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📋 この記事でわかること
- ✔ 「とりあえず持たせた杖」がかえって転倒リスクを高めてしまう理由
- ✔ 失敗しない杖の選び方(長さ・種類・グリップの3チェック)
- ✔ 親が杖を嫌がるときの、家族のかかわり方

父の足取りが不安で、とりあえず家にあった杖を持たせたんです。でも、これって本当に合ってるのか…なんだか余計に前かがみで歩きにくそうで。

その心配、とても大事な気づきです。実は”合っていない杖”は、支えるどころか転倒の原因になることがあるんですよ。
「家族のために杖を用意したのに、なんだか歩きにくそう」——訪問リハビリの現場で12年、1万件以上のお宅にうかがってきましたが、こうしたケースは本当に多く見られます。実は、杖は”持たせれば安心”な道具ではありません。長さや種類が体に合っていないと、かえって前かがみになり、足が上がらず、転びやすくなってしまうのです。この記事では、訪問の現場でたくさんの「合わない杖」を見てきた理学療法士の視点から、ご家族が失敗しない杖の選び方を、やさしく解説していきます。
「とりあえず杖」が危ない理由|合っていない杖が転倒を招く

ご家族からよく聞くのが、「歩くのが不安そうだったので、とりあえず杖を持たせました」という声です。気づかってのことですから、その気持ちはとても大切です。ただ、訪問の現場でたくさんのお宅にうかがってきて感じるのは、杖の選び方や合わせ方まで知っているご家族は、ほとんどいないということ。その結果、体に合っていない杖をそのまま使い続けているケースが、本当に多く見られます。
「もらい物」「観光地の杖」…合っていない杖を使う人は本当に多い
訪問先でよく見かけるのが、亡くなったご家族の形見の杖、どこかでもらったお下がり、旅行先の観光地で買ったような長い木の杖を使っている方です。こうした「とりあえずの杖」は、たいてい高さが本人に合っていません。中には、そもそも高さ調整ができないタイプの杖を、無理に使い続けている方もいらっしゃいます。
杖は、本来その人の身長や歩き方に合わせて調整してこそ意味のある道具です。ところが実際には、一度手にした杖をそのまま使い続けてしまう方がとても多い。理学療法の学会発表でも、使い始めた時点の杖を、加齢による体の変化があっても調整しないまま使い続けているケースが少なくないと報告されています。「ずっとこれを使っているから」という杖が、今の体に合っているとは限らないのです。
出典:日本理学療法学術大会「杖の長さが歩行に与える影響」(第44回・2009年)
高さが合わない杖が姿勢を崩すしくみ
中でも特に気をつけたいのが、低すぎる杖です。一見すると、杖が短いほうが体重をかけやすく、安定しそうに思えます。しかし実際には逆で、低い杖を使うと自然と上半身が前に傾き、前かがみの姿勢になってしまいます。すると、つられて足が上がりにくくなり、すり足のような歩き方に。ほんの小さな段差や、めくれたカーペットの縁でつまずいて、転倒につながってしまうのです。
これは感覚的な話ではありません。高齢者の歩行を調べた厚生労働科学研究でも、加齢にともなって歩行は小股・すり足になり、重心を動かせる範囲が狭くなるため、障害物があると姿勢を保ちきれず転倒しやすくなると指摘されています。さらに国立長寿医療研究センターも、転倒を防ぐにはつま先をしっかり上に向け、かかとから接地して歩くことが大切だと案内しています。低すぎる杖で前かがみになり、つま先が下がった歩き方は、まさにこの逆をいってしまうわけです。
出典:厚生労働科学研究「高齢者および高齢障害者の歩行異常と転倒に対する対策」/国立長寿医療研究センター「転びやすくなる原因は?」
「杖を持たせたから安心」と思っていたものが、知らないうちに転びやすい歩き方をつくっていた——。これは、ご家族にとって見落としがちな、でも本当に大切なポイントです。
👨⚕️ もくもくポイント
杖の役割は”転ばないための支え”ですが、高さが合っていないと逆に姿勢を崩す原因になります。現場でよく見るのが「低すぎる杖を使い続けて前かがみが悪化した」というケースです。まず高さを見直すだけで、姿勢がずいぶん変わります。
📝 訪問現場より
以前うかがっていた80代の女性は、旅行先で買ったという背の高い木の杖を使っていらっしゃいました。ご家族が「歩くのが不安そうだから」と持たせたものを、長さも合わせないまま使い続けていたそうです。
実際に歩く様子を拝見すると、杖が長すぎて脇が開き、肩を持ち上げるようにして握っていました。試しに体に合った高さの杖に変えて歩いていただくと、肩の力が抜けて姿勢が見違えるように安定し、ご家族も「こんなに変わるんですね」と驚かれていました。よかれと思って持たせた杖が合っていなかっただけで、杖そのものが悪いわけではありません。大切なのは”杖を持たせること”ではなく、”その人の体に合った杖を選ぶこと”なのです。
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失敗しない杖の選び方|3つのチェックポイント

