📋 この記事でわかること
- ✔ 歩行器と杖・シルバーカーの違い(間違えると転倒リスク)
- ✔ 親に歩行器が必要なサインと、選び方5つのポイント
- ✔ 介護保険レンタルの使い方(要支援・要介護1からOK/月数百円)
- ✔ 「使うと歩けなくなる?」という不安へのPTの答え

最近、母が家の中でよくふらつくんです。杖は使っているけど、伝い歩きも危なっかしくて…。でも車椅子はまだ早い気がして、どうしたらいいのか。

その”杖と車椅子のあいだ”で迷う時期、いちばんご家族が悩むところなんです。そこにちょうどはまるのが『歩行器』。今日は選び方を、現場の失敗例も交えてお話ししますね。
訪問リハビリの現場で12年、これまで1万件以上のお宅にうかがってきました。そのなかで「もう少し早く歩行器を入れていれば、あの転倒は防げたかもしれない」と感じた場面が、一度や二度ではありません。
歩行器は、正しく選んで正しく使えば、親御さんの「まだ自分の足で歩きたい」という気持ちを支えてくれる道具です。ところが実際には、種類の違いがわからないまま何となく選んでしまったり、そもそもシルバーカーと混同していたり、高さが合わないまま使い続けて別のトラブルを招いていたりするケースが本当に多い。
この記事では、屋内で使う歩行器にしぼって、選び方の勘どころを現場の視点からお伝えします。親御さんに合った一台を選ぶための判断材料として、読んでいただければと思います。
なお、ひとくちに歩行器といっても、家の中で使うか、外への散歩や買い物で使うかで、選ぶべきタイプは変わってきます。屋外での使用が中心になると、段差や坂道に対応できる四輪の歩行車などが候補になり、選び方の考え方も少し変わってきます。この記事では、まず家の中での使用にしぼってお話しします(屋外での使用については、別の記事で詳しくお伝えします)。
そもそも歩行器とは?杖・歩行車・シルバーカーとの違い

「歩行器」と一口に言っても、似たような道具がいくつもあって、ご家族が混乱するのは当然です。まずはここを整理しておきましょう。
歩行器とは、両手で支えながら歩くための福祉用具です。杖よりも広い面で体を支えられるので、「杖だと不安定だけど、まだ自分の足で歩ける」という方にちょうど合います。
ここで多くのご家族がつまずくのが、シルバーカーとの混同です。見た目が似ているので無理もないのですが、この二つは目的からして別物です。
杖・歩行器・車椅子は「支える力」の一直線/シルバーカーだけ別グループ
シルバーカーだけは“歩行を支える”仲間ではありません
上の図を見てください。杖から車椅子まで、体を支える力が少しずつ強くなっていく並びのなかで、シルバーカーだけが系列から外れています。
これが決定的なポイントです。シルバーカーは、自分の足でしっかり歩ける人が、荷物を運んだり途中で腰かけて休んだりするための道具です。買い物カートに近い位置づけで、体重を預けて歩くようには作られていません。
一方、歩行器は歩行そのものを支える福祉用具です。体重をかけながら歩くことを前提に設計されています。ふらつきや伝い歩きが心配な親御さんに必要なのは、シルバーカーではなく歩行器のほうです。ここを取り違えると、支えが足りずにかえって転倒リスクを高めてしまうことがあります。
✅ 歩行器(福祉用具)
歩行そのものを支える。体重をかけて歩ける設計。ふらつき・伝い歩きが心配な人向け。介護保険のレンタル対象。
⚠️ シルバーカー(買い物カート)
歩ける人の荷物運び・休憩用。体重を預ける設計ではない。支えが必要な人が使うと転倒リスク。介護保険は対象外。
なお、「歩行器」と「歩行車」という言葉の違いも、あとで介護保険の話に関わってきます。ざっくり言うと、脚の先がゴムで固定されているタイプが「歩行器」、車輪やキャスターが付いて前に押して進むタイプが「歩行車」です。この区別は種類のところで詳しく説明します。
👨⚕️ もくもくポイント
ふらつきや伝い歩きが心配な親御さんに必要なのは、シルバーカーではなく歩行器です。見た目が似ていても、シルバーカーは歩ける人の買い物カート、歩行器は歩行そのものを支える福祉用具と、目的からして別物だと覚えておいてください。
親に歩行器が必要なサイン

