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📋 この記事でわかること
- ✔ 認知症と診断された直後に家族がまずやるべきこと
- ✔ ケアマネジャー探しと介護保険申請の流れ
- ✔ 本人への告知をどう考えればいいか
- ✔ 在宅か施設か、話し合うべきタイミングと対象
- ✔ 遠距離家族でもできる具体的なサポート方法
認知症と診断されたとき、家族が感じる混乱は自然なことです


まさか、うちの親が認知症なんて…。これからどうすればいいのか、何も頭に入ってこなくて。

その気持ち、当然です。診断の瞬間に頭が真っ白になるのはごく自然なこと。まず何から動けばいいか、一緒に整理しましょう。
診断を受けた日、そう思った家族は少なくありません。受診を勧めるまでの間、どこかおかしいと感じながらも、心のどこかで「違うといいな」と思っていた。それでも診断名を告げられると、頭が真っ白になる。そんな家族を、私はこれまで何度も見てきました。
訪問リハビリ歴12年以上・12,000件超の経験を持つ理学療法士として、ご本人の状態を見ながら「一度受診されてみてはどうですか」とお伝えすることがよくあります。その時点で家族はある程度覚悟をしています。それでも、実際に「認知症です」と診断が出た後、前向きになれる家族にはほとんど出会ったことがありません。多くの場合、最初に口をついて出るのは「これからどうすればいいんでしょう」という言葉です。まだ「認知症かどうかわからない」という段階の方は、認知症の初期症状チェックリストもあわせてご参照ください。
覚悟していても「どう接すればいいか」がわからなくなる
診断が出るまでの間、家族はずっと不安を抱えています。公益財団法人 長寿科学振興財団の調査によると、家族が異変を感じてから診断に至るまでの期間(空白の期間)は平均1年1か月にのぼります。この間、家族は「受診させるべきか」「もし認知症だったら」と考え続けます。
📋 出典:長寿科学振興財団「第5章 認知症のケア 10.家族介護の視点から」加藤伸司
そして診断が出た後も、「どう声をかければいいか」「怒ってしまったらどうしよう」「介護なんて自分にできるのか」という新たな不安が押し寄せてきます。混乱するのは、それだけ真剣に向き合っている証拠です。
認知症は老化ではなく「病気」という視点が家族を楽にする
📝 訪問現場より
訪問先のあるご家族から、こんな言葉をもらったことがあります。「最初は何度も同じことを言うから怒鳴ってしまって、自分が嫌になった。
でも、病気だからできないんだってわかってから、少し楽になりました」。その言葉を聞いたとき、理解することそのものが介護を続ける力になるのだと実感しました。
認知症は老化の一部ではなく、脳の病気です。本人も望んでなっているわけではありません。厚生労働省の資料でも、記憶障害や判断力の低下といった「中核症状」は脳の機能障害によるものであり、本人の意思や努力でコントロールできるものではないと整理されています。
📋 出典:厚生労働省「認知症施策の総合的な推進について(参考資料)」
「病気だからできない」という理解が、家族の怒りや自己嫌悪を和らげる最初の一歩になります。
診断後にまずやること:ケアマネジャー探しと介護保険申請