ここからは、ご家族が杖を選ぶとき・見直すときに必ず確認してほしい3つのポイントをお伝えします。難しい知識はいりません。「長さ」「種類」「グリップと杖先」——この3つを押さえるだけで、合わない杖をつかむ失敗はぐっと減らせます。
①長さ|「合っているか」は今すぐチェックできる
杖選びでいちばん大切なのが長さです。目安としてよく使われるのが「身長 ÷ 2 + 3cm」という計算式ですが、ご家庭で簡単に確認するなら、次の方法がわかりやすいです。
いつも履いている靴をはいて、まっすぐ立ち、腕を自然に下ろします。そのとき、手首のあたりにグリップの高さがくるのが適切な長さの目安です。この高さに合わせると、杖を握ったときに肘が30度ほど軽く曲がり、ちょうど力を入れやすい状態になります。理学療法士が学校で習う合わせ方も、ほぼこの考え方に基づいています。
逆に、グリップが手首より高い位置にあると「長すぎ」、低い位置だと「短すぎ」です。前の章でお伝えしたとおり、短すぎる杖は前かがみを招くので、迷ったら「やや高め」を意識してください。なお、腰や背中が曲がっている方は、目安より2〜3cm短めが合う場合もあるので、最終的には実際に歩いて確かめるのが確実です。
👨⚕️ もくもくポイント
「身長÷2+3cm」は目安の一つですが、背中が丸くなっている方や股関節・膝に変形がある方には合わないこともあります。必ず実際に立って確認することが大切です。
②種類|体の状態に合わせて選ぶ
杖にはいくつか種類があり、体の状態によって向き・不向きがあります。代表的なものを整理します。
- T字杖:もっとも一般的。軽くて扱いやすく、ある程度自分で歩ける方向け。
- 多脚杖(4点杖など):先が3〜4本に分かれていて安定感が高い。バランスに不安がある方や、片足の筋力が落ちている方向け。ただし平らな場所でないと脚が均等に接地せず、かえって不安定になることも。
- 歩行車・シルバーカー:杖では支えきれない方向け。荷物も運べる。
「とにかく安定するものを」と多脚杖を選びがちですが、しっかり歩ける方には重くて取り回しが悪く感じることもあります。本人の歩行レベルに合っているかが選ぶ基準です。判断に迷うときは、担当のケアマネジャーや理学療法士に相談すると、その方に合った種類を一緒に考えてもらえます。
👨⚕️ もくもくポイント
多脚杖はバランスに不安がある方に向いていますが、畳の部屋やカーペットの上では脚が引っかかって不安定になることも。生活環境も含めて種類を選ぶことが大切です。
③グリップと杖先|見落としがちだけど重要
最後に、意外と見落とされがちなのがグリップ(握り)と杖先のゴムです。
グリップは、握ったときに手のひら全体でしっかり支えられる形のものを選びます。握りが細すぎたり硬すぎたりすると、手が疲れやすく、長く使ううちに痛みが出ることもあります。
そして見落としがちなのが杖先のゴム。すり減ったゴムは滑りやすく、これ自体が転倒の原因になります。ゴムの交換時期の目安は1〜2年。「杖先ゴム」で検索すれば市販品が見つかるので、すり減っていたら必ず交換してください。どんなに良い杖でも、足元が滑ってしまっては意味がありません。
👨⚕️ もくもくポイント
杖先ゴムは消耗品です。1〜2年で交換が必要なものが多く、ホームセンターや薬局でも入手できます。ゴムの側面が光ってきたら交換のサインです。すり減ったゴムによる転倒を、現場で何度も見てきました。
親が杖を嫌がるときの家族の関わり方

杖の選び方がわかっても、もうひとつ大きな壁があります。それが「本人が杖を使いたがらない」という問題です。ご家族から「すすめても頑として使ってくれない」というご相談を、現場では本当によく受けます。
「年寄りくさい」と拒む気持ちの裏側
杖を嫌がる方の多くは、「まだ自分は大丈夫」「杖なんて年寄りくさい」とおっしゃいます。けれど、その言葉の裏にあるのは、老いを認めたくない気持ちや、人目が気になる不安であることがほとんどです。これは決してわがままではなく、ごく自然な感情です。
ですから、「危ないんだから使ってよ」と正論で押すほど、かえって意固地になってしまいがちです。まずは「使いたくない」という気持ちそのものを、頭ごなしに否定しないことが入り口になります。
👨⚕️ もくもくポイント
「杖を使わせたい」という気持ちが強くなるほど、かえって本人を頑なにさせてしまうことがあります。まずは「今は必要と思っていないんだな」と受け止めることが、関係を壊さずに対話を続けるコツです。
本人が「使ってみようかな」と思える工夫
無理にすすめるのではなく、本人が前向きになれるきっかけを作るのがコツです。現場でうまくいきやすいのは、次のような関わり方です。
✅ 杖を前向きに受け入れてもらうための3つの工夫
- 本人に選ばせる:色やデザインを自分で選ぶと、「持たされた物」ではなく「自分の物」になり、使う気持ちが芽生えやすくなります。最近はおしゃれな杖も増えています。
- 目的をすり替える:「介護用」ではなく「散歩のおとも」「旅行で疲れにくくなるから」と、前向きな理由で伝えるのが効果的です。
- 第三者から伝えてもらう:家族が言うより、医師・理学療法士・ケアマネジャーなど専門職から「そろそろあると安心ですよ」と言われたほうが、すんなり受け入れられることが多いです。
家族だけで抱え込もうとすると、つい感情的になってぶつかってしまいます。担当のケアマネジャーや、訪問リハビリのスタッフなど、間に入ってくれる専門職を上手に頼ることも、立派な方法のひとつです。
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訪問PTが実際に使ってみた結果|「ロコケイン」という選択肢