杖で歩けているうちは、ご家族から見れば「まだ大丈夫」と思えるものです。でも現場にいると、「杖で歩けている」ことと「安全に歩けている」ことは別だと痛感します。
いちばん見てほしいのが、足の運び方です。
「普通の床でつまずく」は見逃せないサイン
段差や敷居につまずくのは、まだわかります。問題は、何もない平らな床でつま先が引っかかるようになってきたときです。
これは、つま先を持ち上げる力が落ちてきているサインです。すり足の改善にはつま先を上げる筋肉(前脛骨筋)の働きが欠かせないことがわかっていて、歩行機能の改善はつまずき防止、ひいては転倒予防につながるとされています。
つまり「普通の床でのつまずき」は、足が上がらなくなってきた体からのサインなのです。
📝 訪問現場より
以前うかがっていた方に、まさにこのケースがありました。杖を使って歩けてはいるのですが、平らな床でもつま先が引っかかるようになってきていた。ご本人もご家族も「杖で歩けているから」と、それほど深刻には捉えていませんでした。
ただ、その方はかなり痩せておられました。私が気になったのはそこです。痩せていて筋肉やクッションになる脂肪が少ない方は、一度転倒すると骨折につながりやすい。そして高齢の方の骨折は、そのまま寝たきりや要介護状態への入り口になりかねません。実際、転倒は大腿骨近位部骨折の主な原因であり、要介護になる主要な原因の一つとされています。
だから私は、「まだ杖で歩けているか」ではなく、「もし転んだら、この方はどれだけのダメージを負うか」から逆算して考えました。この方の場合、一度の転倒が人生を大きく変えてしまう危険がある。それなら、転ぶ前に歩行器を入れておくべきだと判断しました。
ご本人にもそのことを正直にお伝えして、歩行器を導入しました。
「転んでから」では遅い
歩行器を勧めると、「まだそこまでじゃない」と抵抗を感じるご家族は少なくありません。その気持ちはよくわかります。
でも私がいつもお伝えするのは、歩行器は「歩けなくなった人の道具」ではなく「転ばせないための道具」だということです。特に痩せている方、骨が弱くなっている方は、一度の転倒のダメージが大きい。だからこそ、まだ歩けている今のうちに備える意味があります。
親御さんの歩き方を見て、「普通の床でつまずくようになった」「なんだか足が上がっていない」と感じたら、それは歩行器を検討するタイミングかもしれません。
👨⚕️ もくもくポイント
歩行器は「歩けなくなった人の道具」ではなく「転ばせないための道具」です。特に痩せている方は一度の転倒のダメージが大きいので、まだ歩けている今のうちに、転んだときのダメージから逆算して備えておくことが大切です。
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屋内用歩行器の種類(固定型・交互型・キャスター型)

屋内で使う歩行器は、大きく3つのタイプに分けられます。それぞれ支える力と動かし方が違うので、親御さんの状態に合わせて選ぶことになります。
📊 屋内用歩行器 3タイプ早わかり
固定型
持ち上げて前に置く。支える力は最強。腕の力とバランスが必要。
交互型
左右を交互に送り出す。持ち上げ不要。自然な歩行リズムを保ちやすい。
キャスター型
前輪付きで押して進む。軽い力で動く。止まる時のブレーキに注意。
固定型歩行器
フレーム全体が一体になっていて、持ち上げて前に置き、そこへ歩み寄る、という使い方をするタイプです。
いったん床に置けばがっちり安定するので、支える力はいちばん強い部類です。一方で、一歩ごとに両手で持ち上げる必要があるため、腕の力がある程度残っていることと、立ち止まってバランスを保てることが前提になります。
しっかり支えてほしいけれど、持ち上げる動作は問題なくできる、という方に向いています。
交互型歩行器
フレームの左右が交互に動くタイプです。右、左、と歩くリズムに合わせてフレームを送り出しながら進めるので、持ち上げなくても前に進めます。
固定型ほど強くは支えませんが、歩くリズムを保ちやすく、自然な歩行に近い動きができます。持ち上げる力が弱くなってきた方や、歩行のリズムを崩したくない方に向いています。
キャスター型(前輪付き)
前の2脚に車輪(キャスター)が付いていて、持ち上げずに押して進めるタイプです。屋内用では前輪だけ車輪で後ろは固定、という組み合わせがよく使われます。
いちばん軽い力で動かせるので、腕の力が弱い方や、連続して歩きたい方に向いています。ただし、押せば進んでしまうぶん、止まる場面でのブレーキ操作や、止まったときの安定性に注意が必要です。
⚠️ キャスター型は「止まるとき」に注意
軽く動く反面、押せば進んでしまいます。あわてたときや下り勾配で前へ行きすぎないよう、ブレーキを確実に操作できるかを必ず確認してください。
「歩行器」と「歩行車」は制度上まったく別の扱い
ここで、介護保険の話に関わる大事な区別をお伝えしておきます。
じつは制度の上では、この3タイプは「歩行器」と「歩行車」という別の名前に振り分けられています。
脚の先がすべてゴムで固定されているタイプ、つまり固定型と交互型は、制度上「歩行器」と呼ばれます。一方、車輪やキャスターが付いているキャスター型は「歩行車」に分類されます。
なぜこの区別が大事かというと、あとで説明する2024年の制度改正で「レンタルか購入かを選べる」ようになったのは「歩行器」だけで、「歩行車」はレンタルのみだからです。名前が似ているので混同しがちですが、この違いはレンタルの選択肢に直結します。
いまの段階では、「車輪の有無で制度上の呼び名が変わり、それが借り方にも関わってくる」とだけ覚えておいてください。詳しくは介護保険のところで説明します。
屋内用歩行器の選び方 5つのポイント

