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📋 この記事でわかること
- ✔ 親が「暑くない」とエアコンを嫌がる、その本当の理由(高齢者の体の仕組み)
- ✔ 何度声をかけても通じないときに、発想を変える具体的な方法
- ✔ 離れて暮らす家族でも、親の部屋の暑さを管理できる仕組み
- ✔ 訪問PTが実際に祖母の家でやっている、遠隔操作の活用法

何度言っても、母がエアコンをつけてくれないんです。「そんなに暑くないよ」の一点張りで…。このままだと熱中症にならないか、毎日心配で。

そのお気持ち、すごくよく分かります。実は私の祖母も全く同じなんです。そして「暑くない」と言い張るのは、わがままでも頑固でもなく、ちゃんと体の理由があるんですよ。
「暑いよ」と言っても「暑くない」と返される。エアコンをつけても、いつの間にか消されている。何度繰り返しても変わらなくて、もう疲れてしまった——そんな方に向けて、訪問の現場で12年間お年寄りの体を見てきた理学療法士の視点から、「なぜ通じないのか」という体の仕組みと、「説得をやめて環境を変える」という新しい解決のかたちをお伝えします。
「暑くない」と言い張る親に、もう声かけで消耗していませんか

「お母さん、今日は暑いからエアコンつけようね」
「大丈夫、そんなに暑くないから」
このやりとりを、もう何十回繰り返したでしょうか。
つけてあげても、ふと気づくと消えている。電話で「エアコンつけてる?」と聞けば「つけてるよ」と返ってくるのに、実際に行ってみると部屋にはむっとした熱気がこもっている。優しく言っても、少し強く言っても、結局「暑くない」の一言で会話が終わってしまう。
そうやって何度も声をかけ続けて、心のどこかで「もう疲れたな」と感じている方は、きっと少なくないと思います。
インターネットで対策を調べると、「こう声をかけましょう」「上手な説得のコツ」といった情報がたくさん出てきます。でも、あなたはもう十分すぎるほど声をかけてきたはずです。足りないのは”言い方”ではありません。
なお、電気代が理由でエアコンを嫌がるケースもありますが、この記事では体が暑さを感じていないケースに絞って解説します。
この記事でお伝えしたいのは、もっと上手に説得する方法ではなく、説得すること自体をやめるという発想の転換です。
そのためにはまず、「なぜ親が”暑くない”と言い張るのか」を知る必要があります。これは性格の問題でも、わがままでもありません。歳を重ねた体に起きる、れっきとした生理的な変化なのです。次の章で、その仕組みを訪問PTの視点から解説します。
なぜ高齢者は「暑くない」と感じるのか〔訪問PTが解説〕

親が「暑くない」と言うとき、本当に暑さを感じていないことがほとんどです。嘘をついているわけでも、強がっているわけでもありません。歳を重ねると、暑さを感じ取る体の仕組みそのものが変化していきます。ここを理解すると、親への見方が少し変わるはずです。
皮膚の温度センサーが鈍くなる
私たちの皮膚には、暑さや寒さを感じ取るセンサーがあります。そのセンサーがキャッチした情報が脳に伝わって、はじめて「暑い」と感じ、汗をかいたりエアコンをつけたりする行動につながります。
ところが、加齢によってこのセンサーの感度が弱まると、暑さが脳に正確に伝わらなくなります。環境省の熱中症マニュアルによると、老化に伴い皮膚の温度センサーの感度が鈍くなることで暑さを感知しにくくなり、猛暑の日でも「そんなに暑くない」と感じたまま、実際には熱中症になりかねない状態になることがあるといいます(環境省より)。
出典:環境省『熱中症環境保健マニュアル』第3章(高齢者の特徴)
実際、環境省の資料でも、夏季の高齢者の居室の温度は若年者より約2℃高い31〜32℃に達していて、これが7月から9月の間ずっと続いていると報告されています(環境省より)。つまり、多くの高齢者が「暑くない」と感じながら、客観的にはかなり暑い部屋で過ごしているのです。
汗をかきにくく、熱を逃がせない
体に熱がこもったとき、本来は汗をかいて、その蒸発で体を冷やします。ところが歳をとると汗腺が小さくなり、血液量も減るため、汗をかいて熱を逃がす力そのものが落ちていきます。
さらに、のどの渇きも感じにくくなります。体の水分が足りなくなっても「のどが渇いた」と気づきにくいため、知らないうちに脱水が進みやすいのです。高齢者は若年者より体液量が少なく、もともと脱水に傾きやすい状態にあります(環境省より)。
出典:環境省『熱中症環境保健マニュアル』第3章(高齢者の特徴)
「暑さを感じない」だけでなく、「感じても熱を逃がしにくい」。この二重の負担が、高齢者を熱中症のリスクにさらしています。
〔PT視点〕動かないから、そもそも暑くなる場面が少ない
ここからは、訪問の現場で体を見続けてきた理学療法士として、もう一つお伝えしたいことがあります。
それは、家の中であまり動かない高齢者ほど、暑さを感じにくいということです。
体温が上がるのは、体を動かして熱が生まれたときです。ところが、一日のほとんどを座って過ごしていると、そもそも体が暑くなる場面が少ない。だから本人の体感としても「暑い」と感じる瞬間が訪れにくく、汗をかく機会も減っていきます。動かないことが、暑さへの鈍感さをさらに後押ししているのです。
これは私の現場感覚だけの話ではありません。高齢男性と若年男性を比較した研究では、加齢に伴う体力(全身持久力)の低下が、全身で感じる温熱感覚の減弱の原因になることが示されています(デサントスポーツ科学の研究より)。体力が落ちるほど、暑さを感じ取る力も鈍っていく——運動や活動量を専門に見てきた理学療法士として、この点は特に強調しておきたいところです。
出典:「加齢に伴う温度感覚の減弱は全身持久力の向上で改善できるか?」デサントスポーツ科学 第38巻
そしてこれは、裏を返せば希望でもあります。その話は、記事の最後にお伝えします。
👨⚕️ もくもくポイント
親が「暑くない」と言うのは、嘘でも強がりでもありません。体の仕組みなんだと分かると、責める気持ちが少し和らぎます。まずは「本人にもどうしようもないこと」と受け止めるのが第一歩です。
訪問現場からのエピソード