診断が出たあと、多くの家族が「何から手をつければいいかわからない」という状態に陥ります。気持ちの整理もつかないまま、いきなり制度や手続きの話をされても頭に入らない——それが正直なところだと思います。
それでも、動き始めることで少しずつ見通しが立ってきます。まず優先してほしいのは、ケアマネジャー(介護支援専門員)を探すことと、介護保険の申請です。この2つが、その後のすべての土台になります。
介護保険申請の流れをざっくり把握しておく
介護保険の申請は、お住まいの市区町村の窓口(または地域包括支援センター)に申請書を提出するところから始まります。流れはざっくり以下の通りです。
申請から約30日が目安です。
申請してすぐにサービスが始まるわけではありません。認定が出るまでに時間がかかるため、診断が出たらできるだけ早く動くことが大切です。
アセスメントを受けて、必要なサービスを導入する
ケアマネジャーが決まると、まず「アセスメント」と呼ばれる生活状況の聞き取りが行われます。本人の身体状況、生活環境、家族の介護力、困っていることなど、現在の生活全体を把握するためのものです。
このアセスメントをもとに、その人に必要なサービスが組み立てられていきます。デイサービスや訪問介護、福祉用具の貸与など、使えるサービスは状態によってさまざまです。
ここで大切なのは、家族が「どこまで介護にかかわれるか」を正直に伝えることです。厚生労働省の手引きでも、家族支援のアセスメントにおいては「どの程度介護にかかわりたいか・かかわれるか」という視点が重要とされています。無理をして抱え込むより、使えるサービスをうまく活用することが、長く介護を続けるための鍵になります。
📋 出典:厚生労働省「認知症の本人と家族が共に生きることを支える専門職のための手引き」
👨⚕️ もくもくポイント
認知症と診断されたあと、家族に必要なのは「覚悟」よりも「動き出すこと」。ケアマネジャーへの相談が、すべての起点になります。
本人への伝え方——「告知すべきか」で悩む前に知っておくこと
診断が出たとき、家族が必ずといっていいほど悩むのが「本人に伝えるべきか」という問題です。「知ったらショックを受けるのでは」「伝えないほうが穏やかでいられるのでは」——そんな思いから、告知をためらう家族は多くいます。
ただ、訪問現場での経験から正直にお伝えすると、認知症と診断された方に告知をしても、その内容を理解・記憶できるケースはほとんどありません。
伝えても理解できないケースがほとんどである理由
認知症の中核症状には、記憶障害や理解・判断力の低下があります。厚生労働省の資料でも、これらは脳の機能障害によるものであり、本人の意思や努力でコントロールできるものではないと整理されています。
📋 出典:厚生労働省「認知症施策の総合的な推進について(参考資料)」
つまり、「あなたは認知症です」と伝えたとしても、その言葉の意味を理解し、記憶にとどめることが難しい状態にある方がほとんどです。逆に、理解できる方であれば、日常生活の中でまだ多くのことができている段階であることが多く、主治医との相談のもとで丁寧に伝えることが可能です。
「伝えるべきか」という問いに答えが出なくて当然です。それよりも大切なのは、次に紹介する「接し方」です。
本人を責めない・否定しない接し方の基本
認知症の方が同じことを何度も聞いてくる、つい昨日のことを覚えていない——そういった場面で、家族はどう接すればいいか迷います。
私の父も最初はそうでした。ずっとしっかりしていた祖母が「さっき言ったことを忘れる」「できていたことができない」という状況に、「なんでできないんだ」と声を荒げることがありました。長年の姿を知っているからこそ、受け入れるのが難しかったのだと思います。
そこで役立つのが、認知症の人の視点から症状を理解することです。なぜ同じことを繰り返すのか、なぜ財布を盗まれたと思うのか——その背景にある理由がわかると、接し方は変わります。私が父に紹介したのが『マンガでわかる!認知症の人が見ている世界』(川畑智・遠藤英俊 著/立書社)です。シリーズ全3冊あり、マンガ形式で読みやすく、家族への理解促進に実際に役立ちました。
基本的な接し方のポイントとしては、以下を意識してみてください。
✅ 認知症の方への接し方 基本のポイント
- 同じことを何度聞かれても、そのたびに初めて聞くように答える
- 「さっき言ったでしょ」と否定しない
- できないことを責めるのではなく、できることに目を向ける
- 穏やかなトーンで短い言葉で話す
認知症は本人が望んでなっているものではありません。その前提に立つだけで、家族の気持ちも少し楽になるはずです。
👨⚕️ もくもくポイント
「なんでできないの」と怒鳴ってしまった父に本を渡した日のことを今でも覚えています。認知症は病気だとわかると、家族の接し方は変わります。
在宅か施設か、早めに家族で話し合うべきケースとは
「いつかは施設に入れることになるのかな」——診断が出た直後から、そんな不安が頭をよぎる家族も少なくありません。ただ、在宅か施設かという答えは、その家族の状況によって大きく変わります。診断が出たからといって、すぐに施設を探さなければならないわけではありません。
大切なのは、早い段階から家族で「方向性をすり合わせておくこと」です。
キーパーソン不在・独居・高齢者のみ世帯は要注意
訪問現場で「もっと早く話し合っておけばよかった」と後悔する家族を多く見てきました。特に注意が必要なのは以下のようなケースです。
⚠️ 特に早めの話し合いが必要なケース
- 近くにキーパーソン(主に介護を担う人)がいない
- 本人が独居
- 高齢者のみの世帯(老老介護)
このような状況では、何か急変があったときに対応できる人がそもそもいません。離れて暮らす息子・娘がいる場合は、早めに「誰がどこまで関われるか」を話し合っておくことが重要です。
また、公益財団法人 長寿科学振興財団の調査によると、介護・看護を理由に離職した人は年間約10万人にのぼり、そのうち75%がその後も再就職できていないとされています。介護離職は家族全体の生活に長期的な影響を与えます。在宅介護をどこまで続けられるかを、早い段階で現実的に考えておくことが家族全員を守ることにつながります。
📋 出典:長寿科学振興財団「第5章 認知症のケア 1.家族の立場から 家族支援を考える」
「決める」のではなく「方向性をすり合わせる」という考え方
「在宅か施設か」を今すぐ決める必要はありません。ただ、何も話し合わないまま時間が経つのが一番リスクが高いです。
まずは「もし在宅が難しくなったらどうするか」「誰が中心になって動くか」「施設に入る場合の費用はどう考えるか」といった大枠だけでも、家族間で共有しておきましょう。
ケアマネジャーに相談しながら進めるのが現実的です。「まだ早い」と思わず、診断直後から少しずつ話題にしておくことをおすすめします。
👨⚕️ もくもくポイント
「在宅か施設か」——この問いに正解はありません。ただ、何も話し合わないまま緊急事態を迎えると、選択肢がほぼなくなった状態で決断を迫られます。余裕があるうちに「うちの場合はどうするか」を少しずつ家族で共有しておくことが、本人と家族を守ることにつながります。
遠距離家族でもできること:連絡しやすい環境をつくる