種類がわかったところで、実際に選ぶときにどこを見ればいいか。現場で「ここは外せない」と感じる5つをお伝えします。
✅ 屋内用歩行器 選び方5つのポイント
- ①住環境に合うか(廊下幅・床・動線)
- ②高さ調整ができるか(必須条件)
- ③小回りがきくか
- ④重さ(本人が扱えるか)
- ⑤ブレーキの有無と操作しやすさ
ポイント1 住環境に合うか(廊下幅・床・動線)
まず、家の中で本当に使えるかどうかです。
歩行器はある程度の幅があるので、廊下や部屋の出入り口を通れるか、方向転換するスペースがあるかを確認します。日本の住宅は廊下が狭かったり、敷居の段差があったりすることが多いので、カタログの寸法だけで決めず、実際に置いて動かしてみることが大切です。
床材も見ておきたいところです。畳やカーペットの上ではキャスター型は動かしにくく、逆にフローリングでは滑りやすさに注意が必要になります。
ポイント2 高さ調整ができるか(これは必須条件)
5つのなかで、私がいちばん強調したいのがこれです。ハンドルの高さが体に合っているかどうかは、歩きやすさと体への負担を大きく左右します。
高さが合っていないと、どうなるか。実際の例をお話しします。
📝 訪問現場より
ある方が、高さ調整のできないタイプの歩行補助具を使っておられました。ご本人の体格に対してハンドルが低く、歩くときにかなり前かがみの姿勢になってしまっていたのです。
前傾姿勢は、腰にとってかなりの負担になります。前かがみの姿勢では、腰の椎間板にかかる圧力が普通に立っているときより大きく上がることがわかっています。健康な人の体内で椎間板の内圧を実際に計測した研究では、まっすぐ立っているときを基準にすると、立って前かがみになった姿勢では内圧が2倍以上に高まると報告されています(Wilkeら, 1999)。この方に出ていた腰の痛みも、おそらくこの前傾姿勢が一因だったのではないかと考えました。
そこで、高さをきちんと調整できる歩行器に変えてもらいました。ハンドルを体に合った高さにしたところ、前かがみが解消され、ご本人も「全然歩きやすい」と。腰の痛みもやわらいでいきました。
このケースが示しているのは、高さ調整ができることは”あれば便利”ではなく、選ぶうえでの必須条件だということです。同じ歩行器でも、高さが合っているかどうかで、歩きやすさも体への負担もまるで変わります。ハンドルの高さは、おおむね腕を自然に下ろして手首のあたりにくるのが目安です。
👨⚕️ もくもくポイント
高さ調整ができることは、あれば便利な機能ではなく、選ぶうえでの必須条件です。ハンドルの高さが合わないと前傾姿勢になり、腰への負担から別のトラブルを招くことがあります。おおむね腕を自然に下ろして手首のあたりにくる高さが目安です。
ポイント3 小回りがきくか
屋内では、狭い場所での方向転換が何度も出てきます。トイレ、洗面所、キッチンなど、限られたスペースで向きを変える場面が多いほど、小回りのよさが効いてきます。
大きくて安定している機種ほど小回りは苦手になりがちなので、安定性と小回りのバランスを、実際の生活動線と照らし合わせて選びます。
ポイント4 重さ(本人が扱えるか)
固定型のように持ち上げて使うタイプでは、本体の重さがそのまま負担になります。軽すぎると安定性が下がりますが、重すぎると持ち上げられません。
親御さん自身が無理なく扱える重さかどうか、これも実際に触って確かめたいポイントです。
ポイント5 ブレーキの有無と操作しやすさ
キャスター型や歩行車では、ブレーキがあるか、そしてそれを親御さんが確実に操作できるかが安全に直結します。
握力が弱くなっていると、いざというときにブレーキを握りきれないことがあります。ブレーキの形や固さが本人の手に合っているかまで見ておくと安心です。
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歩行器は介護保険でレンタルできる(購入との使い分け)