ここで、訪問先で実際にあったお話を一つ紹介させてください。
①いつも、私たちが来るときだけエアコンがついていた
ある一人暮らしの高齢女性のお宅へ、定期的に訪問していたときのことです。
私が伺うと、いつも部屋は涼しく、エアコンがきちんとついていました。だから最初のうちは、暑さ対策については特に心配していませんでした。
②何気ない会話で気づいた、本当の生活
📝 訪問現場より
リハビリの合間に世間話をしていたとき、その方がぽろっとこぼしたんです。「普段はね、もったいないし、そんなに暑くもないから、あんまりつけないのよ」と。私たちが来るときについていたのは、訪問者である私たちのために、わざわざつけてくれていたのだと気づいた瞬間でした。
電話で「つけてるよ」と答えていたのも、訪問時にちゃんとついていたのも、事実でした。でもその奥に、誰の目も届かない長い時間、暑い部屋で過ごしているという現実がありました。離れていると、毎日の本当の室温は見えないのです。
③離れて暮らすご家族に伝えると
このことを、離れて暮らすご家族に「普段はあまりエアコンをつけていないようです」とお伝えしました。ご家族はとても驚いて、そして心配されていました。
無理もありません。電話では元気そうに話すし、たまに様子を見に行ったときも普通に過ごしている。離れていると、毎日の本当の室温までは、どうやっても見えないのです。
④「どうすれば見守れるか」を一緒に考えた
ご家族と話したのは、「どう説得するか」ではありませんでした。何度言っても本人の感覚は変わらないことは、もう分かっていたからです。
考えたのは、「離れていても、部屋の暑さを把握して、必要なら手を打てる仕組みはないか」ということ。ここから、遠隔で室温を管理するという発想にたどり着きました。その具体的な方法は、このあとの章でお伝えします。
👨⚕️ もくもくポイント
離れて暮らすご家族は、電話の「つけてるよ」だけで安心しないこと。人が来るときだけつける、という”見えない室温”があります。たまの帰省や電話では、毎日の本当の暑さまでは見えないのです。
説得をやめて「環境を整える」に切り替える

