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📋 この記事でわかること
- ✔ ペットを飼うことが高齢者の心と体に与える影響(研究データつき)
- ✔ なぜ「世話をすること」が認知症予防につながるのか
- ✔ 高齢者のペット飼育で本当にネックになるのは何か
- ✔ 飼えると決められた人と、諦めた人を分けた「たった一つの違い」
- ✔ 飼育が難しい場合に、いま選べる現実的な選択肢

父が亡くなってから、母がすっかり元気をなくしてしまって…。犬か猫でもいたら違うのかな、と思うんですけど。

実際、ペットをきっかけに見違えるほど元気になった方を、私は何人も見てきました。

でも、母ももう80代ですし。もし母に何かあったら、その子はどうなるんだろうと思うと、とても勧められなくて…。

そこなんですよね。実は、飼えるかどうかを決めているのは「体力」でも「お金」でもなく、まさにその一点なんです。
私は理学療法士として、これまで12年間、訪問リハビリの現場で高齢者のご自宅にうかがってきました。訪問件数は1万件を超えます。
その中で、ペットに救われた方も、諦めた方も両方を見てきました。今も心に残っているのは、飼いたいと願いながら「当たり前だし、仕方ないわ」と静かに引き下がった、ある一人暮らしの女性です。あのとき私はもっと別の選択肢を差し出せたのではないか——この記事は、その反省から書いています。
ペットを飼うことの本当の価値と、避けて通れない現実。その両方をお伝えしたうえで、「飼えないから諦める」以外の道についても、最後にお話しします。
ペットは高齢者を本当に元気にする

「ペットがいると癒される」——それは多くの方が感じていることだと思います。
ただ、高齢者にとってのペットの価値は、癒しだけではありません。訪問の現場で見ていると、ペットがいる方といない方では、生活そのものの形が違うことに気づきます。
「人のために」がなくなると、生活は静かに崩れていく
配偶者を亡くされた方のご自宅にうかがうと、まず変わるのは食事です。これまで「夫のために」「妻のために」と献立を考えて作っていたのが、相手がいなくなった途端、買い置きのパンで済ませる・食べない日がある——と一気に適当になり、体重が落ちていきます。同時に、一日中誰とも話さない日が増え、以前は表情豊かだった方がぼんやり座っていることが多くなります。
これは単なる「気落ち」では片づけられません。食事量の低下は低栄養やフレイル(心身の虚弱)につながり、会話の減少は認知機能にも影響します。「人のために何かをする」という役割がなくなることは、それだけで生活の土台を揺るがすのです。
世話をする相手ができると何が変わるのか
そこにペットが加わると、生活に「やらなければならないこと」が戻ってきます。
朝、決まった時間にごはんを出す。水を替える。トイレをきれいにする。体調を気にかける。——どれも小さなことですが、自分以外の誰かのために、毎日決まった時間に動くという点が決定的に重要です。
実際、こうした効果は研究でも示されています。
東京都健康長寿医療センター研究所が日本人高齢者約1万1000人(平均74.2歳)を3年半にわたって追跡した調査では、ペットを飼ったことがない群に比べ、現在ペットを飼っている群は自立喪失(要介護状態または死亡)の発生リスクが0.71倍、犬を飼育している群では0.54倍と、5割近いリスク減が示されました(東京都健康長寿医療センター研究所より)[2]。
出典:東京都健康長寿医療センター研究所「ペットとの共生が人と社会にもたらす効果」
「ペットがいると元気になる気がする」という実感は、データの上でも裏づけられているわけです。
動物とふれあうと、体にも変化が起きている
気持ちの問題だけではなく、体の中でも変化が起きていることがわかってきています。
入院患者や施設入居中の高齢者を対象に犬を用いた動物介在療法を行った研究では、活動後に唾液中のオキシトシン値が有意に上昇したことが報告されています(日本老年療法学会誌 2024より)[3]。オキシトシンは、人と人、あるいは人と動物との関わりの中で分泌が高まる、安心感に関わるホルモンです。
出典:日本老年療法学会誌(J-STAGE)「高齢者に対する動物介在療法における効果と医療従事者に関連したその考察」2024
つまり「動物にふれると落ち着く」というのは、気のせいではなく、体の反応として説明できる部分があるということです。
📝 訪問現場より|【ケースA】80代女性・独居・猫を飼ったケース
①その方の状況