歩行器は、基本的に「買う」より「借りる」で考えるのがおすすめです。その理由も含めて説明します。
歩行器は介護保険のレンタル対象
歩行器は、介護保険の福祉用具貸与の対象品目に入っています。要介護認定を受けていれば、自己負担1〜3割でレンタルできます。
具体的な金額は機種によって変わりますが、1割負担の方なら月数百円程度が目安です。数百円で借りられると知って、驚かれるご家族も少なくありません。
ここで、ご家族に知っておいてほしいことがあります。福祉用具のなかには「要介護2以上でないと原則借りられない」ものが多いのですが、歩行器はそうではありません。手すり・スロープ・歩行補助つえと並んで、要支援・要介護1の軽い段階からでも給付の対象になります。
「うちの親はまだ介護度が低いから、借りられないだろう」と思い込んでいるご家族は多いのですが、歩行器に関してはその心配は要りません。むしろ、軽いうちから使って転倒を防ぐことにこそ意味があります。
👨⚕️ もくもくポイント
歩行器は要支援・要介護1の軽い段階からでも介護保険のレンタル対象です。「うちの親はまだ介護度が低いから」とあきらめず、まずはケアマネジャーに相談してみてください。軽いうちから使って転倒を防ぐことにこそ意味があります。
なぜ購入よりレンタルがおすすめなのか
歩行器をレンタルで勧める理由は、体の状態が変わっていくからです。
いま固定型が合っていても、半年後には交互型のほうがよくなるかもしれない。逆に、状態が改善して歩行器を卒業できることもあります。レンタルなら、そのときどきの状態に合わせて機種を変えたり、返却したりが柔軟にできます。
買ってしまうと、合わなくなっても使い続けることになりがちです。だからこそ、まずはレンタルで様子を見るのが理にかなっています。
2024年から「レンタルか購入か」を選べるようになった(ただし歩行器だけ)
ここで、種類のところで触れた「歩行器」と「歩行車」の区別が効いてきます。
2024年(令和6年)4月から、歩行器はレンタルと購入のどちらかを選べる「選択制」の対象になりました。長く使うことがはっきりしている場合は、購入を選ぶ道もできたということです。
ただし、この選択制の対象になるのは、脚がゴムで固定された「歩行器」(固定型・交互型)だけです。車輪の付いた「歩行車」(キャスター型)は対象外で、これまで通りレンタルのみになります。
とはいえ、先ほどお話ししたとおり、高齢の親御さんの状態は変わりやすいものです。「長く同じ機種を使い続けられるか」がはっきりしないうちは、基本はレンタルから始めるのが安心だと私は考えています。購入するかどうかは、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員とよく相談して決めてください。
まずはケアマネジャーに相談を
歩行器を検討し始めたら、最初の窓口は担当のケアマネジャーです。まだ要介護認定を受けていない場合は、お住まいの地域包括支援センターに相談するところからスタートになります。
まだの場合。地域包括支援センターが窓口
「歩行器を使いたい」と伝える
住環境や体の状態を見て機種を提案
使ってみて合うものを選定
この記事でお伝えした選び方のポイントを頭に入れておくと、相談がぐっとスムーズになるはずです。
「歩行器を使うと歩けなくなる」って本当?