「離れて暮らしているから、何もできない」と感じている家族は多いです。でも、遠距離だからこそできることがあります。それは、何かあったときに動ける体制を最初から整えておくことです。
最初に「何かあれば連絡してください」と伝えておく
私が訪問を開始するとき、離れて暮らす家族には必ずこう伝えるようにしています。
「何か変化があったとき、相談や電話をしていただいて構いません。遠慮なく連絡してください」
これは些細なことのように見えて、とても重要です。離れて暮らす家族は「こんなことで電話していいのかな」「大げさだと思われないか」と連絡をためらいがちです。その心理的なハードルを最初に取り除いておくことで、何か起きたときに素早く動ける体制ができます。
遠距離の家族自身も、近くにいる介護者やケアマネジャーに対して「何かあれば連絡してほしい」と一言伝えておくだけで、情報が入りやすくなります。
ケアマネジャーを含めた三角のコンタクト体制が支えになる
遠距離介護でうまくいっているケースに共通しているのが、本人・近くの介護者・遠距離家族・ケアマネジャーの間で連絡が取りやすい状態になっていることです。
特にケアマネジャーは、定期的に本人の状態を把握しているプロです。遠距離家族がケアマネジャーと直接連絡を取れる関係を作っておくと、「最近様子はどうですか」と確認できるルートができます。
定期的な電話も優先度が高いです。毎週でなくてもいい。月に数回、本人や近くで介護している家族に電話をするだけで、変化に気づくタイミングが格段に増えます。「元気そうだった」「なんか声のトーンが違った」——そういった小さなサインを拾えるのは、定期的に声を聞いているからこそです。
遠距離だからできないのではなく、遠距離だからこそ「つながり続ける仕組み」を意識的に作ることが大切です。
👨⚕️ もくもくポイント
遠距離家族に私が必ず伝えること——「何かあれば遠慮なく連絡してください」。そして逆に「こちらから気になることがあれば連絡してもいいですか?」とも確認しておく。この双方向の一言が、いざというときの対応速度を大きく変えます。
まとめ:診断後の混乱は、動き始めることで少しずつ落ち着いてくる
認知症と診断された直後、家族が混乱するのは当然のことです。それだけ真剣に向き合っている証拠でもあります。ただ、混乱したまま立ち止まっていると、使えるはずのサービスや支援にたどり着けないまま時間だけが過ぎていきます。
この記事でお伝えしたことをまとめます。
📝 まとめ
- ✅ 診断後の混乱は自然なこと。認知症は病気であり、本人も望んでなっているわけではない
- ✅ まずはケアマネジャー探しと介護保険申請を優先する
- ✅ 本人への告知は「伝えるべきか」より「どう接するか」に意識を向ける
- ✅ 在宅か施設かは今すぐ決めなくていい。ただし早めに家族で方向性をすり合わせておく
- ✅ 遠距離家族こそ「連絡しやすい体制」を最初から作っておくことが大切
認知症介護は長期戦です。一人で抱え込まず、ケアマネジャーや専門職をうまく頼りながら、少しずつ前に進んでいきましょう。また、認知症は予防の観点からも対策が可能です。認知症予防のためにできることも、ぜひあわせてご覧ください。
この記事が、診断直後で混乱しているご家族の「最初の一歩」になれば幸いです。
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・公益財団法人 長寿科学振興財団「第5章 認知症のケア 10.家族介護の視点から」加藤伸司
・厚生労働省「認知症施策の総合的な推進について(参考資料)」
・厚生労働省「認知症の本人と家族が共に生きることを支える専門職のための手引き」
・公益財団法人 長寿科学振興財団「第5章 認知症のケア 1.家族の立場から 家族支援を考える」
・国立社会保障・人口問題研究所「家族介護者の介護負担感は介護の種類によって変わるのか?」陳鳳明・若林緑


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