80代の女性で、ご主人を亡くされてから一人暮らし。訪問を始めた頃は生活のハリがすっかりなくなっていました。一番わかりやすく出たのが食事で、「今までは夫のためにって一生懸命作っていたけど、人のためにっていうのがなくなって、適当になってしまって」とご本人が。実際に体重も落ち、話す機会も減って、訪問時にぼんやりされることが増え、正直、認知症の初期症状ではないかと気にしていました。
②飼い始めまでの過程
そんな様子を見て、ご家族から猫を飼うことを提案されました。ただし、ただ「飼ったら」と勧めたわけではありません。「もし本人に何かあったときは、家族が引き取る」と先に決めたうえでの提案でした。ここが後から振り返ると決定的でした。
③その後の変化
猫が来てから、ごはん・水替え・トイレ掃除と一日にやることが一気に増え、表情が明らかに良くなっていきました。そして訪問のたびに「最近こんなことをするようになった」と猫の話を嬉しそうにしてくださるように。話す内容ができたことが大きかったのだと思います。
④ご家族の反応
離れて暮らす娘さんも、「電話の声が明るくなった」「会話が噛み合わないと思うことがあったが、それもなくなった」と。ご家族から見ても変化ははっきり感じられていたようです。
👨⚕️ もくもくポイント
配偶者を亡くされた後、最初に変わるのは「食事」です。ご実家に電話をしたとき、何を食べたかを聞いてみてください。「適当に済ませた」が続くようなら、それは気分の問題ではなく、生活が崩れ始めているサインかもしれません。
なぜ「世話をすること」が認知症予防につながるのか

「ペットを飼うと元気になる」と言われても、なぜそうなるのかがわからないと判断しにくいと思います。世話をすることが心身に効いてくる経路は、大きく3つに分けると理解しやすくなります。より広く生活習慣から予防を考えたい方は、認知症予防のためにできることもあわせてご覧ください。
①役割があると、生活リズムが戻る
高齢になって仕事も家事も減ると、一日の中の「決まりごと」が驚くほど少なくなります。起きる時間も食べる時間も気分次第になり、昼夜のメリハリが失われて、日中うとうと・夜眠れないという悪循環に入りがちです。
ペットがいると、朝夕決まった時間にごはんを出す、トイレを片づける——と、自分の都合では動かせない予定が入り、生活の骨組みが戻ってきます。しかもそれは「やらされる」のではなく「やってあげる」役割です。この違いが、続けられるかどうかを分けます。
②話す相手ができる
独居の方は、訪問が入る日以外は一日中誰とも話さないことも珍しくありません。話す機会が極端に少ないと、言葉が出るまでに時間がかかったり、話がまとまりにくくなったりします。「言葉を使う」こと自体が、脳への負荷であり訓練でもあるからです。
ペットは言葉を返しませんが、多くの飼い主さんは自然に話しかけます。さらに大きいのは、人との会話の材料が増えること。ケースAの女性も、訪問のたびに猫の話をしてくださるようになりました。「話すことがない」から「聞いてほしいことがある」へ——この変化は、人とのつながりを保つうえで想像以上に大きいものです。
③外出・身体活動が自然に増える
これは犬で特にはっきり出ます。散歩のために着替えて靴を履いて外に出る。天気が悪くても犬が待っているので出ざるを得ない——これが運動習慣として定着し、近所の人との会話も生まれます。
東京都健康長寿医療センターが65歳以上を対象に行った研究では、犬を飼っている人は認知症の発症リスクが約40%低いことが報告されました。ただし低下がはっきりしたのは運動習慣がある人・社会的孤立のない人で、猫の飼育者と非飼育者では意味のある差はみられていません(東京都健康長寿医療センター プレスリリースより)[1]。
出典:東京都健康長寿医療センター プレスリリース「ペット飼育と認知症発症リスク」2023年10月24日
つまり40%という数字は「動物がそばにいるから」ではなく、犬の散歩がもたらす運動と交流によるものと考えられます。猫では運動の経路が弱い代わりに、前の2つ——生活リズムと会話・役割——が効きます。大切なのは「どの動物が効果的か」ではなく、その方の生活のどこに穴が空いているかを見ることです。
👨⚕️ もくもくポイント
「犬なら認知症リスクが40%下がる」という数字だけを見て、無理に犬を選ぶ必要はありません。大事なのは、その方の生活のどこに穴が空いているかです。外に出る機会が減っている方と、話す相手がいない方とでは、必要なものが違います。