ここまで「合った杖を選ぶことが大切」とお伝えしてきましたが、「では具体的にどんな杖がいいの?」と気になる方も多いと思います。そこで、私が実際に注目している杖を一つご紹介します。理学療法士の視点から開発された「ロコケイン(Lococane)」です。同僚のPTが研修会で知って教えてくれたのがきっかけで、私も詳しく調べるようになりました。
「支える」ではなく「もう一本の足」という発想
ロコケインの最大の特徴は、しなる構造です。ドライカーボン製の湾曲した形状が、歩くたびの衝撃を、まるで車のサスペンションのように受け止めて吸収します。一般的なまっすぐな棒状の杖が「ただ体を支える」道具なのに対し、ロコケインは杖を”もう一本の足”としてとらえている点が、いちばんの魅力です。
歩行リハビリを知り尽くした理学療法士が開発したという点にも、まず興味を持ちました。このしなりが、歩くときに自然と前へ進む力を後押ししてくれるので、足を運ぶのがスムーズになります。
✅ ロコケインの主な特徴
- ドライカーボン製のしなる構造が歩行時の衝撃を吸収
- 高さ調整は6段階+2サイズ展開で体に合わせやすい
- 良肢位に基づいたグリップで手が疲れにくく、握りやすい
- 重さ約370gで振りやすさと支えやすさのバランスを重視
- 理学療法士が開発した歩行特化設計
- グッドデザイン賞受賞(デザイン性と機能性が認められた杖)
訪問先で実際に使ってみた結果
以前うかがっていた方で、長年同じ杖を使い続けたことで、手首の痛みに悩んでいる方がいらっしゃいました。歩くたびに手首へ衝撃が伝わり、長く歩くと痛くてつらい、と。そこでロコケインを試していただいたところ、「前にスムーズに進める」「長く歩いても手が痛くならない」と、とても喜んでいらっしゃいました。
💬 利用者さんの言葉より
「遠くの公園まで、孫と一緒に行くのが楽しみになった」
— 訪問先の利用者さんの言葉
杖が変わるだけで、痛みが減るだけでなく、外に出る意欲や、家族と過ごす時間まで広がっていく——杖選びの大切さを、あらためて実感したエピソードでした。
杖は毎日使うものだからこそ、”とりあえずの一本”ではなく、本人の歩き方や手の負担に合った一本を選ぶ価値があります。ロコケインは介護保険でレンタルできる業者もあります。お住まいの地域で利用できるかどうかは、担当のケアマネジャーや福祉用具業者にご確認ください。公式サイトでは価格や詳細も確認できます。気になった方は、選択肢の一つとして一度チェックしてみてください。
気になる方は、まず10日間のお試しレンタル(¥3,300・税込・送料無料)から始めるのもおすすめです。合わなければ返すだけなので、高価な買い物でも安心して試せます。
まとめ
杖は「持たせれば安心」な道具ではありません。長さや種類が体に合っていないと、かえって前かがみになり、足が上がらず、転びやすくなってしまいます。大切なのは、”杖を持たせること”ではなく、”その人の体に合った一本を選ぶこと”です。
📝 まとめ
- ✅ 合っていない杖は危険:もらい物や観光地の杖、高さが合わない杖は前かがみ・すり足を招き、転倒の原因になる
- ✅ 選び方の3チェック:①長さ(手首の高さ・肘30度)②種類(体の状態に合わせる)③グリップと杖先ゴム
- ✅ 嫌がるときは無理強いしない:本人に選ばせる・前向きな理由で伝える・専門職に頼る
- ✅ 毎日使うものだから合った一本を:ロコケインのような選択肢も含め、本人の歩き方に合った杖を
杖選びに迷ったら、担当のケアマネジャーや、訪問リハビリの理学療法士に相談すれば、その方に合った杖を一緒に考えてもらえます。ご家族だけで抱え込まず、専門職も頼りながら、お父さま・お母さまが安心して歩ける一本を見つけてください。
👉 あわせて読みたい
[1]・日本理学療法学術大会「杖の長さが歩行に与える影響」(第44回・2009年)
[2]・厚生労働科学研究「高齢者および高齢障害者の歩行異常と転倒に対する対策」
[3]・国立長寿医療研究センター「転びやすくなる原因は?」
[4]・ゆりの木病院リハビリ「杖の合わせ方・選び方」(理学療法士解説・補強)


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