「室内だから安全」という思い込みが危ない
熱中症と聞くと、炎天下の屋外をイメージしがちです。でも実際は違います。
⚠️ 熱中症死亡の半数以上は「自宅」で起きている
環境省の資料によると、熱中症による死亡者のうち、家庭(庭を含む)で発生したケースが56.5%を占めています(厚生労働省の人口動態統計より)。高齢者では住宅内での発生が半数を超えており、「家にいるから安全」ではありません。
「家にいるんだから大丈夫」ではないのです。むしろ、誰の目も届かない自宅こそが、高齢者にとって最も危険な場所になりうる。先ほどの訪問先のお宅のように、離れて暮らす家族には”見えない室温”があることを思えば、その怖さは想像できると思います。
温度計で「見える化」しても、限界がある
では、どうすればいいのか。
多くのご家庭がまず試すのが、部屋に温度計を置くことです。実は私も、祖母の家で同じことをしました。「暑くない」と言い張る祖母に、数字で「ほら、今30度を超えているよ」と見せれば、納得してくれるんじゃないかと思ったんです。
確かに、温度計を置いてからは、数字を見て多少はエアコンをつけることを受け入れてくれるようになりました。一歩前進です。
でも、それでも壁は越えられませんでした。少し時間が経って、本人が「暑く感じない」と思えば、結局また自分で消してしまうんです。数字を見せても、本人の体感が変わらない以上、その場の見える化だけでは限界がありました。
本人を変えるのではなく、家族が環境を管理する
ここで、発想を切り替えました。
本人の感覚を変えようとするから、うまくいかない。「暑くない」と感じる体の仕組みは、声かけや温度計では変えられないのです。だったら、本人を説得するのをやめて、家族の側が環境そのものを管理する方向に舵を切ればいい。
具体的には、離れていても部屋の温度がわかり、必要なときに遠隔でエアコンを操作できる仕組みです。これなら、本人が「暑くない」と感じていても、家族が客観的な数字を見て手を打てます。消されても、また家族側からつけられます。
説得という消耗戦から降りて、環境を整える側に回る。次の章では、私が実際に祖母の家で導入したその仕組みを、正直な本音もふくめてお話しします。
訪問PTが実際に使ってみた結果

ここからは、私が実際に祖母の家で導入した「遠隔操作の仕組み」について、うまくいった点も、正直まだ悩んでいる点も、ありのままにお話しします。
①温度計まで試して、それでも消されていた
前の章でお話しした通り、祖母は「暑くない」の一点張りで、温度計で数字を見せても、しばらくすると自分でエアコンを消してしまう状態でした。
祖母は、息子である私の父と同居しているので、まだ誰かが気づける環境ではあります。それでも、家族がずっと張りついているわけにはいきません。仕事や外出で家を空けた隙に消されてしまえば、気づくのは帰宅してから。その間ずっと、祖母は暑い部屋で過ごしていることになります。
②スマホで遠隔操作できる仕組みを導入した
そこで導入したのが、スマホからエアコンを遠隔操作できる機器と、部屋の温度・湿度をスマホで確認できるセンサーです。
唯一の前提条件は、親の家にWi-Fiがあることです。Wi-Fiさえあれば、設定はスマホアプリの指示に沿って進めるだけで、それほど手間はかかりません。帰省のタイミングで一緒にやってあげると、30分ほどで完了します。
対応機器は幅広く、リモコンで操作できる電子機器であれば基本的につなぐことができます。ただし赤外線方式のため、SwitchBotの本体とエアコンが同じ部屋にあり、電波が届く位置に設置する必要があります。
あわせて温湿度センサーを部屋に置いておくと、今その部屋が何度なのかを、外出先からでもスマホで確認できます。
なお、最近のエアコンであれば、メーカー純正のアプリで遠隔操作できる機種もあります。まず手持ちのエアコンのメーカーサイトを確認してみるのも一つの手です。
③消されても、家族がまたつけられるようになった
これで何が変わったか。
一番大きいのは、外出先からでも、祖母の部屋が今何度なのかがわかることです。スマホを見て「31度になっている」と気づけたら、その場でエアコンをつけられる。たとえ祖母が消してしまっていても、家族がまた遠隔でつけ直せます。
「家を空けている間に消されていないか」という不安が、ぐっと減りました。少なくとも、暑い部屋に長時間放置されてしまう事態は、かなり防げるようになっています。
④正直な本音:これで完璧ではない
ただ、正直にお伝えしておきたいことがあります。これは魔法の解決策ではありません。
家族が遠隔でつける、本人がまた消す——このいたちごっこになる可能性は、正直あります。場合によっては、本人が操作できないようにエアコンのリモコンを家族が預かることも、頭の片隅で考えています。本人の意思を無視するようで、心が痛む選択です。
それでも、と思うのです。「暑くない」と感じてしまうのは体の仕組みであって、本人にはどうしようもないこと。だからこそ、命を守る最後の手段は、家族が握っておくしかない。きれいごとでは片付けられない葛藤ですが、命には代えられない、というのが今の私の正直な気持ちです。
同じように悩んでいる方に、「完璧じゃなくていい。できる範囲で命を守る仕組みを持っておく」という選択肢があることを、知っておいてほしいと思います。
👨⚕️ もくもくポイント
対策は完璧でなくて大丈夫です。「できる範囲で命を守る仕組み」を一つ持っておくだけで、不安はぐっと減ります。いたちごっこになっても、暑い部屋に長時間放置される最悪の事態を防げれば、それで十分価値があります。
私が使っている機器について
参考までに、私が祖母の家で使っているのは、スマホでエアコンを遠隔操作できる「SwitchBot ハブミニ」と、部屋の温度・湿度をスマホで確認できる「SwitchBot 温湿度計」です。
エアコンを買い替えることなく、今あるエアコンをそのまま遠隔操作できるのが、導入のハードルを下げてくれました。離れて暮らすご家族なら、外出先や自宅から親御さんの部屋の暑さを確認できる点は、特に心強いはずです。
私が特に便利だと感じているのは、温度に応じて自動でエアコンをつける設定ができることです。祖母の部屋は28度を超えたら自動でエアコンがつくよう設定してあります(設定温度は26度ですが、お住まいの地域や体調に合わせて調整してください)。これなら家族が常にスマホを気にしていなくていい、と同居している父も言っています。
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それでも、最後は体を動かすことが一番の予防〔PTより〕

