体機能はとても高い方がいらっしゃいました。ところが若い頃から体が硬く、体そらしだけがどうしてもうまくできません。頑張って反ろうとすると後方に転倒しかねなかったため、私は「この動作だけは無理にやらないように」とお伝えしました。
ここで大切なのは、「体が元気だから全部の動作が安全」とは限らないということです。ご家族はつい「うちの親は元気だから大丈夫」と思いがちですが、その人ごとの体の癖で、特定の動作だけが危険になることがあるのです。
首回し・急な動きにも注意
意外と見落とされやすいのが、首を大きく回す動きや、勢いをつけた素早い動作です。首を急にぐるっと回すと、めまいやふらつきが出ることがあります。特に血圧の薬を飲んでいる方や、もともとめまいが出やすい方は要注意です。首の動きはゆっくり、無理に大きく回さない。この一点を意識するだけでも安全性は上がります。ラジオ体操全体に言えることですが、高齢者の場合は「速く・大きく」よりも「ゆっくり・小さく」を心がけるほうが安心です。
👨⚕️ もくもくポイント
危険な動作は「ジャンプ・体そらし・急な首回し」の3つが要注意。特に体そらしは、元気な人でも体が硬ければ危ないので、「うちの親は大丈夫」と油断しないことが大切です。
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危険を避けて安全に続ける3つの工夫

では、どうすればラジオ体操を安全に続けられるのか。現場で私がお伝えしている工夫を3つに整理してお話しします。難しいことは一つもありません。ご家族が今日からできることばかりです。
✅ 安全に続ける3つの工夫
- 基本は椅子に座って行う
- 立つなら掴まれる場所を必ず用意する
- 危ない動作は無理せず変えるか飛ばす
基本は「座って」やる
高齢者の場合、まずは椅子に座って行うことをおすすめします。座ってしまえば、転倒やふらつきの心配は大きく減ります。上半身を動かす動き――腕を回す、伸ばす、体を横に曲げるといった動作は、座ったままでもほぼそのまま行えます。
座って行う場合は、NHKの「みんなの体操」や、動画サイトで公開されている椅子に座ったバージョンを見本にするのが安全で確実です。自己流でアレンジするより、公式に作られた座位版に合わせるほうが、無理のない動きになります。椅子は、キャスターのない安定したものを選び、深く腰かけて行ってください。
立ってやるなら「掴まれる場所」を必ず作る
しっかり立てる方の場合は、座って行うよりも立って行うほうが、足腰やバランスにはより効きます。ふらつきが心配なら座って、体力に余裕があれば掴まりながら立って――ご本人の状態に合わせて選んでいただくのが一番です。立って行う場合は、体のすぐ近くにテーブルや壁など、ふらついたときに咄嗟に掴まれる場所を必ず用意してください。
これには理論的な裏付けもあります。日本理学療法士協会のハンドブックより、転倒には本人の筋力やバランスといった内的な要因だけでなく、環境などの外的な要因も関わっており、外的なリスクが重なると転倒しやすくなることが指摘されています。裏を返せば、掴まれる場所を用意して環境を整えることは、それだけで転倒予防になるということです。椅子の背もたれや丈夫なテーブルの横で行うだけで、安心感がまるで違います。足元に滑りやすいマットや電気コードがないかも、あわせて確認しておきましょう。
出典:日本理学療法士協会 理学療法ハンドブック シリーズ18「転倒予防」
危ない動作は「変える・飛ばす」でいい
そして、これまでお話ししたジャンプ系や体そらしのように、その人にとって危険な動作は、無理せず変えるか飛ばして構いません。ジャンプはかかと上げに、反れない人の体そらしは省略する。「全部きっちりやらなければ意味がない」と考える必要はありません。安全に続けられる範囲で毎日コツコツやることのほうが、たまに全部やって転ぶよりずっと価値があります。
ご家族が横で見守れるときは、ふらつきやすい動作のときだけそっとそばにいてあげてください。それだけで事故の多くは防げます。特に、跳ぶ動きや体そらしの場面は、家族が意識して見ておくと安心です。
👨⚕️ もくもくポイント
安全に続ける鍵は「座る・掴まる場所・無理しない」。この3つだけ覚えておけば大丈夫。完璧にやることより、危険を避けて毎日続けることのほうが、ずっと体のためになります。
安全に続けるために知っておきたいこと
座り方や環境の工夫に加えて、もう二つだけ、続ける前に知っておいてほしいことがあります。「どちらの体操を選ぶか」と「どんなときに止めるか」です。どちらも、事故を防いで長く続けるための大切なポイントです。
高齢者は「ラジオ体操第一」を選ぶと安心
ラジオ体操には第一と第二があります。このうち第二は、跳ぶ動きや素早い動きが多く、テンポも速めで運動量が大きく作られています。若い頃の感覚でつい第二まで頑張ってしまう方もいますが、高齢者の場合はここでバランスを崩しやすくなります。私も訪問の現場では、動きがよりゆるやかで安全な「第一」をおすすめすることが多いです。まずは第一を、無理のない範囲で。それだけでも全身をバランスよく動かす十分な運動になります。もし第二もやりたい場合は、跳ぶ動きを先ほどのかかと上げに置き換えるなど、負担の大きい動作を調整しながら行いましょう。
こんなサインが出たら中止・受診を
安全に続けるうえで、体操を止める目安も知っておいてください。体操の最中や直後に、いつもと違う体の反応を感じたら、我慢せずに中止することが大切です。「体操くらいで大げさな」と思いがちですが、体からのサインに素直に耳を傾けることが、事故を防ぐ一番の近道です。具体的にどんなときに中止すべきか、下にまとめました。
⚠️ こんなサインが出たらすぐ中止
胸の痛み/強い動悸/治まらない息切れ/我慢できないめまい・ふらつき/関節の鋭い痛み。これらが出たら中止し、胸の痛みや息切れが繰り返すときは早めに受診を。
また、心臓や血圧の持病がある方、膝や腰など整形外科の病気で治療を受けている方は、始める前に一度かかりつけの先生に「ラジオ体操をしても大丈夫か」を確認しておくと安心です。持病がある場合にひと言相談しておくだけで、ご本人もご家族も落ち着いて続けられます。
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まとめ
ラジオ体操は、フレイルの改善や認知症リスクの低下、歩行能力の維持まで、科学的に確かな健康効果を持つ優れた運動です。一方で、ジャンプ系の動きや、体が硬い人の体そらし、急な首回しなど、高齢者には危険な動作もあります。体操は無理のない「第一」を選び、胸の痛みや強いめまいなどが出たら迷わず中止することも、あわせて覚えておいてください。
大切なのは、効果を得ながら危険を避けること。そのためには、基本は座って行い、立つなら掴まれる場所を用意し、危ない動作は無理せず変えるか飛ばす。この3つを押さえるだけで、ラジオ体操はぐっと安全になります。毎朝の習慣を、これからも安心して続けていただけたら嬉しいです。ご家族の見守りも、ぜひ添えてあげてください。無理なく、安全に、そして長く。それがラジオ体操を高齢者の味方にする一番のコツです。
📝 まとめ
- ✅ ラジオ体操はフレイル改善・認知症リスク低下・歩行維持に効果
- ✅ ジャンプ・体そらし・急な首回しは高齢者には危険な動作
- ✅ 基本は座って、立つなら掴まれる場所、危ない動作は変える・飛ばす
- ✅ 高齢者は「第一」を選び、異変が出たらすぐ中止・受診を
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