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それでも高齢者のペット飼育には大きなハードルがある
ここまで読むと「じゃあ飼えばいい」と思われるかもしれません。ただ、話はそう単純ではありません。私自身、「この方にペットがいたら」と感じることは何度もありましたが、実際に勧められたケースはごく一部です。高齢者のペット飼育には、避けて通れない壁があるからです。
最大の壁は「もしもの時、誰が引き取るのか」
体力でもお金でもありません。ご家族が最後に必ず突き当たるのは、この一点です。犬や猫の寿命は延びており、いま迎えれば15年前後を共に過ごします。80代の方が今から飼い始めた場合、最後まで自分で看取れる可能性は正直高くありません。
引き取り手が決まらないまま飼い主が亡くなったり施設に入ったりすれば、残された動物は行き場を失います。動物にとっても不幸ですし、ご家族にとっても大きな負担です。ご家族が「反対」するのは冷たいからではなく、きちんと責任を考えているからこそ簡単に賛成できないのです。
これは個々の家庭の悩みにとどまりません。新宿区は高齢者のペット飼育について、「施設に入居することになりペットを飼えなくなった」「ペットがいるから入院できない」といった相談が寄せられていることを紹介し、飼い主に万が一のことがあったときの備えを日頃から考えておくよう促しています(新宿区公式サイトより)。社会全体が直面している課題なのです。
日々の世話と「予期せぬ別れ」という現実
「もしもの時」の前に、日々の負担もあります。犬なら雨の日も散歩が必要で、リードに引かれて転倒すればそのまま骨折・寝たきりにつながりかねません。猫でも砂やフードは重く、買い物と持ち運びが負担になります。ペットも歳をとれば通院が必要ですが、運転できない方には動物病院への通院そのものが大きな問題で、医療費もかさみます。ご本人に認知症の症状が出れば、ごはんを何度もあげる・与え忘れるといったことも起き、誰かの見守りが要ります。
そしてもう一つ、別れは「亡くなったとき」だけではありません。転倒骨折での入院、肺炎、施設入居——こうした変化はある日突然、今日決まって明日から、ということも珍しくありません。さらに、ペットがいるために本人が入院や入所を拒んでしまうことすらあります。「この子を置いていけない」と必要な医療をためらう。ペットが支えになる一方で、いざというとき本人の選択肢を狭めることもある——この両面を知ったうえで判断していただきたいのです。
⚠️ 「亡くなったとき」だけが別れではありません
入院・施設入居は、ある日突然やってきます。ペットのために必要な入院・入所をためらう方も実際にいます。飼い始める前に「一時的に世話ができなくなったらどうするか」まで決めておくことが、ご本人とペットの両方を守ります。
📝 訪問現場より|【ケースB】独居の高齢女性・猫を諦めたケース
①その方の状況
長く一人暮らしの高齢女性で、以前は猫を飼っていた経験がありました。あるとき友人が猫を飼い始め、「すごく可愛いのよ」と勧められて「もう一度飼いたい」という気持ちが強くなり、訪問時にも以前の猫の話を楽しそうにされるように。
②ご家族への相談
ご本人は、離れて暮らす娘さんと息子さんに相談されました。結果は、反対でした。
③反対の理由
理由はただ一つ。「亡くなった後に、誰が面倒を見るのか」。その一点です。体力の心配でも、お金の話でもありませんでした。子ども世代にもそれぞれの生活があり、引き取ると即答できる状況ではなかったのです。
④その後のご様子
断念された後、その方は取り乱すことも、恨み言を言うこともありませんでした。訪問時に、ぽつりとこうおっしゃいました。
「当たり前だし、仕方ないわ」
その一言が、私はいまだに忘れられません。それでも飼いたかった。そして、静かに諦めた。このとき私は、ペットを飼う以外の選択肢を何一つ持っていませんでした。あのとき別の提案ができていれば、という思いが、この記事を書いている理由です。
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飼えるかどうかは「引き取り手が決まるか」で決まる

ここまで2つのケースをお話ししました。一方は飼えて明らかに元気になり、もう一方は諦めた。この2人を分けたものは何だったのか——私がご家族に一番お伝えしたい点です。
ケースAとケースBを分けた、たった一つの違い
改めて、2人の条件を並べてみます。
✅ 2人に共通していたこと
- どちらも高齢で、一人暮らし
- どちらも動物が好きで、飼いたい気持ちがあった