遠隔操作の仕組みは、確かに心強い味方です。でも、理学療法士として最後にどうしてもお伝えしておきたいことがあります。
それは、遠隔操作はあくまで「暑さから守る」ための対症療法だということです。根本のところで親御さんの体を守るのは、やはり体を動かすこと——活動量なのです。
動かないから暑さを感じない、なら動けば変わる
記事の前半で、「家の中で動かない高齢者ほど、暑さを感じにくい」というお話をしました。覚えているでしょうか。
これは裏を返せば、希望でもあります。体を動かす習慣を取り戻せば、暑さを感じ取る力や、汗で熱を逃がす力も、ある程度は戻ってくるということだからです。
環境省の資料でも、日常的に運動している高齢者は、若い人と同じくらいの発汗能力を持っていることが示されています。高齢になっても運動習慣を身につければ、体温調節能力の老化を遅らせることができるのです(環境省より)。先ほど紹介した研究でも、体力の向上によって、加齢で鈍った温度感覚が一部改善することが期待できるとされています(デサントスポーツ科学の研究より)。
出典:「加齢に伴う温度感覚の減弱は全身持久力の向上で改善できるか?」デサントスポーツ科学 第38巻
無理のない範囲で、一日一回汗をかく
とはいえ、激しい運動は必要ありません。むしろ高齢者には逆効果になることもあります。
おすすめは、無理のない範囲で「一日一回、軽く汗ばむくらい」体を動かすこと。家の中で立ち座りを繰り返す、ゆっくり足踏みをする、近所を少し散歩する——そのくらいで十分です。体を動かす習慣が、暑さを感じ取る力を少しずつ取り戻し、めぐりめぐって熱中症の予防につながっていきます。
遠隔操作で「今この瞬間の暑さ」から守りながら、体を動かす習慣で「暑さに強い体」を育てていく。この両輪が、親御さんの夏を守る一番たしかな方法だと、現場で多くのお年寄りを見てきた理学療法士として感じています。
👨⚕️ もくもくポイント
遠隔操作は対症療法、体を動かすことが根本予防です。一日一回、軽く汗ばむ程度の運動から始めてみましょう。立ち座りや足踏みなど、家の中でできることで十分です。
まとめ
📝 まとめ
- ✅ 高齢者が「暑くない」と言うのは、皮膚の温度センサーが鈍り、汗をかいて熱を逃がす力も落ちているから。本人は本当に暑さを感じていない
- ✅ 動かない高齢者ほど暑さを感じにくい。活動量の低下が、暑さへの鈍感さを後押しする
- ✅ 熱中症による死亡の半数以上は家庭内で起きている。「室内だから安全」ではない
- ✅ 何度説得しても本人の体感は変わらない。だからこそ「説得をやめて、家族が環境を管理する」発想への転換が要になる
- ✅ 遠隔操作で「今の暑さ」から守りつつ、体を動かす習慣で「暑さに強い体」を育てる。この両輪が一番たしかな備えになる
何度も声をかけて、それでも届かなくて、疲れてしまった——その頑張りは、決して無駄ではありませんでした。でも、これからは一人で言葉を尽くして消耗しなくて大丈夫です。
本人を変えようとするのではなく、家族が守れる仕組みを持つ。それは諦めではなく、お互いが穏やかに過ごすための、かしこい選択です。この夏、あなたとご家族が少しでも安心して過ごせますように。
・環境省『熱中症環境保健マニュアル』第3章(高齢者の特徴)
・環境省『熱中症環境保健マニュアル』第1章(発生場所データ)
・「加齢に伴う温度感覚の減弱は全身持久力の向上で改善できるか?」デサントスポーツ科学 第38巻


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