歩行器を勧めると、必ずと言っていいほど返ってくる不安があります。「歩行器に頼ると、かえって足が弱って歩けなくなるのでは?」というものです。
この不安に、現場の視点でお答えします。
むしろ「歩ける範囲」を守るための道具
結論から言うと、適切に使えば、歩行器は歩く力を奪うものではなく、歩ける状態を守るための道具です。
考えてみてください。ふらついて怖いと感じている方は、どうなるか。転ぶのが怖くて、だんだん動かなくなっていきます。動かなくなれば、そのぶん足の筋力は落ちていく。この「怖くて動かない→さらに弱る」という悪循環こそ、本当に歩けなくなる大きな原因です。
歩行器で「支えられて安心して歩ける」状態をつくると、この悪循環を断てます。怖さがやわらいで動く量が保たれれば、足を使い続けられる。結果として、歩ける状態が長持ちするのです。
📝 訪問現場より
一度外で転んでしまってから——骨折こそしなかったものの——すっかり外出に消極的になってしまった方がいました。「また転んだら」という怖さから、だんだん出かけなくなっていました。
そこで歩行器を導入したところ、ご主人と一緒に散歩をするのが習慣になりました。支えがあるという安心感が、止まっていた足をもう一度動かすきっかけになったのです。歩く習慣が戻ったことで、体の機能も大きく保つことができました。まさに、歩行器が「歩ける状態」を守ってくれた一例です。
ただし、こうした良い効果を得るには、使い方に一つだけ気をつけたいことがあります。
「頼りきり」にしないことが大事
もちろん、注意点もあります。歩行器に全体重を預けて、ぶら下がるように歩くのは望ましくありません。それでは自分の足を使う機会が減ってしまいます。
大切なのは、あくまで「支えとして使う」こと。自分の足で歩くのが基本で、歩行器はふらついたときに支えてくれる保険、というくらいの位置づけが理想です。
このさじ加減は、ケアマネジャーを通してリハビリの専門職に相談すると、その方に合った使い方をアドバイスしてもらえます。導入して終わりではなく、使い方まで見てもらえると安心です。
大事なのは「転ばずに動き続けられる」こと
高齢の方にとって、いちばん避けたいのは転倒による骨折です。一度大きく転んでしまうと、そこから寝たきりや要介護へと一気に進んでしまうことがあります。
歩行器を使ってでも転ばずに動き続けられるなら、そのほうがずっと足のためになります。「歩行器を使うと歩けなくなる」のではなく、「転んで動けなくなるのを防ぐために歩行器を使う」。この順番で考えていただけたらと思います。
まとめ
屋内用の歩行器について、選び方を現場の視点からお伝えしてきました。最後に要点を振り返ります。
📝 まとめ
- ✅ 歩行器は「杖では不安、車椅子はまだ早い」時期を支える福祉用具。シルバーカーとは別物
- ✅ 平らな床でつま先が引っかかる=歩行器を検討するサイン。転ぶ前に備える
- ✅ 種類は固定型・交互型・キャスター型。選び方は住環境・高さ調整・小回り・重さ・ブレーキの5つ
- ✅ 介護保険でレンタル可。要支援・要介護1から対象。まずはケアマネジャーに相談
- ✅ 「使うと歩けなくなる」は誤解。むしろ歩ける状態を長持ちさせる道具
歩行器は、杖では不安だけれど車椅子はまだ早い、という「あいだ」の時期を支える福祉用具です。見た目の似たシルバーカーは、自分の足で歩ける人の買い物・休憩用の道具であって、支えが必要な親御さんには向きません。ここを取り違えないことが出発点です。
親御さんに歩行器を検討するサインは、足の運び方に表れます。段差ではなく、何もない平らな床でつま先が引っかかるようになってきたら、それは足が上がらなくなってきたサインです。特に痩せている方、骨が弱くなっている方は、一度の転倒のダメージが大きいので、「転んでから」ではなく「転ぶ前」に備える意味があります。
選ぶときは、住環境に合うか、高さ調整ができるか、小回りがきくか、重さは扱えるか、ブレーキは操作しやすいか。この5つを見てください。なかでも高さ調整ができることは、あれば便利ではなく必須条件です。ハンドルの高さが合わないと、前傾姿勢から腰痛など別のトラブルを招くことがあります。
歩行器は介護保険でレンタルできます。要支援・要介護1の軽い段階からでも対象になるので、「介護度が低いから無理」と思い込まず、まずは相談してみてください。体の状態は変わりやすいので、基本はレンタルから始めるのが安心です。
そして、「歩行器を使うと歩けなくなる」という心配は要りません。むしろ、怖くて動かなくなる悪循環を防ぎ、歩ける状態を長持ちさせるための道具です。
親御さんの歩き方に不安を感じたら、まずは担当のケアマネジャーに相談してみてください。この記事が、親御さんに合った一台を選ぶ手がかりになればうれしいです。
・日本転倒予防学会誌『高齢者の転倒予防の現状と課題』
・日本老年医学会雑誌 第52回学術集会記録
・Wilke HJ, et al. New in vivo measurements of pressures in the intervertebral disc in daily life. Spine. 1999.
・厚生労働省「福祉用具・住宅改修」


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