- どちらも、体力や経済面が決定的な障害だったわけではない
- どちらも、離れて暮らすお子さんに相談した
ここまでは、ほとんど同じです。違ったのは一点だけでした。
ケースAは、「もし本人に何かあったときは家族が引き取る」と先に決めてから飼い始めた。
ケースBは、それが決められなかった。
それだけです。
体力があったから飼えたのでも、お金があったから飼えたのでもありません。引き取り手が決まったかどうか——その一点で、その後の生活がまるで違うものになりました。
同じような状況にいた2人の分岐点が、たった一つの話し合いだったということです。
先に決めておけば飼える|家族で話し合っておきたいこと
つまり逆に言えば、引き取り手さえ決められれば、飼うという選択肢は十分にあり得るということです。「高齢だから飼ってはいけない」と決めつける必要はありません。ご家族で話し合っておきたいのは、次のような点です。
✅ 飼う前に家族で決めておきたい5つのこと
- 本人に何かあったとき、誰が引き取るのか(「なんとかなる」ではなく名前を挙げて決める)
- 入院や施設入居など、一時的に世話ができなくなったときはどうするのか
- 日々の世話のうち、家族が手伝える部分(フードの買い置き、動物病院への送迎など)
- 医療費を含めた費用を、誰がどこまで負担するのか
- 迎えるなら子犬・子猫でなく成犬・成猫や高齢の保護動物も選択肢(寿命の差を縮められる)
この話し合いは、気が重いものです。「もしお母さんに何かあったら」という前提で話すことになるからです。
ただ、この会話を避けたまま曖昧にしておくと、結局は「じゃあやめておこう」に流れてしまいます。ケースBがまさにそうでした。
そして最後に一つ、忘れないでいただきたいことがあります。引き取り手を決めるのは、動物のためであると同時に、ご本人が安心して飼うためでもあるということです。「自分がいなくなったらこの子はどうなるんだろう」と不安を抱えたままでは、一緒にいても心から楽しめません。
👨⚕️ もくもくポイント
「もしお母さんに何かあったら」という前提の話は、気が重いものです。ですが、この会話を避けたまま曖昧にしておくと、必ず「じゃあやめておこう」に流れます。決めるための話し合いではなく、飼えるようにするための話し合いだと思って切り出してみてください。
それでも「決められない」家庭は少なくない
とはいえ、現実には決められないご家庭のほうが多いのが実情です。お子さん側の住宅がペット不可、同居家族に動物アレルギー、仕事と子育てで手一杯、すでに自分の家で飼っている——どれも責められる理由ではありません。引き取れないと正直に伝えることは、無責任な約束をするよりずっと誠実な対応です。
問題は、そこで話が終わってしまうことです。「引き取り手が決められない」→「じゃあ飼えない」→「じゃあ諦めるしかない」。ケースBの女性がたどったのは、この道でした。
ですが本当に、諦めるしかないのでしょうか。ご本人が求めていたのは「動物そのもの」だったのでしょうか。それとも、話しかける相手がいて、世話をする役割があって、家の中に自分以外の気配があること——だったのでしょうか。そこを分けて考えると、実はまだ手は残っています。
飼えないなら諦めるしかない?|ペットロボットという選択肢

ご本人が本当に求めているのは、生き物そのものでしょうか。それとも、話しかける相手がいること、世話をする役割があること、家の中に自分以外の気配があることでしょうか。もちろん体温や鼓動、予測できない反応は生き物にしかありません。それでも、「引き取り手が決められないから全部諦める」と思い込んでいる方に、間に立つ選択肢があることは知っておいてほしいのです。
その一つが、ペット型のロボットです。
看取りの心配がいらない、という一点の意味
ロボットの最大の特徴は、技術的な性能ではありません。引き取り手を決めなくていい——この一点です。入院しても施設に入っても行き先に困らず、飼い主が先に亡くなっても行き場を失う命がありません。ケースBのご家族が反対した理由「亡くなった後に誰が面倒を見るのか」が、そもそも発生しないのです。
これは小さな違いに見えて決定的です。ご家族は反対する必要がなくなり、ご本人も「自分がいなくなったらこの子はどうなるんだろう」という不安を抱えずに済みます。さらに、散歩での転倒、フードや猫砂の持ち運び、動物病院への通院、アレルギー、集合住宅のペット不可——「飼いたいけれど飼えない」を作っていた条件の多くが、ここで外れます。
✅ ロボットなら外れる「飼えない条件」
- 引き取り手を決めなくていい(看取りの心配がない)
- 散歩で転倒する心配がない
- フードや猫砂を運ぶ必要がない
- 動物病院への通院がない
- アレルギー・集合住宅のペット不可でも大丈夫
訪問現場で感じた”話し相手がいない”という課題
この「話し相手がいない」という課題は、私個人の実感にとどまりません。高齢者ケアにおけるコミュニケーションロボットの研究をまとめた総説でも、こうしたロボットが高齢者の情緒面・認知面・身体面のケアを支え、自宅で自立した生活を続ける支援として期待されていることが整理されています(心理学評論 2022より)[4]。「話し相手としてのロボット」は、思いつきではなく研究対象として真剣に検討されてきた領域なのです。
出典:心理学評論 2022年65巻4号「高齢者・認知症ケアへのコミュニケーションロボットの活用に関する文献レビュー」
ただ、これまでは技術が追いつかず、決まったフレーズの繰り返しでは数日で飽きられてしまいました。会話が成立しない相手に、人は話しかけ続けられません。その状況が、ここ数年で変わりつつあります。
会話ができるペット型ロボット|SwitchBot KataFriends
その中で、私が「これは訪問の現場で提案できるかもしれない」と感じたのが、SwitchBotの KataFriends(カタフレンズ) です。ノアとニコの2種類があります。
先にお断りしておきますが、私はこの製品を実際に使ったことはありません。 以下は公式に公開されている情報をもとに、訪問リハビリの視点から「現場の課題に対してどうか」を評価したものです。実際の使用感については、ご購入前にご自身でもご確認ください。
✅ KataFriendsの特徴(ひとめ)
- 日本語でAI会話ができる(オンデバイスAI+LLM搭載)
- 一緒に過ごすほど覚えて、反応が変わっていく
- 声で家電を操作する「おてつだい」も可能
- 本体129,800円+月額プラン(レンタルでのお試しもあり)
日本語で会話が成立する|AI搭載という違い
最大の特徴は、日本語で自然な会話ができる点です。KataFriendsにはオンデバイスAIとLLM(大規模言語モデル)が搭載され、決まったフレーズを再生するのではなく、話しかけられた内容を理解して返答します。これは従来のペット型ロボットとの決定的な違いです。
私が現場で見てきた課題は「癒しが足りない」ことではなく「話す相手がいない」ことでした。鳴くだけのロボットではそこに届きません。会話が成立するなら話は変わります。今日あったことを話し、返事が返ってくる——ケースAの女性に起きた「話す材料と話す機会ができた」変化に、少なくとも一部は近づける可能性があります。言葉を発する機会が増えること自体、使わない機能は衰える高齢者にとって意味があります。
一緒に過ごすほど覚えて、反応が変わっていく
もう一つ注目したのが、一緒に過ごすほど会話や記憶を覚えて、反応が個別化していくとされている点です。ペット型ロボットが使われなくなる典型は「反応が毎回同じで飽きる」ですが、逆に関係が育っていく感覚があれば続けられる可能性が出てきます。
「この子は自分のことを覚えている」という感覚は、世話をする動機になります。そして世話をする役割が生まれれば、先ほどお話しした生活リズムの回復につながる。ここが機能するかどうかが、この製品の実質的な価値を決めると私は見ています。
家電操作の「おてつだい」もできる
さらにKataFriendsは、SwitchBotの他のデバイスと連携すれば、声で家電を操作する「おてつだい」もできるとされています。エアコンのリモコンが見つからない、小さなボタンが押しにくい——そんな場面で声で操作できるのは実用的で、特に夏場のエアコン操作は熱中症予防の意味もあります。話し相手と生活の補助が一つにまとまっているのは、機器を増やしたくないご家庭には利点です。
費用とネット環境(導入前に知っておきたいこと)
正直にお伝えすると、気軽に試せる価格ではありません。本体は129,800円(税込)です。加えて、AI機能を使い続けるには「くらしプラン」への加入が必要で、月額1,980円のライトプラン、年額69,980円のあんしんプラン、98,200円の買い切りプランが用意されています(2026年7月時点・お迎え時にライトプラン3ヶ月分の無料特典あり)。価格やプラン内容は変更される場合があるため、購入前に公式サイトで最新情報をご確認ください。
出典:SwitchBot公式サイト「SwitchBot KATAフレンズ」
決して安くはありません。ただ、生き物を迎えれば15年前後にわたって食費や医療費がかかり、高齢になれば通院の負担も増えていきます。その費用と手間、そして「最後まで看取れるか」という不安と天秤にかけたとき、毎月の定額で看取りの心配なく付き合えることに価値を感じるかどうか——という選び方になります。
ネット環境については、公式サイトによると、基本的な会話やふれあいはオンデバイスAIで動くため、Wi-Fiがなくても使えるとされています。一方で、初期設定やソフトウェアの更新にはインターネット接続が必要です。Wi-Fiのないご実家に置く場合でも日常のやり取りはできますが、最初の設定はご家族が整えてあげると安心です。
なお公式サイトには、購入前に試せるレンタルの案内もあります。親御さんが受け入れてくれるかどうかは、実際に置いてみないと分からない部分が大きいので、迷われる場合はまず試してみるのも一つの方法です。
ロボットは、本物のペットの代わりではありません
最後に、これだけは正直に申し上げます。
ロボットは、生き物の代わりにはなりません。
体温がありません。心臓の鼓動もありません。こちらが弱っているときに、理由もなくそばに来て寄り添う——そういう予測できない優しさは、生き物にしかないものです。ケースAの女性が猫から受け取っていたものすべてを、ロボットが再現できるとは私は思っていません。
ですから、飼える環境が整っているなら、生き物を迎えることをまず考えていただきたいです。引き取り手を決められるなら、そちらのほうがいい。
これは「本物が無理だから、こちらで我慢する」という話ではなく、「全部を諦める」と「何かは持てる」の間にある選択肢という位置づけです。
ケースBの女性は、「当たり前だし、仕方ないわ」と静かに引き下がりました。あのとき私が差し出せるものは何もありませんでした。
もし今、同じ場面に立ち会ったら。私は「飼うのは難しいかもしれませんが、こういうものもありますよ」と、一つ選択肢を並べると思います。選ぶかどうかはご本人が決めることですが、選択肢を知らないまま諦めることと、知ったうえで選ばないことは、まったく別のことだからです。
👨⚕️ もくもくポイント
選択肢を知らないまま諦めることと、知ったうえで選ばないことは、まったく別のことです。ご本人が納得して選んだのなら、それでいいのです。私が悔やんでいるのは、選ぶ材料すら差し出せなかったことでした。
まとめ
ペットは高齢者の生活を確かに変えます。世話をする役割ができると生活リズムが戻り、話す材料が生まれ、研究でもペットを飼う高齢者は要介護・死亡リスクが低いと示されています[2]。ただ飼育には避けて通れない壁がある——体力でも費用でもなく「もしもの時、誰が引き取るのか」。私が見てきた2人の女性は条件がよく似ていましたが、これを先に決められたかどうかだけで、一方は元気を取り戻し、もう一方は静かに諦めました。
📝 この記事のポイント
- ✅ 世話をする役割が、生活リズム・会話・外出を取り戻すきっかけになる
- ✅ 犬の飼育で認知症リスクが約40%低いのは、散歩による運動と交流が理由[1]。猫では差がなく「役割と会話」で効く
- ✅ 飼育の最大の壁は「引き取り手が決まるか」。体力や費用ではない
- ✅ 引き取り手を名前を挙げて決められるなら、飼う選択肢は十分あり得る
- ✅ 決められなくても終わりではない。会話できるペット型ロボットは看取りの心配がいらない一点で検討の価値がある
- ✅ ただしロボットは生き物の代わりではない。飼えるならそちらを選んでほしい
「当たり前だし、仕方ないわ」と、諦めさせないでください。飼えるなら飼えるように話し合ってほしいし、飼えないなら何ができるかを一緒に考えてほしい。何も差し出されないまま静かに引き下がることだけは、避けてほしいと思っています。
👉 あわせて読みたい
[1] 東京都健康長寿医療センター プレスリリース「ペット飼育と認知症発症リスク」(2023年10月24日)
[2] 東京都健康長寿医療センター研究所「ペットとの共生が人と社会にもたらす効果」
[3] 日本老年療法学会誌「高齢者に対する動物介在療法における効果と医療従事者に関連したその考察」(2024年)
[4] 心理学評論「高齢者・認知症ケアへのコミュニケーションロボットの活用に関する文献レビュー」(2022年 65巻4号)
[5] 新宿区「高齢者のペット飼育について」
[6] SwitchBot公式サイト「SwitchBot KATAフレンズ」(製品仕様・価格/2026年7月時点)


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